研究課題/領域番号 |
21K06615
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大橋 一晶 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (70344679)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 薬用植物 / セリ科 / 学名 / Angelica / センキュウ / 薬用資源学 / 系統分類 / 育種 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、セリ科の生薬基原植物センキュウについて、分類学的に不明確であるために安定しない学名を安定にすることを試みる。日本薬局方では基原を学名で定めており、明確な系統関係に基づいた学名の決定が非常に重要である。そのため、センキュウについて近縁種も含め分類学的解析を行う。方法は、核DNAを用いた分子系統解析、および果実の形態の解析を行う。センキュウは雑種で結実しないため、倍数化処理により結実する個体を得て、セリ科植物の分類に重要な果実の形態情報を得ることを試みる。系統解析や果実形態を用いた分類により明確な分類学説を確立し、学名の安定化をめざす。
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研究実績の概要 |
今年度は、東京都薬用植物園より生薬基原である藁本Ligusticum sinenseとして得た植物について解析を進めた。その結果、遺伝子配列に基づく解析、および形態的特徴から、この植物はAngelica tianmuensisであると同定できた.A. tianmuensis(中国名:天目当帰)は中国浙江省天目山に生育する危急種とされる.また、中国江西省廬山近郊はA. tianmuensisの新たな分布地であることも明らかにした.また形態的に類似する種についても分類学的な整理を行なった。A. tianmuensisとA. minamitanii,A. reflexa,A. dabashanensisの3種は形態が非常に類似しており、明らかな区別点は果実の合生面の油管数である。A. minamitaniiとA. reflexa,A. dabashanensisは油管が2個に対しA. tianmuensisは2から4個である。また核リボソーム遺伝子であるITS配列も非常に類似する。そこで、これら4種を同一種の変種の関係(1種3変種)にまとめた。すなわち、A. tianmuensisに対し,A. minamitaniiとA. reflexaは同一変種var. minamitaniiとして,A. dabashanensisはvar. dabashanensisとして扱うことが適切であるとした。これらの結果は2024年4月および6月に学術誌に出版予定である。一方、センキュウの結実個体作成については、今年度は猛暑により気象条件が非常に悪く、枯死する個体が続出し、生存個体も生育に障害が大きかったために、残念ながら研究にほとんど進展が見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
センキュウに直接関連した事項の進展は異常気象もあって、今年度は少なかったが、東京都薬用植物園より藁本Ligusticum sinenseとして得た植物について解析が大きく進展した。この植物はLigusticum sinenseではなく、中国でも稀な植物であるAngelica tianmuensisであることが明らかになった。またこの植物は、韓国でキョウカツ(羌活)として用いられるAngelica reflexaと非常に近縁であることを明らかにできた。これらの結果は2報の原著論文としてすでにアクセプトされており、研究課題より派生したテーマについて今年度は大きな進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
センキュウの結実個体作成については、引き続き根茎の薬剤処理を行い倍数体の作成を試みる。薬剤処理の時期などの条件を検討し、処理個体数を増やすことを試みる。また薬用植物、藁本として誤同定されていたAngelica tianmuensisについては、以下に記す解析を進める。Angelica tianmuensisは、韓国でキョウカツ(羌活)として用いられるAngelica reflexaと非常に近縁であることを我々は明らかにしている。この韓国の羌活には長らく(2010年代まで) Ostericum koreanumまたはAngelica koreanaが学名として当てられてきた。しかし植物学的にはOstericum koreanumは、韓国の羌活Angelica reflexaとは異なる植物を指しており、その誤解は、戦前の日本における朝鮮の植物の分類・同定に遡ると考えられる。ところが文献を調べると、Ostericum koreanumは韓国の羌活を指すとする以外に、ヤマゼリ(Ostericum sieboldii)やニオイウド(Ostericum grosseserratum)を指すとしているものもあり、その実体は明確ではない。そこで、戦前に採集されOstericum koreanumと同定された標本について調べることにより、薬用植物Ostericum koreanumの実体を明らかにすることを試みる。
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