研究課題
基盤研究(C)
近年,国際的に自閉スペクトラム症 (ASD) を罹患する小児の著増が認められ,その発症率は女児に比べて男児のほうが約4倍高いことが知られている.研究代表者らは,妊娠中の抗てんかん薬服用により出生児のASD発症リスクが増大するという臨床知見に着目し,胎仔期バルプロ酸 (VPA) 曝露マウスがASDモデルとして有用であることを明らかとし,また,本モデルマウスが臨床所見と同様に雄性でASD様症状の発症率が高いという“性差”を示すことを見いだした.本研究では,これらの知見を踏まえて,“性差”を指標としてASDの病態分子基盤の解明を試み,新たな薬物療法への応用を追究する.
本研究では,研究代表者らが自閉スペクトラム症 (ASD) マウスモデルとして確立した「“雄性”の胎仔期VPA曝露マウス」と,ASD様行動が誘導されなかった“雌性”の胎仔期VPA曝露マウスとの“性差”を指標として,ASDの中核症状様行動の発現に関わる誘導分子あるいは抑制分子を解明することを目的とした.まず,胎生12.5日目のVPA曝露が,雄性仔マウスにおいてのみ社会性行動の低下を引き起こすことを確認した.VPA曝露6時間後の雌雄の胎仔マウスの大脳皮質より調製したtotal RNAを用いてRNAシークエンシング法により遺伝子発現の網羅的解析を行い,有意な増減を示す数十個の分子を検出した.
近年の疫学調査より,ASD発症が遺伝的要因だけでは説明できないことが明らかとされ,特に,胎児期の母体の感染や薬物摂取,および産科的合併症など胎生期・周産期の母体環境要因が注目されている.さらにこの4~5年は,遺伝的要因および環境要因とともに“性差”に関する報告が急増しており,“性差”の観点からASDの病態解明にアプローチしようとする研究の潮流が起きている.したがって,“性差”を指標としてASDの病態分子基盤にアプローチを試みた本研究は国内外の動向と一致するものであり,その成果は,ASDの病態研究の発展と新たな治療薬の開発に貢献しうる学術的ならびに社会的意義の高いものと評価される.
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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