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内向き整流性カリウムチャネルによる骨形成調節機構の解明とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K06600
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分47040:薬理学関連
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

鬼頭 宏彰  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (40749181)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
キーワード骨芽細胞 / 細胞分化 / 内向き整流性カリウムチャネル / カルシウムシグナル / Kir2.1
研究開始時の研究の概要

K+チャネルはCa2+シグナルを制御することにより、様々な細胞種において生理的役割を果たす。骨組織は骨リモデリングによりその恒常性を保っており、その破綻が多くの骨代謝性疾患の原因となっている。骨代謝性疾患の治療薬の開発戦略の中で、骨芽細胞機能の制御機構の解明が注目をされているが、前骨芽細胞に機能発現するK+チャネルが骨組織恒常性機構において、どのような役割を果たしているのかは明らかにされていない。本研究の目的は、骨芽細胞分化におけるK+チャネルの役割を解明し、骨形成の分子機構におけるK+チャネルの生理的意義を解明することで、骨代謝疾患治療を指向したイオンチャネル創薬戦略を考案することである。

研究実績の概要

前骨芽細胞の細胞増殖・細胞分化は骨組織恒常性維持において重要な役割を果たしている。我々は、マウス前骨芽細胞MC3T3-E1を用いて細胞増殖・細胞分化におけるイオンチャネルの役割を検討した。これまでの検討により、MC3T3-E1細胞には中コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルKCa3.1が機能発現し細胞増殖を促進するのに対して、内向き整流性カリウムチャネルKir2.1が骨芽細胞分化により発現が亢進することを明らかにしている。本検討において、骨芽細胞分化に伴うKir2.1発現亢進が細胞内カルシウムシグナルを亢進させて骨芽細胞分化を促進することを示した。培養細胞に加えてマウス胎児より単離した中足骨を用いた軟骨内骨化モデルにおいてもKir2.1阻害薬は骨石灰化を抑制したことから軟骨内骨化の制御においても重要な役割を果たすことが示された。また、骨芽細胞分化にともなうKir2.1発現亢進メカニズムを検討したところ、microRNA網羅解析やmicroRNA阻害薬、microRNA mimicを用いた検討から、microRNAを介した制御が重要な役割を果たすことが示された。骨芽細胞におけるカリウムチャネル活性化を介した過分極が骨芽細胞機能に与える影響に関して今後さらなる検討が必要である。
これまでの継続した研究成果より、KCa3.1及びKir2.1は骨芽細胞増殖及び細胞分化の制御において重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。今後はこれらの知見を基に骨代謝疾患における骨形成制御を目的としたイオンチャネル創薬の標的分子としての可能性を検討していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前骨芽細胞、骨芽細胞を含む骨芽細胞関連細胞の細胞増殖・細胞分化は骨形成において重要な役割を果たしていると考えられている。骨芽細胞において中コンダクタンスカルシウム活性化カリウムチャネルKCa3.1は前骨芽細胞増殖を促進するのに対して、骨芽細胞分化条件下ではKCa3.1発現が減少に伴い内向き整流性カリウムチャネルKir2.1の発現活性が亢進することを明らかにした。Kir2.1阻害薬ML133は、骨芽細胞分化マーカーであるALPやBSPの発現を有意に減少させた。またsiRNAを用いたKir2.1発現抑制実験はALP発現を減少させた一方で、Kir2.1強制発現はALPの発現減少を回復させた。Kir2.1の活性化は細胞膜の過分極を介した細胞内カルシム流入制御により骨芽細胞分化を促進することが示唆された。骨組織レベルでのKir2.1の役割を検討するために、マウス胎児中足骨を用いた軟骨内骨化モデルを用いて検討したところ、Kir2.1が骨組織の石灰化にも大きく寄与することが明らかとなった。骨芽細胞分化によるKir2.1の発現亢進機構を解明するために、miRNA発現解析を行った。Kir2.1mRNAに結合する可能性を持つmiRNAをデータベース上で検索し、骨芽細胞分化に伴う網羅的なmiRNAの発現変動の結果と照合することでKir2.1発現制御に関わる可能性を持つ12の候補miRNAを選出した。それぞれのmiRNAの阻害剤やmimic体を用いて検討したところ、骨芽細胞分化に伴うKir2.1発現亢進制御に関わる分子としてmiR-106-5pを同定した。また、生体内における骨代謝への寄与を検討するために大腿骨損傷モデルマウスを作成し始めているが条件等に時間を要しており実験期間の延長を申請した。

