研究課題/領域番号 |
21K06611
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 邦明 北海道大学, 歯学研究院, 名誉教授 (40133748)
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研究分担者 |
有澤 光弘 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (40312962)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | aplysiallene / minimiflorin / Na,K-ATPase / H,K-ATPase / サブタイプ選択的阻害作用 / Neuro-2a細胞 / HEK細胞 / Ca-ATPase / 阻害薬 / laurenidificin / ouabain / digitalis |
研究開始時の研究の概要 |
Na,K-ATPaseという酵素は高血圧や腫瘍など多様な疾患に関与している。疾患の治療薬としてNa,K-ATPase活性を抑える薬物が必要であるが、現在は有効で安全性の高い薬物が乏しい。 Na,K-ATPaseには臓器によって異なるタイプが存在し、薬物に対する反応も異なることから、薬物治療の有効性と安全性を高めるためには、個々のタイプに選択的に作用する薬物の開発が必要である。 海藻由来のaplysialleneは個々のタイプに選択的なNa,K-ATPase活性抑制作用を示す可能性がある。そこで、種々のaplysiallene誘導体を合成して薬理作用を明らかにし、新規の薬物を開発するのが本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
研究分担者が合成した(+)-laurenidificin、(-)-aplysiallene、(±)-aplysiallene、ブロモジエン部分の幾何異性体である(-)-及び(±)-bromodiene isomerを使用して、研究代表者は、これらの物質の脳Na,K-ATPaseに対する作用を解析した。これらの結果を論文として、近く公表予定である。 H,K-ATPase阻害作用のある物質は、Na,K-ATPase活性も抑制する可能性が高く、Na,K-ATPase活性の調節に使用できる可能性がある。そこで、研究分担者は、H,K-ATPase阻害作用のある(±)-minimiflorinと、その前駆体の合成を行った。ケトンとアルデヒドから生成した物質のoxa-Michel付加反応により (±)-minimiflorin前駆体1を得た後、プレニル化した(±)-minimiflorin前駆体2を経てラセミ体である(±)-minimiflorinの全合成を達成した。しかし、合成した(±)-minimiflorinと単離論文の13CNMRのスペクトルが一部合致しなかった。そこで合成経路を変更して、再度(±)-minimiflorinを合成したところ、この13CNMRのスペクトルは先に合成した(±)-minimiflorinと一致した。さらに、合成した(±)-minimiflorinのX線構造解析を行って単離論文の13CNMRを訂正することができた。 研究代表者は、(±)-minimiflorin及び2種の前駆体のラット脳Na,K-ATPaseに対する作用を解析した。その結果、 (±)-minimiflorinと前駆体2はIC50値が約35 μMで活性を抑制したが、前駆体1はほとんど抑制しなかった。これらの結果と、(±)-minimiflorin類の合成方法を日本薬学会年会において報告した。 研究代表者は、(±)-minimiflorin類のH,K-ATPaseに対する作用を検討するために、胃粘膜を材料としてH,K-ATPaseの精製の準備を進めた。また、サブタイプの異なるNa,K-ATPaseに対するminimiflorin類の作用を検討するために、培養したNeuro-2a細胞とHEK293細胞のNa,K-ATPaseの精製を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年の研究期間のうち1年目及び2年目はほぼ全期間新型コロナウイルス感染による研究活動の自粛の影響を受けたが、3年目はほぼ通常の研究活動を行うことが出来た。そのため、1、2年目の遅れをかなり回復することが出来たが、「概ね順調に進展している」と評価するまでには至らなかった。そのため、研究期間の延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
1、2年目の研究活動の遅れはコロナウイルス感染の影響によるものであり、申請した研究計画に沿って今後の研究を行う。 すでに(-)-aplysialleneと (+)-laurenidificin誘導体によって得られた結果を論文として公表する。また、研究分担者は、初期の計画通りに、 (-)-aplysialleneと (+)-laurenidificin誘導体の合成過程を改善して大量合成法の開発を試みる。 研究計画の段階では、有望なNa,K-ATPase阻害薬として(-)-aplysialleneと (+)-laurenidificin誘導体の合成のみを計画していたが、研究分担者は新規化合物として(-)-minimiflorin、(±)-minimiflorin及び(±)-minimiflorin前駆体の合成を行った。そこで、さらにminimiflorin類縁体の化学合成を進める。研究代表者は、minimiflorin類縁体のNa,K-ATPase、H,K-ATPase及びCa-ATPase活性に対する作用を解析して、構造活性相関を明らかにする。 また、研究代表者は培養を行っているNeuro-2a細胞とHEK293細胞を使用して、研究分担者による合成物質の培養細胞に対する作用と細胞毒性を解析する。
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