研究課題/領域番号 |
21K06591
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 兵庫医科大学 (2022) 兵庫医療大学 (2021) |
研究代表者 |
北中 純一 兵庫医科大学, 薬学部, 准教授 (10278830)
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研究分担者 |
北中 順惠 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30340954)
木村 信也 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (70273703)
田中 康一 兵庫医科大学, 薬学部, 講師 (30274848)
西山 信好 兵庫医科大学, 薬学部, 教授 (20201692)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 覚せい剤 / 薬物依存 / ヒスタミンH1受容体 / 陽性症状 / 退薬症状 / GSK3 / GSK3阻害薬 / Wnt/beta-cateninシグナル / ヒスタミン / 中枢ヒスタミン神経 / 依存 / 薬物療法 / 組織含量 / methamphetamine / histamine / drug dependence / drug abuse / pharmacotherapy |
研究開始時の研究の概要 |
薬物依存は脳の疾患である。メタンフェタミン(METH)の場合、ヒスタミンの視床下部組織含量が上昇する方向にMETH陽性症状の緩和が認められることを我々は見出している。現在までに、ヒスタミン合成を修飾し、あるいはヒスタミン代謝を阻害する薬物の「METH依存治療薬」としての可能性を研究してきた。ヒスタミンH3受容体逆作動薬が自己受容体であるヒスタミンH3受容体に結合すると、シナプス間隙のヒスタミン含量は上昇する。本研究では、H3受容体逆作動薬を核とし、ヒスタミン神経系活性化を第一としたMETH依存治療の手法探索を目的に、副作用が少ない薬物を検索して、効果的にMETH依存を治療することを研究する。
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研究実績の概要 |
覚せい剤をマウスに投与した場合に生じる過運動(hyperlocomotion)に対して、ヒスタミンH3受容体逆作動薬を前処置した場合の有効な抑制効果を昨年度実験的に確立したことを受け、昨年度の「今後の研究の推進方策」に則り、glycogen synthase kinase 3(GSK3)酵素の働きを想定して、その各種選択的阻害薬を用いた行動様式の変化へ研究を展開した。その結果、(1)GSK3阻害薬SB216763およびAR-A014418は、マウスに対するモルヒネ投与によって誘発されるStraubの挙尾反応、過運動、新奇環境暴露時発現する立ち上がり行動を有意に抑制した(Kitanaka et al. Neurochemical Research (2023))、(2)覚せい剤誘発常同行動をGSK3阻害薬Laduviglusib (別名CHIR-99021)やLY2090314は用量依存的に有意に抑制し、覚せい剤誘発過運動に対してもそれを抑制した(学会発表予定)、(3)連続投与したモルヒネが誘発する退薬症状のうち、特にオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン投与直後の禁断症状=「跳躍行動」や反復立ち上がり行動をGSK3阻害薬Laduviglusibが数時間の前処置により抑制すること(学会発表予定)を相次ぎ見出した。これらは覚せい剤をはじめとする依存薬物の共通分子経路に作用している可能性が高く、現在そのメカニズムに迫るため、まず他の依存物質=アルコールでのGSK3作用の分子経路を文献調査し(調査成果を「総説」として論文投稿中)、その結果、Wnt/beta-cateninシグナル経路を中心にその活性調節を調べる準備をしている。さらに、ヒスタミンH1受容体情報伝達系とWnt/beta-cateninシグナル経路とのつながりを解明することで、本研究課題の核心に迫ろうとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究第二年度において、展開すべき研究戦略として脳ヒスタミン神経系の有効性にかかる細胞内シグナル伝達経路の予測がつき、行動薬理学的に必要十分な知見が、上述のように得られたことから、極めて有効かつ順調に進展していると判断した。研究実施者はこの研究推進のタイミングにおいて異動人事のため実験測定機器との物理的分断に遭遇しているが、共同研究を有効に展開することでこれを乗り切る以上の研究成果を上げている。またヒスタミンの組織含量を正確に定量する蛍光式HPLCシステムを構築しており、その脳部位サンプリングは上記研究のもとで第一次計画として終了している。行動様式の、神経伝達物質の挙動を加味した評価をできうることを示したことに加え、GSK3阻害薬の著明な効果を世界に先駆けて発見したことは、本研究課題の社会への還元という意味においても大きな一年となったと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な分子メカニズムとして、脳組織のヒスタミン含量が増加することが、依存薬物覚せい剤陽性症状緩和への分子メカニズムである。この点から進んで上述Wnt/beta-cateninシグナル経路の関連が認めれれば、現在特にGSK-3酵素の働きを想定しており、その選択的阻害薬を用いた覚せい剤をはじめとする依存薬物が誘発する陽性症状行動様式の制御という本研究課題の目標に近づくことが出来る。この研究に用いることができる薬物はすでに相当種類入手しており、いくつかについてpilot studyを進めている。それらGSK3阻害薬の「副作用」というべき効果がないことの研究についても、循環系への影響をはじめとして順調に展開している。
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