研究課題/領域番号 |
21K06546
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
關谷 瑞樹 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (70509033)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | プロトンポンプ / F-ATPase / S. mutans / 虫歯菌 / P. gingivalis / 歯周病菌 / S. anginosus / う蝕 / 歯周病 / イオン輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに研究代表者らは、S. mutansやP. gingivalisなどの口腔内病原細菌のプロトン輸送ATPaseが、耐酸性や栄養物の取り込みに関与し、生存・増殖に重要な役割を果たすことを示唆した。この役割は、ほ乳類を含む他の生物種とは全く異なる。そこで、本研究課題ではこれらの細菌のプロトン輸送ATPaseと共役する輸送体を特定し、独自のイオン輸送ネットワークの全容を解明する。さらに、プロトン輸送ATPaseと特定した輸送体の作動機構を明らかにし、特異的な阻害剤を創出する。本研究の成果は、う蝕・歯周病の新たな予防・治療戦略の確立につながると考えられる。
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研究実績の概要 |
う蝕や歯周病は、S. mutansやP. gingivalisなどの口腔内病原細菌による感染により引き起こされる。近年、これらの細菌において、プロトン輸送ATPaseが、生存や増殖に重要な役割を果たしている可能性が示された。そこで、本研究課題では、 口腔内病原細菌におけるプロトン輸送ATPaseの詳細な役割を明らかにし、共役する分子を同定することを目的としている。それらの分子の機能を阻害する低分子化合物を見出すことで、う蝕・歯周病の新たな予防・治療戦略を確立することできる。今年度は、S. mutans、P. gingivalisのプロトンポンプ、及び関連する分子に関して以下の成果が得られた。 1) S. mutansのF型プロトン輸送ATPase(F-ATPase)は以前から耐酸性への寄与が推定されていたが、直接的な証明はされていなかった。そこで、F-ATPaseの発現が低下した変異株を作製し、その表現型を検討した。F-ATPase変異株は野生株と比べ酸性環境での増殖と生存率が低下することを明らかにした。したがって、S. mutansの耐酸性にF-ATPaseが関与することが強く示唆された。 2) P. gingivalis などの病原細菌では、タンパク質やペプチドをジペプチジルペプチダーゼ(DPP)により分解してアミノ酸を取り込む。アミノ酸の取り込みはA型プロトン輸送ATPase(A-ATPase)が形成するプロトン濃度勾配を利用すると考えられている。P. gingivalis DPP7の活性中心に結合したジペプチドから構造変換を行った化合物の酵素活性とP. gingivalis に対する抗菌作用を評価したところ、酵素活性の阻害と相関して、強い抗菌作用がみられた。阻害化合物は、歯周病の予防・治療薬のシード化合物になりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、S. mutans F-ATPase が耐酸性に重要な役割を果たしていることを示唆した。また、P. gingivalis のA-ATPaseを介したアミノ酸の取り込みに関連するDPP7を阻害することで同菌に対して抗菌作用を示すことが示唆された。研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題により、病原性の高い口腔内のレンサ球菌のS. mutans、S. anginosusのF-ATPaseが、耐酸性に関与していることが示唆された。F-ATPaseは一般にATP合成酵素として知られており、これは口腔 内細菌における独自の役割であると考えられる。これらの細菌で同酵素は、ATPを合成する場合とは異なるイオン輸送体と共役し、独自のイオン輸送ネットワークを形成していると予想される。そこで、S. mutans、及びS. anginosusにおいてF-ATPaseと共役している可能性のある陰イオン輸送体の欠損株を作製しその表現型を評価する。欠損株の耐酸性が低下していれば、F-ATPaseと共役している可能性が高い。また、S. anginosus はF-ATPaseだけでなくA-ATPaseも有する。A-ATPaseの役割を明らかにするため、遺伝子欠損株を作製し、表現型を検討する。並行して、S. mutans、S. anginosusのF-ATPase、P. gingivalisのA-ATPaseのリコンビナントタンパク質の精製を行い、特異的阻害剤を探索する。
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