配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
研究開始時の研究の概要 |
抗結核薬D-サイクロセリン(D-CS)の生産菌から, 新規のアルギニン水酸化酵素DcsAの電子伝達系を同定する。同定した電子伝達系をコードする遺伝子, DcsAをコードするdcsA遺伝子, および, ヒドロキシアルギナーゼをコードするdcsB遺伝子を同時に大腸菌に導入することにより, 大腸菌を宿主としたヒドロキシウレア(HU)の生産システムを構築する。また, 新たに構築したHU生産システム, および, これまでに構築したD-CS生産システムを統合することにより, 大腸菌を宿主としたD-CSの実用レベル大量生産システムを確立する。
|
研究実績の概要 |
本年度は, 昨年度構築した発現系を利用して, フェレドキシン(FDX)およびFDX還元酵素(FDR)を精製し, D-サイクロセリン(D-CS)生合成に関与する新規アルギニン水酸化酵素DcsAの電子伝達系を明らかにするとともに, 抗癌剤ヒドロキシウレア(HU)の大腸菌を宿主とした生産系を構築することを目標として研究を実施した。 まず, 昨年度構築した発現系を利用して, 各FDX(7種)およびFDR(2種)の発現性をSDS-PAGEにより調査した。その結果, 3種のFDX(Sla_0278, Sla_2106, Sla_5080), および, 2種のFDR(Sla_0456, Sla_5644)が可溶性タンパク質として発現することが明らかになった。そこで, クロマトグラフィーの手法を用いることにより, これらタンパク質の精製を行った。その結果, 全てについて, ほぼ単一タンパク質として精製することに成功した。続いて, 精製したタンパク質について, 吸収スペクトル解析(260~600 nm)を実施した。その結果, 3種のFDXのうち, Sla_0278およびSla_5080については, 鉄/硫黄タンパク質に特徴的な吸収スペクトルが観測されたが, Sla_2106については観測されなかった。一方, 2種のFDRについては, フラビンタンパク質に特徴的な吸収スペクトルは観測されなかった。 以上本年度においては, FDXおよびFDRをほぼ単一タンパク質として取得したが, FDRについては活性型と考えられるタンパク質を取得できなかった。そのため, 当初の研究計画では目標を達成することが困難になったので, 次年度は方針を変更して研究を継続する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画においては, 本年度終了時までに, D-CS生合成に関与するアルギニン水酸化酵素DcsAの電子伝達系を同定し, 同定したタンパク質をコードする遺伝子を用いて, 大腸菌を宿主とした抗癌剤HUの生産系の構築を完了する予定であった。しかしながら, 電子伝達系を構成するタンパク質(FDXおよびFDR)の精製に手間取ったため, 「研究実績の概要」で記載した通り, 本年度においては, これらタンパク質をほぼ単一タンパク質として取得するまでにとどまった。しかも, FDRについては活性型のタンパク質ではないと考えられ, 当初の研究計画では目標を達成することが困難になった。以上のことから, 明らかに「遅れている」と考えられる。次年度は方針を変更し, 別の電子伝達系を用いて「DcsAの活性測定実験」および「大腸菌を宿主としたHU生産系の構築実験」を速やかに進めたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で記載した通り, 研究の進捗は遅れており, 当初の研究計画では目標を達成することが困難になった。したがって, 次年度は方針を変更して研究を実施する。具体的には, 微生物の電子伝達系として汎用されているPseudomonas putida由来のputidaredoxin(PDX)およびPDX reductase(PDR)を大腸菌の系を用いて発現させ, 単一タンパク質として取得した後, それらがDcsAの電子伝達系として機能するか検討する。続いて, それらタンパク質をコードする遺伝子を利用し, 大腸菌を宿主としたHU生産系の構築を試みる。PDXおよびPDRがDcsAの電子伝達系として機能しない場合には, これまでに報告がなされている放線菌由来の電子伝達系を検討する。進捗が遅れていることから, 研究の大幅なスピードアップが必要であると考えている。
|