研究課題/領域番号 |
21K06376
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
前田 純宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70443025)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 尿由来細胞 / 直接誘導 / 神経変性疾患 / タウタンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
ドナーの年齢を反映した神経細胞を、尿検体から採取出来る尿由来細胞(Urine-derved cell: UDC)から作成する。それら、UDCから作成された神経細胞(UDC-induced neuron: UDC-iN)を神経疾患のモデリングに活用すると共に、現時点の技術では作成不可能であった神経細胞の老化標準曲線を作出し、個別化された、神経老化予測プラットフォームとして活用する可能性を探る。
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研究実績の概要 |
2023年度においては、尿由来細胞から樹立したヒトiPS細胞の作成、およびそこから作出した脳オルガノイド、および2次元培養による神経細胞モデルの作出、およびヒトiPS細胞に対する性ホルモンの効果、神経細胞とアストロサイトの相互作用により表出に成功したアルツハイマー病患者由来細胞の表現型の報告を行うことが出来た。 また、Niemann-Pick Type C(NPC)患者家族会を通して取得したNPC患者尿検体からUrine-derived cells (UDCs)が取得出来ること、そして直接誘導法によって、それらのUDCsからDirectly converted neurons from UDCs (UDC-iNs)が誘導可能であることの確認に成功した。この成果は、NPC治療法の開発において重要なマイルストーンとして位置づけられた。 また、既にNPC患者に対して処方されているmiglustat、Hydroxypropyl-β-cyclodextrin (HP-β-CD)やHydroxypropyl-γ-cyclodextrin (HP-γ-CD)などの薬剤への反応性を確認した結果、当該患者における臨床上の薬剤反応性と合致した結果が、UDC-iNの細胞モデルにおいても観察された。HP-β-CDは元々、患者の年齢依存的な、臨床上の薬剤反応性の違いなどは、報告されておらず、細胞モデルにおいても、その有効性が再現された。一方、Miglustatについては幼年の患者にのみ効果があると報告されるが、UDC-iNの細胞モデルにおいても、幼年期以降の患者から採取した細胞のモデルにおいては、効果が確認できなかった。これにより、UDC-iN技術の有用性が臨床的な年齢依存性の薬剤反応性の推移予測に貢献する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに、ニーマンピックC型患者由来細胞を6症例から収集することに成功しているが、そのうち1症例は、尿路感染と思われる尿の状態であり、尿由来細胞(Urine-derived cell: UDC)の採取は出来ない状態であった。しかし、それ以外の症例に関しても、慶應義塾大学医学部までの距離が遠い地域で採取したせいか、UDCの採取が難しい症例が2症例あった。また、1症例は2回目の採取を試みたが、やはり採取出来ない状態であった。 また、同一年齢の健常者をリクルートして、UDCの採取を試みたが、慶應義塾大学病院に来院してもらって採取したわけではなかった為か、UDCの採取が出来ない症例が3症例中2症例存在した。得られた症例由来のUDC-iNは、全てUDC-iNで細胞死が健常者由来の細胞と比べて増大していることが確認出来た。また、シクロデキストリンを処置したところ、全ての症例において神経細胞死が軽減されたことから、全年齢層に対して薬効があるとされているシクロデキストリンは、細胞モデルにおいても、効果があることの確認に成功した。 また、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターが行なっている川崎市との包括亭な提携によって実現している川崎市在住の自立した生活が営めている高齢者の検体採取も行った。これらの細胞との比較によって、ニーマンピックC型の患者由来UDC-iNが、老化状態が進んだ神経細胞だと言えるのか、老化とは異なる病的な状態になっているのかを検討出来る体制を整えることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、UDCが採取出来なかったNPCの症例を含めて、再度検体採取を試みる。遠隔地在住の患者からの採取の際には、近隣の研究機関に協力を仰ぎ、簡単な処置をした上でのUDC採取を試みる。また、本来直接誘導神経では、NPC患者脳内において蓄積することが知られているタウタンパク質の凝集体形成が起こることを期待していた。しかし、これまでに試した症例では、いずれもそのようなシグナルは検出出来ておらず、培養するだけではタウは凝集しないと考えられた。そこで、他の2次元培養系においてタウ凝集体形成を誘導することに成功しているタウシードをUDC-iNにも応用し、UDC-iNにおけるタウ凝集体形成も評価出来る系の確立を目指す。そのような系が確立出来次第、症例ごとのタウシードに対する脆弱性を評価する。 また、UDC-iNの網羅的な転写産物解析を、昨年度までに収集した症例においても行い、健常者由来UDC-iNとの違いを明らかにし、どのようなパスウェイが変化しているのかを同定する。そのような解析を通して、NPCに対する新たな治療標的を探索する。 また、血液脳関門透過性の化合物を集めた小分子ライブラリーを用いて、NPC患者由来UDC-iNの細胞死を軽減しうる化合物を探索する。それらの化合物が他のリソソーム病患者由来のUDC-iNに対しても薬効が確認出来るかどうか、健常者由来細胞に対しても効果があるかどうかを明らかにしていく。また、そのような薬剤が同定された場合は、その薬剤処置によってどのような遺伝子群が変化しているのかを網羅的な転写産物解析によって明らかにする。
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