研究課題/領域番号 |
21K06623
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
能勢 充彦 名城大学, 薬学部, 教授 (60228327)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 甘草配合漢方処方 / グリチルリチン / グリチルレチン酸 / 血中濃度 / 腸内細菌叢 / βグルクロニダーゼ / オウゴン / バイカリン / 加水分解反応 / 甘草 / 消化管内構造変換 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、検討とする甘草配合漢方処方を日本薬局方収載漢方エキスに求め、現時点(第十七改正第二追補まで)では25種を対象とする。調製した甘草配合漢方エキスについて、臨床での使用頻度の高い順にマウスを用いた血中GA濃度測定を実施し、その血中濃度推移を明らかにする。次いで、各処方の血中GA濃度推移を比較し、違いがあれば、その要因について腸内細菌叢による消化管内構造変換や消化管吸収などから検討し、構成生薬の違いが各処方エキスにおけるGA動態に与える影響を明らかにする。また、それぞれの結果を薬物動態データベースとしてまとめ、各処方の副作用情報と比較することにより、より実践的な医薬品情報とする。
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研究実績の概要 |
初年度において、甘草配合漢方処方10種をマウスに経口投与して血中GA濃度を測定し、薬物動態パラメータのうち、血中濃度曲線下面積(AUC)は甘草配合量やグリチルリチン(GL)としての投与量とよい相関性を示す一方で、最高血中濃度(Cmax)との間には甘草配合量やGL投与量との相関性は認められないという結果を得ていた。本年度は、マウスの盲腸内容物から調製した腸内細菌叢溶液を用いたGL加水分解反応とGAの薬物動態学的パラメータとの関連性を検討した。 雌性BALB/cマウスの盲腸内容物を取り出し、10容量の100mM酢酸緩衝液(pH=5.6)を用いて懸濁液を作製した。この懸濁液を窒素存在下、37℃、60分振とう培養し、20×g、1分間の遠心処理により食餌性残渣を取り除いて腸内細菌叢溶液とした。この腸内細菌叢溶液にGLとして30μgとなるように10種の甘草配合漢方エキスを添加し、37℃で30分間反応させた。1M HCL溶液を添加して反応を停止させ、内部標準として2-methyl anthraquinoneを添加し、酢酸エチル抽出を行い、HPLCサンプルとした。GL標準品(30μg)を用いて同様に測定し、各甘草配合漢方エキスのGL加水分解反応を標準品を基準とした百分率で示した。 その結果、10種の漢方エキスのGL加水分解活性は標準品と比較して6.5%から36.6%を示し、各処方のマウスにおけるCmaxとの相関を検討したところ、r=0.6822(p=0.0298)と良好な相関性を示した。この結果は、甘草配合処方を服用した際に消化管内でのGL加水分解反応がGAのCmaxに強く影響することを示している。そこで、この加水分解反応を他の処方でも検討し、オウゴンの配合がGL加水分解反応を阻害すること、またその主成分であるバイカリンがGLの加水分解反応を非競合的に阻害することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度問題となった納入時期の違いによるマウスの腸内細菌叢の変動について、種々検討したところ、時期よりも生産支所の違いが大きく影響することが明らかとなり、同一生産支所で繁殖飼育するマウスを購入すれば、ある程度安定した結果を得ることができることが確認された。そのため、現在は安定した条件で実験ができるようになり、甘草配合漢方エキスのマウス経口投与時の血中GA濃度測定を進めることができている。 また、血中GA濃度に影響を与える因子として第一に考えていた腸内細菌叢によるGL加水分解活性とCmaxとの間に相関性が認められたことから、甘草配合漢方エキスを33処方にまで拡大して検討することができた。さらに、GL加水分解活性がGL標準品の10%以下のもの10種のうち、9種にオウゴンが配合されていることから、GLと同様に糖部にグルクロン酸をもつバイカリンの影響を検証して、予想通りではないものの、非競合阻害であることを見出した。 以上の結果により、甘草配合漢方処方投与時の血中GA濃度に影響する構成生薬としてオウゴンを、また成分としてバイカリンを確定させることができ、本研究計画は順調に進行していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、甘草配合漢方エキスをマウスに経口投与し、血中GA濃度推移を測定している。本年度の検討により、GAのCmaxに腸内細菌叢による加水分解反応がよい相関性を示したことから、消化管吸収における構成生薬やその成分の影響については検討を行っていない。 今後は、血中GA濃度推移の測定例を増やすとともに、必要であれば、GAの消化管吸収に及ぼす構成生薬の影響も検討していきたい。 また、消化管内におけるGLの加水分解の程度が処方により異なり、血中GA濃度にも影響するということは、その薬理作用の発現にも影響することを示唆している。漢方薬の薬効については、「証」と呼ばれるレスポンダー・ノンレスポンダーの存在が知られており、また薬効発現には腸内細菌叢をはじめとする腸内環境の重要性について言及するような報告があるものの、系統立てて証明したものは少ないと思われる。GLの加水分解に関わる腸内細菌やβグルクロニダーゼの同定も十分ではないことから、それらを明確にする方向へと進めたいと考えている。
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