今後の研究の推進方策

骨芽細胞における細胞分化制御におけるイオンチャネルの関与をより詳細に検討するために、培養細胞や単離骨組織だけではなくマウス骨損傷モデルを利用することでinvivoの骨形成におけるKir2.1の役割を明らかにする。
骨芽細胞分化に伴うKir2.1の発現亢進は細胞膜の過分極及びカルシウム流入を促進する。骨芽細胞はギャップジャンクションを介して細胞間シグナル伝達を行っていると考えられていることから、Kir2.1を介した膜電位やカルシウムシグナルも細胞間伝播により骨芽細胞分化シグナルを形成する可能性が考えられる。骨芽細胞に機能発現するconnexin43やpannexin3を介した細胞間シグナル伝播について検討するとともに、これら両分子のhemichannelとしてのATP分泌を介した細胞分化制御に関しても検討を行うことで、細胞膜の過分極による骨芽細胞分化制御メカニズムを明らかにする。
また、細胞増殖・分化の制御におけるCa2+シグナルの役割を明らかにするために、骨芽細胞が分泌するサイトカインや細胞間因子を用いてKCa3.1やKir2.1への影響を検討する。特に骨芽細胞の産生するインスリン様成長因子(IGF)や線維芽細胞成長因子(FGF)の発現変化や各因子に対する感受性変化に注目し、骨機能制御に関連する生理活性物質とイオンチャネル活性との関連を明らかにする。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (20件)

すべて 2023 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] KCa3.1 regulates cell cycle progression by modulating Ca2+ signaling in murine preosteoblasts2023

    • 著者名/発表者名
      Kito Hiroaki、Kawagishi Reiko、Ryu Takusei、Endo Kyoko、Kajikuri Junko、Giles Wayne R.、Ohya Susumu
    • 雑誌名

      Journal of Pharmacological Sciences

      巻: 153 号: 3 ページ: 142-152

    • DOI

      10.1016/j.jphs.2023.09.001

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Down-Regulation of CYP3A4 by the KCa1.1 Inhibition Is Responsible for Overcoming Resistance to Doxorubicin in Cancer Spheroid Models2023

    • 著者名/発表者名
      Ohya Susumu、Kajikuri Junko、Kito Hiroaki、Matsui Miki
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 号: 21 ページ: 15672-15672

    • DOI

      10.3390/ijms242115672

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] KCa3.1 inhibition-induced activation of the JNK/c-Jun signaling pathway enhances IL-10 expression in peripherally-induced regulatory T cells2022

    • 著者名/発表者名
      Matsui Miki、Kajikuri Junko、Endo Kyoko、Kito Hiroaki、Ohya Susumu
    • 雑誌名

      Journal of Pharmacological Sciences

      巻: 148 号: 1 ページ: 1-5

    • DOI

      10.1016/j.jphs.2021.09.007

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Down-regulation of IL-8 and IL-10 by the activation of Ca2+-activated K+ channel KCa3.1 in THP-1-derived M2 macrophages2022

    • 著者名/発表者名
      Susumu Ohya, Miki Matsui, Junko Kajikuri, Hiroaki Kito, Kyoko Endo
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 23 号: 15 ページ: 8603-8603

    • DOI

      10.3390/ijms23158603

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Increased Interleukin-10 Expression by the Inhibition of Ca2+-Activated K+ Channel KCa3.1 in CD4+CD25+ Regulatory T Cells in the Recovery Phase in an Inflammatory Bowel Disease Mouse Model2021

    • 著者名/発表者名
      Ohya Susumu、Matsui Miki、Kajikuri Junko、Endo Kyoko、Kito Hiroaki
    • 雑誌名

      Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics

      巻: 377 号: 1 ページ: 75-85

    • DOI

      10.1124/jpet.120.000395

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ca2+‐activated K+ channel KCa1.1 as a therapeutic target to overcome chemoresistance in three‐dimensional sarcoma spheroid models2021

