研究課題/領域番号 |
21K06502
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47020:薬系分析および物理化学関連
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
河嶋 秀和 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (70359438)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | スカベンジャー受容体 / CD36受容体 / SPECT/CT / in vivoイメージング / 生活習慣病 / 悪性腫瘍 / in vivo イメージング / CD36 / トランスレーショナル・リサーチ |
研究開始時の研究の概要 |
生体恒常性の維持に深く寄与するスカベンジャー受容体を標的とし、in vivoイメージング手法を用いて様々な病態におけるその機能を解明するとともに、予防医学・創薬・治療といった幅広い領域への貢献を目指す。 具体的には、スカベンジャー受容体に結合する放射性分子プローブを開発する。さらに、動物に投与後の動態を非侵襲的・定量的に追跡可能な画像撮像装置(SPECT/CT)を活用し、代謝性疾患(生活習慣病)や悪性腫瘍モデルでの当該受容体の機能を明らかにする。また、薬物治療や核医学治療を施した際の効果を判定することで、スカベンジャー受容体が関与する疾患の診断から治療に至る橋渡し研究へと導く。
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研究実績の概要 |
スカベンジャー受容体(SR)機能の破綻は、生体において種々の疾患の要因になると考えられている。そこで本研究では、動物健常個体あるいは病的状態にある個体での組織SR発現量を評価し、関連疾患の診断・予防へと結び付けることを目的とする。令和4年度は、SRを介して細胞内に取り込まれる酸化LDLの放射性ヨウ素標識体(125I-oxLDL)を用い、腫瘍およびアテローム性動脈硬化病変における同プローブの放射能集積を検討した。 まず、SRの一種であるCD36受容体が腫瘍悪性度に関与しているという報告から、浸潤性に差を認める2種類の乳がん細胞株:MCF-7細胞とMDA-MB-231細胞を皮下接種することで担がんモデルマウスを作製し、125I-oxLDL静脈内投与後における腫瘍集積性の相違を比較した。その結果、CD36受容体が高発現しているMCF-7腫瘍で有意に高い放射能集積を認め、悪性度と負の相関を示す結果が得られた。 また、アポリポプロテインEノックアウトマウス(ApoE-KOマウス)に125I-oxLDLを反復投与し、イソフルラン麻酔下でSPECT/CT撮像を試みたところ、大動脈のアテローム性動脈硬化プラーク形成部位が描出された。これは、培養マクロファージを用いた125I-oxLDL のin vitro細胞取込み実験、および摘出組織標本から作製したex vivoラジオルミノグラフィーの結果と一致した。 一方、これらの実験と並行し、健常マウスに寒冷刺激を与えることで123I-oxLDLの褐色脂肪組織への集積性が高まること、さらにその動態にはCD36が深く関与していることをCD36-KOマウスを用いた検討で明らかにした。本細胞応答には交感神経系の関与が示唆され、今後精査してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究課題で実施を予定していた項目のうち、スカベンジャー受容体LOX-1(Lectin-like oxidized LDL receptor-1)を標的とした新規イメージングプローブの合成は進展していない。これは昨年度に引き続き、4-hydroxy-2-nonenalのhistidine誘導体の合成原料が入手困難であったことが理由である。別の骨格を有する化合物の設計・合成も検討したものの、データベース上から有益な情報を得られなかった。 このような状況下、現時点では放射性ヨウ素標識oxLDLをプローブとして活用した研究を重点的に行っている。本来SPECT用の放射性核種ではないI-125でSPECT撮像を検証できたことの有用性は昨年度に報告したが、その具体的な活用例として悪性腫瘍やアテローム性動脈硬化プラークのex vivo定量評価とin vivoイメージングを結び付けられたことは大きな成果と考えている。現在はoxLDLの除去機構と生体恒常性の維持に関する研究を開始している。 以上の点を総合的に鑑み、進捗状況の自己評価は「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、CD36を中心としたスカベンジャー受容体によるホメオスタシス維持機構につき、放射性プローブ125I-oxLDLを用いて解明を進める。 生理的環境下では、CD36は心筋や骨格筋、褐色脂肪組織に発現し、エネルギー代謝に広く関わっていることが知られている。そこで、トレッドミルを用いて強制運動負荷を施したマウス、あるいは片側後肢をギプスにて固定した廃用性筋委縮モデルマウスを作製し、運動による骨格筋量とそのoxLDL取込みの関係を探る。これにより、「筋肉の活性化により血中老廃物のクリアランスを高める」という生活習慣病の予防と健康状態の維持について運動生理学的な側面からアプローチする。 具体的には、野生型およびCD36-KOマウスそれぞれにおいて上記モデルを用意する。これらマウスに125I-oxLDLを静脈内投与後、骨格筋(ヒラメ筋,腓腹筋など)を摘出し、放射能集積およびCD36発現量の変化を調べる。また、CD36は脂肪酸酸化によるエネルギーを利用するタイプⅠ筋線維(赤筋)に偏在することを考慮し、筋肉の種類によるoxLDLや脂肪酸取込みの差を、対応する放射性プローブを用いたex vivo,in vivo実験により明らかにする。
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