研究課題/領域番号 |
21K06474
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
隅田 有人 金沢大学, 薬学系, 助教 (40630976)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 直接光励起 / ホウ素アート錯体 / ラジカル / 一電子移動 / ラジカルカップリング / アルキルラジカル |
研究開始時の研究の概要 |
有機ラジカルは二電子による化学変換とは異なる合成戦略をもたらす。近年、精力的に研究されている光レドックス触媒による分子変換は、触媒の酸化還元過程も考慮する必要があるため、必然的に素過程が多段階となる。結果、しばしば反応が低効率あるいは進行しないといった問題が生じる。本研究では、より直截的な反応基質の直接光励起による有機ラジカル発生法に基づき、これらの課題を解決する。また触媒化を実現し、合成光化学における新たなプラットフォームを開拓する。すなわち、光励起されるホウ素アート錯体を設計し、励起エネルギーを選択的な結合切断に利用することで革新的な有機ラジカル発生法と、それに基づく分子変換法を確立する。
|
研究実績の概要 |
本研究では研究期間内に(1)(2)(3)を実施することで直接励起法の有用性を明らかにする。 (1)ホウ素アート錯体の直接励起法による高難度分子変換の開発:立体 的に混んだユニット同士での結合形成は、現代有機合成においても未だ困難な課題である。連続する四置換炭素を自在に構築できれば強力な合成手法となり、新たな創薬手法、ケミカルスペース探索に繋がる。申請者が見出したホウ素アート錯体は、励起されて強力な一電子還元剤となる。(2)網羅的な有機ラジカル発生を志向したホウ素アート錯体の設計および合成:Boracene由来のアート錯体は、強い求核剤が必要となる。そこで本手法の汎用性の向上、発生可能なラジカル種の拡大を目指して有機ボロン酸からの直接励起可能なホ ウ素アート錯体を設計する。(3)触媒的な直接励起法の開 発:BoraceneあるいはPDPを用いることで、直接励起法を触媒的なプロセスへと展開する。 (1)に関して、N-ヘテロ環状カルベン触媒との協働作用によるラジカルカップリングを達成した。また(2)に関しては2,2'-(2,6-Pyridinediyl)bis[phenol]を 用いることで、アルキルボロン酸から対応するアルキルホウ素アート錯体が調製でき、これが可視光照射によりラジカルを生じることを見出した。これは形式的に有機ボロン酸から有機ラジカルが生じるため、官能基許容性に優れた網羅的発生法となる。当該年度では、市販のヨードメチルホウ素化合物より直接励起可能なホウ素アート錯体へと誘導できることを示し、これに可視光を照射するとヨードメチルラジカルが生じることを見出した。また(3)に関しても、すでに端緒となる研究結果を得ている。すなわち、特定の構造を有するホウ素アート錯体では炭素ラジカルを生じることなく一電子移動を起こすことを見出している。以上より、極めて順調に進捗している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先にも述べた通り、本研究は(1)から(3)の実施計画から成っている。(3)に関しても、その端緒を掴んでおり、極めて順調に進捗している。(2)に関しては2,2'-(2,6-pyridinediyl)bis[phenol]を見出したことで、非常に高い官能基許容性が実現できた。また得られた成果を国際誌(査読あり)に学会発表するなどを行なっており、十分な成果として考えている。また国際誌に発表した論文の中で、ヘテロ芳香環へのラジカル付加反応であるMinisci反応に関する報告は一年を通じて最もダウンロードされた論文に選出、またヨードメチルラジカルによるアルケンのシクロプロパン化に関する論文は表紙に選出されるなど、高い評価が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実施計画として(3)を精力的に進める。現在、すでにその端緒となる現象を見出している。すなわち、これまでに開発したホウ素アート錯体は可視光により励起されたのち、一電子酸化されるか均等開裂により炭素-ホウ素結合が切断されて対応する炭素ラジカルを生じる。これは基底状態ではホウ素上の有機基にHOMO、母骨格にLUMOが偏っているため、励起された際にHOMO-LUMO遷移が起こり、結果として結合開裂が進行する。そこでホウ素上の有機基として非常に電子不足なユニットを配置したところ、HOMO-LUMOの偏りが小さくなり、吸収波長は到達しているにも関わらず、可視光照射しても結合開裂が起こらなくなった。このホウ素アート錯体を触媒量添加し、いくつかの光酸化還元反応に付したところ、中程度の触媒機能を示し、有機光酸化還元触媒として作用することがわかった。今後、本ホウ素アート錯体の構造をもとに、さらなる構造最適化を行い、より高活性な有機ホウ素光触媒を開発する。本手法は、二つのユニットを組み合わせることで光触媒を構築できることから、容易にライブラリ化が可能となる。
|