研究課題/領域番号 |
21K06557
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
磯部 洋輔 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 副チームリーダー (80724335)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 脂質修飾 / ケミカルプロテオミクス / 12/15-LOX / 好酸球 / リポキシデーション / ケミカルバイオロジー / 標的同定 |
研究開始時の研究の概要 |
多価不飽和脂肪酸は細胞内において酸化・代謝され、タンパク質のシステインやリジン残基等を非可逆的に修飾する。こうしたタンパク質修飾は「リポキシデーション」と呼ばれ、 転写調節など様々なタンパク質機能に影響を与えているものと考えられているが、細胞内リポキシデーションの標的については未解明の点が多く残されている。そこで本研究計画では、研究代表者らがこれまでに構築してきた脂質修飾の標的同定技術を組織の恒常性維持に関わる好酸球の機能解析に応用し、リポキシデーションの分子実体を包括的に解明すると共にその生理的意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
多価不飽和脂肪酸(PUFA)はリポキシゲナーゼ(LOX)などによって酸化を受け、一部が反応性脂質代謝物 (lipid-derived electrophile: LDE)としてタンパク質を修飾する。本研究ではLOXの一つである12/15-lipoxygenase(12/15-LOX)に着目し、本酵素が産生するLDEによって修飾されるタンパク質を網羅的に同定するとともに、12/15-LOXを発現する好酸球における修飾の機能的役割の解明を目指している。これまでに、脂肪酸アルキンプローブ等を用いたケミカルプロテオミクスの手法により12/15-LOX由来LDEの標的候補を得ている。そこで本年度は、それらの候補に対してLDEの標的としてのバリデーションを行った。 12/15-LOXと標的候補を共発現させた細胞に脂肪酸アルキンプローブを処理して細胞ライセートを調整し、クリック反応によって修飾タンパク質をラベルして検出した。その結果、12/15-LOXの発現依存的に標的タンパク質へのプローブのラベルが認められた。また、これまでにABPPプロテオミクスによって見出した標的たんぱく質における標的部位のシステインを反応性の低いアミノ酸に置換した変異体を作成して同様の実験を行った結果、野生型で認められた修飾のシグナルが変異体では顕著に減少しており、ケミカルプロテオミクスによって見出された標的部位が実際にLDE修飾を受けることが示唆された。さらに、標的タンパク質の活性がLDE処理によって抑制されたが、その抑制が変異体に対するLDE処理ではキャンセルされたことから、当該システインへのLDE修飾が機能的にも重要であることが示された。 また、システイン反応性の化合物ライブラリを用いたスクリーニングを行い、LDEの標的タンパク質をターゲットする化合物の候補を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪酸アルキンプローブを用いたケミカルプロテオミクスの手法によって見出された修飾タンパク質の候補について、実際にLDEのターゲットになることをLOXと候補タンパク質との共発現系により示すことができた。また、反応性の高いアミノ酸を捉えるケミカルプロテオミクスによって同定された修飾部位候補のシステインにも介入し、修飾の機能性をアミノ酸レベルで実証することに成功した。また、ケミカルジェネティクスのアプローチによってLDEによる修飾をミミックする化合物の候補も得られている。このように、ケミカルプロテオミクスにより得られた修飾の候補タンパク質について各方面からのバリデーションが進んでおり、概ね順調な進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ケミカルプロテオミクスにより見出されたLDEの標的タンパク質候補について、実際にLDEによって修飾されるかの検証を引き続き進める。その際、LDEによって標的タンパク質の機能が制御されるかの検証も併せて行う。また、標的タンパク質が関わる好酸球の細胞機能に着目し、12/15-LOXの遺伝子欠損やLDEの処理などによる介入を行うことで、好酸球における12/15-LOXおよび12/15-LOX依存的なLDE修飾の機能的役割を解明する。 また、システイン反応性の化合物ライブラリを用いたLDE標的タンパク質に対するリガンド探索についても継続する。これまでに用いてきたアクリルアミド化合物に加え、より反応性の高いクロロアセトアミドをベースとした化合物ライブラリも調達し、システイン反応性プローブの結合阻害を指標にLDE修飾タンパク質に対するリガンドを探索するとともに、得られた化合物の好酸球に対する活性を評価する。
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