研究課題/領域番号 |
21K06415
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
前田 誠司 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10309445)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 腎臓 / 交感神経 / シュワン細胞 / 神経終末 / シナプス / 自律神経系 / 交感神経系 / 節後ニューロン |
研究開始時の研究の概要 |
腎機能障害時に起こる交感神経活動亢進を抑制することは、病態増悪を防ぐために重要であるが、多様な標的細胞をもつ腎交感神経の軸索終末の機能制御の機序は明らかではない。本研究では腎軸索終末にみられる無髄シュワン細胞のペリシナプス機能に注目し、神経伝達物質放出に積極的に関わる可能性を考えた。遺伝子導入技術等を使用し、神経終末を可視化しながら神経活動を制御するモデル動物を作成し、正常腎および病態腎における軸索終末のシナプス構築を立体的に解析し、病態シナプスの正常化の可能性を検証する。そして腎交感神経系における神経終末の制御機序とシナプス構成細胞の機能形態的な重要性を明らかにしようとするものである。
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研究実績の概要 |
交感神経終末のシナプス構造およびシュワン細胞によるその支持様式を超微細形態的および免疫組織化学的に明らかにした。腎臓ではアドレナリン受容体のほぼ全てのサブタイプが血管系やネフロン各部に広く分布しているが、細動脈外膜や尿細管基底部のように神経終末が近接するシナプス部位と、糸球体や尿細管管腔膜などのように神経が直接投射せず血漿アドレナリン/ノルアドレナリン(NA)を感受する部位がある。腎神経の終末の構造は、細動脈部と尿細管部において、それを支持するシュワン細胞の形態が異なっており、細動脈部では軸索を覆うシュワン細胞突起の神経終末部が窓のように標的細胞側に開口していた。この終末窓がNA放出の標的指向性や濃度調整を行い、神経終末から血中に流入する血漿カテコールアミン量をコントロールし、糸球体などの非神経投射部位に作用するNA量の調節に寄与する可能性を示唆するものである。 腎細動脈に分布する交感神経のシュワン細胞が神経終末窓を形成する機序を解明するために、神経終末、シュワン細胞および細動脈平滑筋の三者で構築されるシナプス構造を形態的・分子生物学的に解析した。先行研究の脾臓交感神経シュワン細胞に発現するmRNA発現ライブラリー情報からⅥ型コラーゲンおよびNG2を選択し、その発現と分布を観察した。その結果、NG2は平滑筋とシュワン細胞の血管外膜接着部位に発現しており、その間にⅥ型コラーゲンが分布していた。免疫電顕法にてNG2の分布を詳細に観察したところ、シュワン細胞の終末窓付近のNG2の分布が欠如しており、また、平滑筋においてもシナプス形成部にはNG2の空白部がみられた。このことは、腎交感神経のシナプス部において、細胞外基質とその受容体構築が分子レベルで異なっていることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
22年度は、S-100B-eGFPトランスジェニック(S100GFP-TG)ラットを導入し、ラット腎神経シュワン細胞に発現する遺伝子解析を行う予定であったが、導入されたS100GFP-TGラットでは、中枢神経系と異なり腎シュワン細胞での蛍光発現が欠如していた。予想と異なりプロモーター領域に何らかの制御がかかっている可能性があり、最終的にはTGラットの使用を断念せざるを得なかった。そこで予定を変更し、免疫反応によるセルソーター(FACS)を用いてシュワン細胞の分離を行っている。腎臓は構成細胞が複雑な臓器の一つであり、さらにシュワン細胞の割合がかなり低いため、現在、免疫反応およびFACSの条件設定と解析に十分な量の細胞回収を試みている。 シュワン細胞遺伝子の網羅的解析以外については概ね順調な結果を得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
腎交感神経終末における三者間シナプス構築に寄与するシュワン細胞より、シナプス終末支持に関与する接着分子の遺伝子の同定を行う。マーカー抗体(p75およびS-100B)を用いたシュワン細胞をFACSで分離し、遺伝子発現解析を行う。先行研究からの検索で候補となる接着関連分子のmRNAおよびタンパク質発現の確認に加え、インテグリンやそのリガンドの発現も検索する。さらに、単離シュワン細胞の交感神経ニューロンとの共培養を試み、上記の接着分子群に関して、中和抗体やインヒビターによる細胞同士、およびECMコーティングプレート(ラミニンやフィブロネクチン)を用いた接着阻害実験等を計画している。 腎神経三者間シナプス構築の機能と病態生理学的重要性を明らかにするために、病態モデルラットの作出を行う。病態モデルとして、以前に確立した腎動脈の虚血/再灌流モデルもしくは尿管結紮モデルラットを想定している。これらは各種腎組織変性の代表的な病態モデルであるため、病態進行の評価を適切に行える。上記で同定された接着関連分子について、正常腎と病態腎との三者間シナプスの形態的変移との関連を検討する。また、必要であれば、中和抗体や各種薬剤による阻害実験をin vitroおよびin vivo系を用いて実施する予定である。
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