研究課題/領域番号 |
21K06433
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
深田 斉秀 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 主任研究員 (80414019)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | うつ病 / セロトニン / 抗うつ薬 / マウス / 行動解析 / HDAC6 / アンヘドニア / 治療 / うつ病モデル |
研究開始時の研究の概要 |
うつ病では、ストレス等によって神経系に可塑的な変化が生じ、さまざまな精神症状、身体症状が現れるが、詳細なメカニズムは不明である。治療にはセロトニン(5-HT)神経伝達を促進する薬剤(抗うつ薬)が用いられるが、即効性がないこと、根治しないことから新しい治療薬が必要である。これまでに申請者らは、5-HT神経細胞のストレス応答性を消失した遺伝子変異マウスが、慢性ストレスに耐性で、うつ症状を示さないことを見出している。本研究では、5-HT神経細胞のストレス応答抑制によって、うつ症状の形成を予防できるか、うつ症状を治癒・寛解できるかを行動薬理学的に検討し、うつ病の新しい治療戦略創出を目指す。
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研究実績の概要 |
昨年度までに、コルチコステロン慢性投与によって作出したうつ病モデルマウスに対し、HDAC6阻害剤が即効性、かつ持続性の抗うつ作用を示すこと、社会性を一時的に亢進させる作用があることを明らかにしている。しかしながら、HDAC6阻害剤がこれらの作用をもたらす機序は不明である。 そこで、本年度は、HDAC6阻害剤投与後に、うつ病モデルマウス脳内で生じる生化学的な変化を解析した。特に、HDAC6、HDAC6基質分子、うつ症状の形成・寛解に伴って変動することが報告されている分子に注目した。HDAC6阻害剤投与24時間後、1週間後に、うつ病モデルマウスの脳を摘出し、特定の脳領域(0.25-4.25mm posterior to bregma)からシナプトソーム画分を調製した。ウエスタンブロット法により、この画分に含まれる上述した分子群について、発現レベルと翻訳後修飾レベルを比較解析した。さらに、これらの分子について、うつ病モデルマウス脳内での分布と、HDAC6阻害剤投与後の変動を、免疫組織染色により解析した。 その結果、うつ症状の形成、及びHDAC6阻害剤投与後のうつ症状からの回復に伴って変動する分子としてErk1/2を同定した。HDAC6阻害剤投与24時間後に、Erk1/2の活性化レベルは有意に増加していた(130%)。この現象は、脳の広範な領域、特に、扁桃体、dorsal endopiriform nucleus、medial parietal association cortexの神経細胞で顕著であった。これらの領域は、情動反応の処理と記憶、他個体とのコミュニケーションに関係する領域であり、HDAC6阻害剤の抗うつ作用と関連すると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、当初の計画通り、慢性コルチコステロン投与によって作出したうつ病モデルマウスに対して、HDAC6阻害剤の即効性かつ持続性抗うつ作用を、複数の指標、すなわち、アンヘドニア、探索モチベーション、絶望行動で確認することができた。現在は、HDAC6阻害剤の作用機序の解析と、うつ症状の改善と関係する脳領域の同定を進めており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で見出した、慢性コルチコステロン投与によって作出したうつ病モデルマウスに対する、HDAC6阻害剤の即効性かつ持続性抗うつ作用に関しては、早々に論文を投稿する予定である。今後は、HDAC6阻害剤の影響を受ける脳領域の同定を進める。また、HDAC6阻害剤の作用機序、すなわち従来の抗うつ薬とは異なる新しい抗うつメカニズムを明らかにするための解析を予定している。
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