研究課題/領域番号 |
21K06432
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
今村 宰 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 准教授 (40534954)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ドネペジル / iPS細胞 / 脱髄疾患 / 多発性硬化症 |
研究開始時の研究の概要 |
多発性硬化症(MS)は中枢神経系における代表的な脱髄疾患で、本邦での患者数は年々増加傾向にあり、早期の治療法開発が望まれている。申請者はアルツハイマー病治療薬として認可されているドネペジルにヒトiPS細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)からオリゴデンドロサイト(OL)を効率的に分化誘導する新たな薬効を同定した。本研究では、MS患者のiPS細胞由来OPCを成熟OLへ分化させ、分化異常や髄鞘形成障害を見出すことで疾患モデルを構築し、病態解明に繋げる。さらに、この病態モデル細胞に対するドネペジルの有効性と作用機序を明らかし新規MS治療薬の開発へと展開する。
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研究実績の概要 |
我々はアルツハイマー型認知症治療薬ドネペジル(DNP)の新たな薬効としてヒトiPS細胞由来オリゴデンドロサイト前駆細胞からオリゴデンドロサイトへの分化誘導作用を見出した。本研究では、多発性硬化症患者のiPS細胞(MS-iPSC)から分化誘導したオリゴデンドロサイト系譜細胞を用いて細胞病態を解明し、さらにこの病態モデルに対するDNPの有効性と作用機序を明らかにすることを目的としている。本年度は、既存培養法を改良することでMS-iPSCからオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)へと分化誘導を行い、細胞表現型解析を進めた。初期OPCマーカーとして知られているOlig2およびNkx2.2の発現を免疫染色により確認したところ、MS-iPSCでは健常群に比べて二重陽性細胞数の減少が認められた。また、oligosphere形成能を調べた結果、健常群と比較してMS-iPSC由来分化細胞から形成されたoligosphereの数およびサイズともに低下していることが明らかとなった。これらの傾向は一次oligosphereをシングルセルに分散して形成された二次oligosphereにおいても同様に見られたことから、MS-iPSC由来OPCでは増殖能や自己複製能に異常がある可能性が示唆された。細胞増殖に関与するシグナル伝達分子を解析したところ、MS-iPSC由来oligosphereにおいてextracellular regulated kinase (ERK) の活性化が抑制されていることがわかった。一方、アポトーシスについてはMS-iPSC由来oligosphereと健常群とで差は認められなかった。現在、他のMS-iPSC株においても同様の細胞表現型を示すか検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常者iPS細胞と患者iPS細胞(MS-iPSC)からオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)を分化誘導し、増殖能と自己複製能を比較することにより、同疾患における表現型の一端を捉えることに成功した。さらに、MS-iPSC由来OPCの増殖・自己複製異常に関与する細胞内シグナル伝達分子も明らかになりつつあるため、当初の計画通りに順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新たなMS-iPSC株の解析を進めMSの病因となりうる差異の同定、さらには発症メカニズムの解明を行う。MS-iPSCで得られた病態表現型に対するドネペジルの有効性と作用機序を明らかにする。
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