研究課題/領域番号 |
21K06468
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
井上 貴雄 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 部長 (50361605)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 核酸医薬品 / アンチセンス医薬品 / 細胞内取り込み機構 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、近年臨床開発が進んでいるアンチセンス医薬品について、その細胞内取り込み機構の分子基盤を解明するため、申請者が独自に構築したRNAiスクリーニング系により同定した分子群について、遺伝子破壊株ならびに過剰発現株を用いて機能解析を行う。これにより、アンチセンス医薬品の作用部位への送達を促進するKey moleculeを特定することができ、分子機構に基づく低用量化の新たな戦略が設定可能になると期待される。
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研究実績の概要 |
近年、アンチセンスやsiRNAに代表される核酸医薬品の開発が進展しており、治療法のない遺伝性疾患や難治性疾患に対する次世代医薬品として注目を集めている。2024年5月現在、アンチセンス医薬を中心に19品目の核酸医薬品が上市されているが、その潜在的な課題として細胞内への送達効率が低い点が指摘されている。この課題に対して、オリゴ核酸を構成する核酸の化学修飾、オリゴ核酸の末端の修飾(脂質、糖などの付加)、送達キャリアの活用など、膜あるいは膜タンパク質との親和性を高める試みが行われているが、実用化の観点から更なる技術革新が望まれている。 我々はこれまでに、アンチセンスの細胞内取り込みに関与する遺伝子を探索するために、「GFP発現細胞に対してGFP RNAを分解するRNA分解型アンチセンスを添加し、GFP蛍光をモニターするアッセイ系」と「スプライシング制御型アンチセンス(SSO)を用いたジストロフィン遺伝子の特定のエクソンのスプライスアウトを検出する系」の2種類のスクリーニング系を構築し、候補遺伝子群を特定し、膜タンパク質や細胞内輸送に関連するタンパク質など細胞内取り込みに関与する可能性のあると思われる遺伝子について、遺伝子破壊株及び過剰発現株の樹立を行ってきた。 本年度は、引き続き樹立した候補遺伝子の遺伝子破壊株及び過剰発現株の詳細な性状解析を行った。その結果、複数の遺伝子破壊株において、鎖長や配列の異なる様々なRNA分解型アンチセンスの有効性が顕著に低下することが確認された。過剰発現株においては、複数のアンチセンスのRNA分解活性の増大が観測された。更に、スプライシング制御型アンチセンスを用いて解析を行ったところ、いくつかの遺伝子破壊株においてエクソンのスプライスアウトの効率の低下が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上述の通り、これまでに実施してきたヒト全遺伝子を対象とした網羅的スクリーニングによって絞り込んだ候補分子の遺伝子破壊株と過剰発現株の性状解析を更に行った。樹立した複数の遺伝子破壊株に複数種類のRNA分解型アンチセンスを導入試薬を用いない Free uptake 法により作用させたところ、いくつかの遺伝子破壊株において全てのアンチセンスにおいて標的 RNA の分解活性が減弱した。これらの遺伝子の過剰発現株おいては、同様に複数のアンチセンスにおいて標的 RNA の分解活性の増大が確認された。更に、複数の細胞株で、スプライシング制御型アンチセンスの有効性の低下も確認された。 この結果より、これらの遺伝子が、配列に依存せず、「アンチセンスの細胞内取り込みに共通して機能する分子」であると期待される。以上のとおり、当該研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、樹立した細胞株の性状解析を更に進め、当該遺伝子の基質特異性の特定を行う。当該分子がアンチセンスの細胞内取り込みや細胞内輸送におけるどのステップで機能をするかを明らかにする。これにより、核酸医薬品の細胞内送達の律速となるKey moleculeを明らかにする。
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