研究課題
基盤研究(C)
生体の主成分である脂質の分離と網羅的定量解析を可能とするダブルスタンダードリピドーム(細胞中の脂質総体)解析法を開発し,将来的には非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断方法の開発を目指す.この新規解析方法は,定性的解析を行う超臨界流体クロマトグラフィー質量分析装置(SFC-MS)と絶対定量が行える核磁気共鳴装置(NMR)を同時使用する新たな発想からなり,標準品の存在しない微量代謝物の網羅的・絶対定量を可能とする.
本年度は昨年度測定した結果の解析を行った。三連四重極型質量分析装置(TQMS)を用いたリン脂質の相対定量値を正確に算出するために、プロダクトイオンの補正係数の計算を行った後に、リン脂質の定量を行った(アルゴリズムは特許申請済)。NASHのモデルマウスは脂肪肝を発症しているため、ほとんどの脂質クラスが増加しており、個々の脂質量を比較するだけではあまり意味がない。ほぼすべてのリン脂質と中性脂質は脂肪肝で増加したが、リゾリン脂質は若干減少した。量よりも質に注目するため測定した結果から各脂質クラスを構成する脂肪酸側鎖の比率を比較した。構成脂肪酸側鎖比率から具体的には細胞膜のメインリン脂質であるフォスファシジルコリン(PC)やフォスファチジルエタノールアミン(PE)において、パルミチン酸の割合は脂肪肝になると減少しているが、ステアリン酸の割合は増加していた。これはパルミチン酸はアシルカルニチンとしてミトコンドリア膜を通過し、エネルギー消費できるが、ステアリン酸は膜を通過できないため、肝臓に蓄積していったものと思われる。また、最も量の多い脂質である脂肪酸側鎖が3本のトリアシルグリセロール(TG)の解析を行った。TGはTQMSで質量分離することが難しく、異性体の混合物となるため、ピークの一番低いトランジションを定量トランジションとして採用することで相対定量を行った。NMRはリン(P)で測定予定であったが、リン脂質以外の中性脂質にも組成変化が見られた事から予定を変更して、プロトン(H)NMRとCOSY(2DNMR)での測定を行った。
2: おおむね順調に進展している
懸念されていた測定が無事終わり、結果が出そろった。引き続き解析を行い、結果をまとめる。
当初質量分析装置で解析を行った結果、リン脂質以外にも中性脂質でも差が多く見られたため、NMRは当初はリン脂質の定量に向いているリンNMRで行う予定であったが、方針を変更し感度が高く、定量が容易なプロトンNMRで解析を行う事になった。プロトンNMRのみでは帰属が難しいため、COSY(2DNMR)での測定も同時に行った。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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