研究課題/領域番号 |
21K06496
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
上野 紀子 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (90546631)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脂質 / 質量分析 / イオンモビリティ / CCS / LC/MS / 脂質分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、リピドミクス解析において重要な技術である質量分析 (MS) に加え、イオンモビリティ情報を解析しその法則性を見出すことで、脂質の同定と新奇脂質分子の構造推定を容易にすることを目的としている。 まず CCS 値を安定的に取得できる方法を確立し、次に様々な脂質サブクラスの測定から実測 CCS データを取得し、グラフ化やイオンモビリティの波形などよりその法則性を明らかにする。得られた法則から未知分子の推定の可能性を検証し、また CCS を活用した新たな分析手法の開発を行う。 この結果は、生体の脂質網羅的解析の質の向上、新奇脂質分子の発見への寄与、ひいては生命現象の解明に繋がるものと考える。
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研究実績の概要 |
衝突断面積(CCS)は分子のかさ高さを示す分子固有の値である。TWIMSタイプの質量分析計(MS)において CCS は装置内のイオンモビリティセルの通過に要する時間であるドリフトタイム (DT)の実測値からキャリブレーションの換算式により求められるが、実態としては文献により同一分子でもCCS値にばらつきがあり、何をもって正確な値とするのか定説は得られていない。セル内の移動距離から換算される DT は、内部の真空度(圧力)により影響を受けると考えらる。そこでイオンモビリティセルの圧力に影響する因子の検討を行った。イオンモビリティセル内の圧力は IMS Pressure setup を施行することでコントロールされるが、研究者の意図する数値を設定することができなかった。申請者は昨年度までの研究により、イオンモビリティセル内の圧力の増減をある程度制御できる手法を見出し、脂質分析を前提としたキャリブレーション試薬の簡便な液体クロマトグラフィーによる分離手法を構築した。今年度はこの手法を用い様々な脂質分子の測定を行った。ホスファチジルイノシトール(PI)について検討した結果、これまで見出してきたCCS/溶出時間(RT)相関に加え、sn-1, sn-2 の構造の違いによっても相関図が引ける可能性が示された。これは、CCS値の安定化とRT分離の工夫の結果と考える。リン脂質の場合は脂肪酸の不飽和度数の増加に伴い相関係数 y=ax+b の切片 b が増加することを示してきたが、グルコシルセラミドについて検討した結果、それぞれのCCS/RT 相関は示せるものの不飽和度 0 から 1 への増加に伴う切片 b の増加は認められなかった。このグルコシルセラミドの不飽和度の位置の違いによるCCSへの影響の法則性を解明することは、CCS値が新たな構造を発見する手法の手掛かりになるかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イオンモビリティセル内の圧力の増減をある程度制御できるようになったものの、時によっては目的の圧力より 0.10-0.20 mbar ほど低い値しか出ず機器のコントロールができないなどのトラブルが1か月単位で発生したため。この現象が解決できない場合、目標の値を検討し直すなど方針の変更を考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2023年度までに構築した系を基盤とし、脂質分析を行い脂質分子の実測CCS値を収集、評価する。その結果を用い、未知の脂質分子のCCS値から構造推定を試みる。状況によってはモビリティセル内の圧力設定の目標値の変更も検討する。
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