研究課題/領域番号 |
21K06435
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
本城 咲季子 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (30551379)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 睡眠 / 徐波 / 大脳皮質 / 視床 / ノンレム睡眠 / 眠りの深さ / 細胞除去 / 脳波 / マウス |
研究開始時の研究の概要 |
睡眠は時間と深さという二つの軸に沿って厳密に制御された生命現象である。時間的には同じ長さの睡眠をとっても、睡眠の深さの違いによって「よく寝てすっきり」あるいは「疲労がとれない」など異なる状態が生じる。このように「脳機能の回復」という睡眠の機能に、睡眠の深さは本質的に関与していると考えられる。本研究の目的は①眠りの深さの指標である徐波脳波の生成における視床の役割と、②覚醒履歴が視床神経の発火に与える影響の解析、③視床神経の遺伝子発現解析・遺伝子機能解析を通じて、視床が眠りの深さを制御するメカニズムを明らかにする事である。
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研究実績の概要 |
本年度は昨年度に確立した改変型Caspaseの導入による細胞除去実験系を用いて、徐波の生成に必要な脳領域のスクリーニングを行った。その結果、視床神経核の除去によってノンレム睡眠中の大脳皮質において紡錘派、および徐波が減衰する事を明らかにすることが出来た。さらに、睡眠覚醒サイクルが極度に断片化する事を見出した。これらの結果は、視床が質の高いノンレム睡眠に必須であり、質の低い睡眠は持続しにくい事をしめしている。また睡眠覚醒サイクルを通じた視床の神経活動記録を行った。その結果、ノンレム睡眠中の視床神経細胞の発火頻度は覚醒時に比べ大きく低下し(~80%)、かつバースト発火という特殊な発火パターンを示す事を示した。視床におけるバースト発火と大脳皮質における徐波発生のタイミングについて解析をおこなったところ、この視床における低頻度なバースト発火が、大脳皮質における徐波と同期している事を明らかにした。この結果はノンレム睡眠中の視床神経活動が徐波の生成に寄与することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は眠りの深さの唯一の指標である、徐波脳波の生成に必要な脳領域を特定する事に成功した。また、その脳領域の神経活動パターンが大脳皮質徐波発生のタイミングと関連する事を見出した。また今年度は、睡眠・覚醒サイクルに特異的に神経活動操作を行うための実験系の構築に取り組んだ。オンラインで記録中の脳波のフーリエ解析を行い、ノンレム睡眠時の特徴をモニターし続けるためのソフトウェア改変を行った。この改変によって、脳波が深いノンレム睡眠の特徴を示し、かつマウスが活動していない(筋電シグナルが低い)時に光遺伝学をもちいて神経活動操作を行う事が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究においては細胞除去という神経活動が慢性的に低下する実験手法を用いて徐波の生成に重要な脳領域を特定する事に成功した。しかし、眠りの深さの指標である「徐波」の生成に寄与するメカニズムは複数の要素からなる。一つは直接的に、低周波で大脳皮質神経活動を同期させる神経メカニズムである。もう一つは、覚醒時に蓄積し後のノンレム睡眠時に徐波を増大させる睡眠圧の蓄積・解消である。我々は今後、視床神経群が覚醒時の神経活動を協調させ覚醒度の高い「覚醒状態」を促進し覚醒時の睡眠圧の蓄積に貢献しているのか、ノンレム睡眠時の大脳皮質の神経活動パターンの生成に直接貢献することで徐波を生成しているのか検討を行う。そのために、2022年度に構築したオンライン脳波解析とそれによる光遺伝学刺激駆動の実験系を用い、視床神経細胞の覚醒時の機能が睡眠圧の蓄積を介して徐波を増強するのか、ノンレム睡眠中の神経活動の協調によって徐波を生み出すメカニズムそのものであるか実験、解析を行う。
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