    • 著者名/発表者名
      Ohya Susumu、Kajikuri Junko、Endo Kyoko、Kito Hiroaki、Elboray Elghareeb E.、Suzuki Takayoshi
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 112 号: 9 ページ: 3769-3783

    • DOI

      10.1111/cas.15046

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] KCa1.1 K+ channel inhibition overcomes resistance to antiandrogens and doxorubicin in a human prostate cancer LNCaP spheroid model2021

    • 著者名/発表者名
      Ohya Susumu、Kajikuri Junko、Endo Kyoko、Kito Hiroaki、Matsui Miki
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 22 号: 24 ページ: 13553-13553

    • DOI

      10.3390/ijms222413553

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Role of K<sup>+</sup> and Ca<sup>2+</sup>-permeable channels in osteoblast functions2021

    • 著者名/発表者名
      Kito Hiroaki、Ohya Susumu
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 22 号: 19 ページ: 10459-10459

    • DOI

      10.3390/ijms221910459

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 骨芽細胞分化制御におけるATP受容体P2X4の役割2023

    • 著者名/発表者名
      鬼頭 宏彰,劉澤成,山口莉奈,梶栗 潤子,大矢 進
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ATP受容体P2X4を介した骨芽細胞分化制御2023

    • 著者名/発表者名
      鬼頭 宏彰,劉澤成,雑賀紀明,遠藤 京子,梶栗 潤子,大矢 進
    • 学会等名
      第97回日本薬理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 骨芽細胞分化におけるATP受容体P2X4の役割2023

    • 著者名/発表者名
      鬼頭 宏彰,劉澤成,雑賀紀明,遠藤 京子,梶栗 潤子,大矢 進
    • 学会等名
      第143回日本薬理学会近畿部会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ATP受容体P2X4を介した骨芽細胞分化制御機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      鬼頭 宏彰,劉澤成,山口莉奈,遠藤 京子,梶栗 潤子,大矢 進
    • 学会等名
      第17回トランスポーター研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Involvement of down-regulation of KCa3.1 K+ channel to decreases in cell proliferation of mouse preosteoblasts treated with VDR agonists2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Kito, Kyoko Endo, Junko Kajikuri, Susumu Ohya
    • 学会等名
      39th International Union of Physiological Sciences Congress
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ATP透過性ヘミチャネルによる骨芽細胞分化調節におけるKir2.1 K+チャネルの役割2022

    • 著者名/発表者名
      鬼頭 宏彰,劉澤成,雑賀紀明,遠藤 京子,梶栗 潤子,大矢 進
    • 学会等名
      第141回日本薬理学会近畿部会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 骨芽細胞分化制御における ATP 透過性ヘミチャネルを介した内向き整流性K+チャネル Kir2.1 の役割2022

    • 著者名/発表者名
      鬼頭 宏彰,劉澤成,雑賀紀明,遠藤 京子,梶栗 潤子,大矢 進
    • 学会等名
      第96回薬理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] P2X4を介した骨芽細胞分化調節におけるKir2.1 K+チャネルの役割2022

    • 著者名/発表者名
      鬼頭 宏彰,劉澤成,雑賀紀明,山口莉奈,遠藤 京子,梶栗 潤子,大矢 進
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] microRNAを介した内向き整流性K+チャネルKir2.1発現亢進は骨芽細胞分化を促進する2022

    • 著者名/発表者名
      鬼頭宏彰、遠藤京子、梶栗潤子、大矢進
    • 学会等名
      第95回薬理学会年会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] Down-regulation of Ca2+-activated K+ channel KCa3.1 in mouse preosteoblast cells treated with vitamin D receptor agonists2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Kito, Kyoko Endo, Junko Kajikuri, Susumu Ohya
    • 学会等名
      Experimental Biology 2021 (EB2021)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] microRNAを介した内向き整流性カリウムチャネルKir2.1発現亢進による骨芽細胞分化機構制御2021

    • 著者名/発表者名
      鬼頭 宏彰,遠藤 京子,梶栗 潤子,大矢 進
    • 学会等名
      第139回日本薬理学会近畿部会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [備考] 名古屋市立大学大学院医学研究科薬理学分野

    • URL

      http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/pharma.dir/index.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書 2021 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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