研究課題/領域番号 |
21K06621
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
酒井 佑宜 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (70588095)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 漢方薬 / 化学プローブ / 化学反応 / 生薬 |
研究開始時の研究の概要 |
漢方薬は経験的に臨床で用いられ、その薬効は実証されているものの、多くの化合物を含むため、その作用を化合物レベルで明確に説明するには至っていない。漢方薬に生薬が混合される理由として、漢方薬の調製時に異なる生薬由来の化合物間で化学反応が起こっており、このことが漢方薬の薬効を調整していることが考えられた。本研究では、化学反応性を有する生薬成分を母格とする『リアクティビティベースドプローブ』を利用し、漢方薬調製時に起こる化学反応を見出し、漢方薬において生薬を混合する化学的な理由を見出すことを目的とする。
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研究実績の概要 |
前年度の結果を踏まえ、研究推進方策に則って、リアクティビティベースドプローブを用いた解析を行なった。具体的には、前年度見出した麻黄湯中にみられたケイヒアルデヒドと麻黄プローブの反応生成物の構造決定を行った。反応生成物のMS解析から、イミニウムイオン体もしくは脱水縮合体のどちらかである可能性が考えられた。はじめに化学プローブとケイヒアルデヒドを反応させて反応生成物を合成しようと試みたところ、粗生生物の段階では脱水縮合体とみられる化合物が確認できた。ところが、脱水縮合体は極性溶媒に不安定であり、種々の精製条件を検討したものの、容易に分解し、目的の脱水縮合体の単離構造決定が困難であった。そこで、安定な化合物を取得する目的で、脱水縮合体を水素化ホウ素ナトリウムで還元して、脱水縮合体の還元体を得ることとした。還元体である第三級アミンは精製条件に安定で、目的の付加体を単離構造決定することができた。次にリアクティビティベースドプローブを加えた麻黄湯の熱水抽出物を水素化ホウ素ナトリウムで還元し、還元体が得られるか実験を行なった。麻黄湯の構成生薬に化学プローブを加え、水中で1時間加熱還流し、残渣を濾過後、凍結乾燥して熱水抽出物を得た。得られた熱水抽出物をメタノールに懸濁し、直ちに、水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元した。反応の後処理後の粗生成物の ESI-MS スペクトルでは、還元前の生成物から分子量が2大きいピークが観察され、反応生成物が還元されたことが確認された。粗生成物を精製したところ、還元体である第三級アミンが 2.0 mg 得られた。以上から、麻黄湯を調製する条件で化学プローブとケイヒアルデヒドが反応していることを証明することができた。また、化学プローブの合成経路を改善した(3 段階 43%)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年の推進方策通り、リアクティビティーベースドプローブによる解析で検出した化学反応生成物の構造決定を試みた。ところが反応生成物は精製条件に不安定であり、目的物そのもの単離することが困難であった。そこで、容易に分解する反応生成物を還元することで、安定な化合物へ導くことで反応生成物の化学構造を決定できた。さらに麻黄湯中でもこの反応が進行していることを確認できた。一方で、麻黄湯以外から見出した他の反応性生物に関しての構造決定では満足のいく結果が得られていないため、進捗状況は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
リアクティビティーベースドプローブを加えた麻黄湯中で生じている化学反応生成物の化学構造から、実際の麻黄湯中での生成物を推定することができた。この推定化合物を、麻黄湯中から単離構造決定し、麻黄湯中で異なる生薬由来の化合物が化学反応していることを証明する。また、麻黄湯以外の漢方薬から検出されている化学反応生成物の構造決定も進める。
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