研究課題/領域番号 |
21K06412
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
田中 雅樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80264753)
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研究分担者 |
渡邊 義久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50363990)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オートファジー / 神経細胞 / GFP-LC3-RFP / トランスジェニックマウス / GFP-LC3 / 脳組織 / ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
オートファジーが神経系機能に関与することが示唆されているが、詳細は不明である。本研究は、我々が作製したオートファジー活性化可視化トランスジェニックマウス(SYN1-GFP-LC3-RFPマウス)が、神経細胞特異的にどの程度オートファジーの活性化をモニターできるのかを補助事業期間中に脳内各部位で詳細に検討・評価し、実際にモデル動物を作製してストレス・情動系への関与を、オートファジー活性状況を組織学的に解析して明らかにする。
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研究実績の概要 |
神経特異的なオートファジー活性可視化マウスの解析に取り組んでいる。 既に研究室で作製して個体化した、syn1プロモーター下にニューロンに発現する、SYN1-GFP-LC3-RFPトランスジェニックマウスの脳組織発現についてまずは刺激を行わずに、脳全体について調べた。嗅球、線条体、海馬、橋核などにGFPを発現する細胞が出現した。大脳皮質や海馬でNeuNとの共存が見られるが、GFAPとの共存は見られず、これら発現細胞はニューロンであることが確かめられた。特に嗅球や海馬、線条体には軸索や樹状突起のような突起にGFPが出現し、RFPは主に細胞体に見られた。RFPは大脳皮質や海馬に発現があり、領域によって、ベースのオートファジー活性が異なることが示唆された。トランスジェニックマウスの初代培養細胞を用いた薬剤投与実験で、オートファジーを抑制するバフィロマイシンA1を投与するとGFP-LC3の凝集がみられ、オーファジーレセプターであるP62の凝集と共存が見られた。オートファジー活性化が進むと、理想的にはGFPとRFPの比が低下することになるが、実際オートファジー誘導剤である、リチウムを飲水に混ぜて1か月投与させると、海馬錐体細胞の細胞体、樹状突起でGFP/RFPが低下した。ただ、このトランスジェニックマウスの繁殖が野生型に比べると悪く、なかなかホモ接合体のマウスが生まれず、GFP-LC3やRFPの細胞内動態について、生化学的な評価を含めて、今年度詳細な検討を行う予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1年目はトランスジェニックマウスの脳組織における各領域のGFP-LC3とRFPの発現を検索して、実際に組織発現を蛍光顕微鏡で確認できた。その結果、脳領域で発現に差があること(オートファジー活性に差がある?)や、細胞体と神経突起でも発現に差がみられることが分かった。オーファジーを促進させるラパマイシンを投与する実験で、脳組織の傷害そのものが、障害部位のオーファジーを活性化させることも判明し、薬剤の脳局所投与が難しいことも判明した。 2年目はヘテロマウスを用いて海馬初代培養細胞で、バフィロマイシンA1投与により、GFP-LC3の凝集が認められ、今後生化学的なflux解析を行う予定である。また、1年目のラパマイシンの脳内投与実験に問題点が認められたので、オートファジー促進化剤である炭酸リチウムを飲水に混ぜる実験に切り替え、予備データを取得した。 ただ、SYN1-GFP-LC3-RFPトランスジェニックマウスの繁殖について、生まれた新生仔を母マウスが喰殺してしまい、思った以上に時間がかかることが判明し、効率よく実験を進めることが求められている。最近ケージの中に育児ハウスを設けたり、バイトチップを与えたりして、ストレスを軽減させることで、ようやく仔マウスが増え始めた。
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今後の研究の推進方策 |
1.初代培養細胞を用いた検索:2023年度はマウス海馬初代培養細胞を用いた解析を行って、オーファジーを止めたり、促進させたりすることによる、GFP-LC3やRFPの細胞内動態を組織細胞化学的に詳細に検討するとともにLC3抗体や抗GFP抗体を用いてウエスタンブロッティングによりオートファジーfluxを調べ、生化学的にもオートファジーを表現しているかどうかを確認する。 2.ATG5 floxマウスを用いた解析:SYN1-GFP-LC3-RFPマウスとATG5 floxマウスを交配してホモマウスを作製する。マイクロシリンジにて、脳局所AAV-Creを感染させることにより、コンディショナルにATG5を脳局所でノックアウトしてオートファジーを止める。また、情動行動に関与する、ATG5 floxマウスの扁桃体、海馬、側坐核、分界条床核、前頭前野にそれぞれAAV-Creを感染させて、オートファジーを低下させる。その後、明暗選択箱試験、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、強制水泳試験、尾懸垂試験などを行って不安、短期記憶、うつ様行動を解析し、オートファジー活性と脳機能の直接的な関係を検討、証明する。
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