研究課題/領域番号 |
21K06567
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47030:薬系衛生および生物化学関連
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
中瀬 朋夏 (高谷朋夏) 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (40434807)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 乳がん / 亜鉛 / タモキシフェン / 細胞死 / トリプルネガティブ乳がん / オートファジー / 亜鉛トランスポーター / 治療抵抗性 / 悪性化機構 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、乳がんの根治を妨げる治療耐性獲得プロセスにおける亜鉛シグナルの解明とその関連分子を標的とした新たな乳がん診断、治療技術の開発に挑む。方法として、乳がん細胞の亜鉛シグナルの発信源である亜鉛トランスポーターZIP6を、Tet誘導shRNA人工制御システムを用いて可逆的かつ特異的な発現調節により、悪性化プロセスを模倣できる細胞を新たに構築し、そのときの細胞内亜鉛ネットワークをライブイメージング技術により時空間的に解析することで、治療耐性獲得の仕組みを読み解く。
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研究実績の概要 |
これまで、乳がんの治療抵抗性における亜鉛の役割を解明する中で、エストロゲン受容体(ER)陽性乳がんに適用されている抗エストロゲン剤タモキシフェン(Tam)の薬効は、亜鉛で自由自在に制御できる可能性を明らかにしてきた。本年度は、Tam療法の最適化に、亜鉛の併用投与が有用か否か、治療耐性乳がん細胞および乳がんモデルマウスを用いた安全性の検討を中心に研究を進めた。ER陽性ヒト乳がん細胞MCF-7に対して、Tamと亜鉛を併用処置した結果、亜鉛の濃度に依存して、Tamによる細胞生存率の抑制を促進した。そのMCF-7の生存抑制の機序には、過剰なオートファジーの誘導を伴う非アポトーシス型細胞死の亢進が関与することを明らかにした。Tamと亜鉛の併用はまた、Tam耐性を示すMCF-7に対しても、著しく細胞死を誘導し、IC50を野生型のMCF-7と同程度かそれ以下にまで激減させることに成功した。亜鉛の併用療法は、Tamの薬剤耐性を克服できる可能性を明らかにした。さらに、ERをはじめ、プロゲステロン受容体およびHer2受容体を持たず、分子標的治療が実践できない悪性度が極めて高いトリプルネガティブ乳がんに対しても、Tamによるオートファジー機構を亜鉛で操り、効率よく細胞死を誘導することができた。これは、ERを介さずにTamの薬効を制御できることを示唆しており、さらなる詳細な分子機序を解析することで、Tamを用いたがん治療適用の拡大につながる可能性が期待できる。MCF-7を同所移植した乳がんモデルマウスに対する亜鉛の継続的な経口投与は、Tam単独投与よりも、腫瘍の成長度合いが緩徐になる傾向を示した。さらに、重篤な副作用なく、乳がんによる死亡率を減少させ、生存期間を著しく延長させる傾向があった。以上より、Tamと亜鉛の併用投与は、新たながん薬物療法の実用的な戦略として期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、現在臨床で使用されているタモキシフェンの抗がん活性を、亜鉛で制御し、タモキシフェンに対する耐性を獲得した乳がんに対しても応用できる可能性に迫った。しかし、実験試薬の調達が間に合わず、計画していたイメージング解析を含む一部の生化学実験および動物実験に関しては若干の遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
タモキシフェンの抗がん活性を制御する亜鉛シグナルを明らかにするため、乳がん細胞内外の亜鉛の動態を、時空間的に解析する。さらに、より厳密かつ自由自在にタモキシフェンの抗がん活性を制御するため、亜鉛の動態に関わる亜鉛トランスポーターを解析し、亜鉛シグナルのスイッチ分子を同定する。タモキシフェンと亜鉛の最適な併用投与量およびルートといった投与計画の構築については、in vivo担がんモデルを作成し、タモキシフェンの効果とともに、安全性を追跡し、検証する。
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