研究課題/領域番号 |
21K06442
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
冨岡 良平 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (30415244)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 淡蒼球外節 / 大脳皮質聴覚野 / 内側膝状体 / 大脳基底核 / ミスマッチ陰性電位 / オドボール / GABAニューロン |
研究開始時の研究の概要 |
脳は「頻繁な音(例:風の音)」を無視し、「稀有な音(例:捕食者の足音)」にのみ注意を向け、情報処理をしている。「稀有な音」は、注意を誘導する目立つ特性(顕在性)を持っている。では、脳はどのようにして「顕在性」を検出しているのだろうか? ピ、ピ、ピ、と連続する純音の間に、偶に違う周波数の純音を与えられると、ミスマッチ陰性電位と呼ばれる特徴的な脳波が聴覚野などで観測される。また、ミスマッチ陰性電位様の活動は、大脳基底核でもみられる。 本課題では、『大脳基底核が音の顕在性を検出し、聴覚野にミスマッチ陰性電位を誘導する』 という仮説を検証し、聴覚系の大脳皮質-大脳基底核ループの機能を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、聴覚システムにおける大脳皮質-大脳基底核ループの役割を神経回路レベルで解明する事である。教科書において、大脳基底核(線条体)は、広く大脳皮質から入力を受けている。聴覚野も線条体(尾側)に投射しているが、この線条体(尾側)がどのような神経回路を構築しているかは明らかにされていなかった。私達のグループは、最近大脳基底核が大脳皮質聴覚野に投射している事を明らかにした。これまで大脳皮質-大脳基底核ループは運動系が中心であったが、私たちのグループは、初めて感覚システムの一つである聴覚システムにおける大脳皮質-大脳基底核ループの存在を明らかにした。このループ回路は、過去の音情報を聴覚野にフィードバックしている神経回路であると考えられる。 感覚システムにおいて、「繰り返される刺激」と「稀な刺激」を弁別するのは重要な課題である。これには、過去の情報を保持し、現在の情報を評価するシステムを用意する必要がある。私達のグループは、この聴覚システムにおける大脳皮質-大脳基底核ループが、『「繰り返される音」を検出し、最終的に聴覚野で順応を引き起こし、「繰り返される音」と「稀な音」を弁別する神経回路である』という仮説に至った。本課題では、大脳皮質-大脳基底核ループの役割を明らかにすべく、①聴覚野の応答(「繰り返される音」ないしは「稀な音」に対する応答)に生じる変化を調べる。②聴覚野に投射している大脳基底核の神経細胞の応答(「繰り返される音」ないしは「稀な音」に対する応答)を調べる、という2つの目標を立てた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、シリコンプローブを用いてシングルユニット記録は出来ており、その研究結果を2023年2月に出版した。これは目標の①である『聴覚野の応答(「繰り返される音」ないしは「稀な音」に対する応答)に生じる変化を調べる』の結果である。主な発見は、聴覚野ニューロンは、繰り返される音に対して、応答が順応するニューロンのみではなく、促進されるニューロンもあり、私達は少なくとも4つの応答がみられる事を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
目標②の記録は深い脳部位であるが、これまでのシリコンプローブでの記録の経験があり、64チャネルでの記録システムにより、技術的な問題はないのではないかと考えている。また聴覚系の大脳皮質-大脳基底核ループの生物学的役割を解明すべく、電気生理以外の手法(破壊実験など)を考えている。
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