研究実績の概要 |
計画2年目である2022年度は2021年度の成果をさらに発展させて,ビタミンD3代謝物などのセコステロイドや7-デヒドロコレステロール酸化成績体を誘導体化の対象化合物にした,多点認識に基づく,きわめて高い測定対象の特異的構造への選択性を持ちかつ超高感度と位置異性体の相互弁別を含む超高選択性をもたらすスマート試薬の開発を行った.すなわち,1,2,4-triazoline-3,5-dione (TAD) を母核とし,その4位に常時正荷電のピリジニウム構造を含有したCookson型試薬の開発を試みた.誘導体化試薬には適度な疎水性が好適であることから置換ピリジンをベースに,疎水性とアルキル基への導入時に立体障害が極力少ないことなどを勘案して,2位にフッ素を置換した2-fruololisonicotinic acidを用いて4段階で鍵中間体である2'-fluoropyridyl-1,2,4-triazolidine-3,5-dione (ウラゾール体) へと導いた.得られたウラゾール体はブロモエタンと作用させ,目的のN-ethyl-2'-fluoropyridinium-1,2,4-triazolidine-3,5-dioneを得た.これを脱水素酸化し,新規荷電Cookson型試薬:1'-ethyl-2'-fluoropyridinium-1,2,4-triazoline-3,5-dione (EFPTAD) の合成に成功した.EFPTADとビタミンD前駆体である7-デヒドロコレステロールは定量的に反応が進行したため,本試薬の反応性も確認できた.また,EFPTADの窒素原子とフッ素原子の位置異性体についても検討した所,N-ethyl基が脱離しやすいことも判明し,試薬の合成の容易さと試薬安定性の面でもEFPTADが有意であることも見出した.
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