研究課題/領域番号 |
21K06443
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
畝川 美悠紀 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (10548481)
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研究分担者 |
冨田 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (60276251)
伊澤 良兼 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90468471)
滝沢 翼 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30778874)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | NG2グリア / オリゴデンドロサイト / 脳微小循環 / Neurovascular unit / 脳虚血 / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 髄鞘 / 脱髄 |
研究開始時の研究の概要 |
NVUを形成するグリア細胞の一つでオリゴデンドロサイトや周皮細胞、アストロサイトに分化するNG2グリアが脱髄疾患、脳虚血などの病態下での変化を検討し、その機序を検証する。OPCおよびオリゴデンドロサイトに特異的に蛍光タンパク質を発現させたマウスを用いた疾患モデルに慢性頭窓を作成し、二光子顕微鏡を用いて長期間観察を行うことにより、細胞レベルでの変化を経日的に観察する。さらに脳の高次機能を維持する上で重要な神経軸索髄鞘の維持・再生をもたらす処置や薬剤を探索する。さらに脱髄を主症状とする多発性硬化症や認知症など多くの中枢神経疾患モデルにも応用し、NG2グリアの機能・役割を解明する。
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研究実績の概要 |
脳は約 140 億個の神経細胞、その 10 倍のグリア細胞からなり、栄養を供給する脳血管と互いに連絡を取りながら神経グリア血管ユニット(neuro-glio-vascular unit; NVU)を形成している。本実験では分化・再生能が高く、髄鞘を形成するオリゴデンドロサイトや周皮細胞、アストロサイトに分化するオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)として存在するNG2グリアに焦点を当て、慢性頭窓下の同一部位を長期間反復して観察することによって成体における細胞および髄鞘の形態、脳虚血などの病態時の形態学的変化、髄鞘再生を促進あるいは抗炎症作用を増強するメカニズムを検討し、病態改善のための薬剤の探索とその作用機序の解明を目的とする。 NG2と高い共発現を有し、OPCおよびオリゴデンドロサイトに発現するSox10領域に蛍光タンパク質Venusを導入させた遺伝子改変マウスにTomita-Seylaz法による慢性頭窓を作成し、二光子顕微鏡を用いて長期間にわたって反復観察を行うことにより、細胞レベルでの変化を経日的に観察した。キレート剤であるクプリゾン混餌食(0.2%)を給餌することにより脱髄モデルを作成し、スルホローダミン101の腹腔内投与によって生体染色されるアストロサイトの形態学的変化を追跡する手法を確立した。観察終了後に脳を摘出し、蛍光細胞や神経細胞の撮像や解析の手法を検討中である。さらに、実験的脳梗塞モデルとして知られる中大脳動脈閉塞術を施行した病態モデルマウスを作成するため、基本的な手技を確立するとともに、線条体や大脳皮質における脳血流の変化と梗塞巣の形成との相関、行動異常を伴う神経症状の出現、施行時に発生して梗塞巣の形成に影響を及ぼすと考えられている大脳皮質拡延性脱分極(CSD)との関連についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
クプリゾン混餌食の給餌による実験的脱髄モデルをSox10-Venusマウスにおいて作成し、慢性頭窓下の大脳皮質におけるOPC、オリゴデンドロサイト、髄鞘、アストロサイトの形態学的変化を経日計測する手法を確立した。 一方、慢性頭窓下に梗塞ができる条件を探索するため、大脳基底核や大脳皮質に広く梗塞巣が形成されるといわれる糸上げ法による中大脳動脈(MCA)起始部閉塞術を施行し、線条体や大脳皮質における脳血流、CSD発生状況を計測し、梗塞巣の形成部位や広がりについて検討した。しかしながら、頭頂部の慢性頭窓下での梗塞巣形成が一定となる条件の探索が十分ではなく、結論が得られていない。そこで大脳皮質のみに梗塞巣が形成される田村法によるMCA皮質枝の閉塞術についても検討しており、田村法によるMCA一時閉塞あるいは永久閉塞時の脳血流変化、CSD発生と梗塞巣の形成との相関について論文発表した。 以上のように、手技としては確立しているものの、条件の設定に時間を要しており、総合的に実験の進捗状況としては遅れ気味と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Sox10-venusあるいはC57BL/6マウスにおいて実験的脳梗塞による病態モデルマウスを作成し、in vivoで慢性頭窓下の組織を経日的に反復観察する。OPCやオリゴデンドロサイト、アストログリアなどの形態学的変化を追跡すると同時に、麻痺や行動を評価することによって病的症状との相関を検討する。さらに、培養細胞等で効果が認められた化合物を中心にOPCの分化・組織再生を促進する処置や薬剤を探求することによって治療薬の選択や既存薬の適応拡大につなげていく。例えば、脱髄を主症状とする多発性硬化症の治療に用いられているジメチルフタル酸などの薬剤、制御性T細胞に作用して虚血後慢性期の症状を緩和することがわかっているセロトニン再吸収阻害剤(フルオキセチン)を投与することによって組織再生や症状緩和につながるか否かを検討する。
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