研究課題/領域番号 |
21K06633
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
横須賀 章人 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20318190)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 分子シャペロン / 熱ショックタンパク質 / 細胞毒性 / がん分子標的 / アポトーシス / 細胞周期 / 植物由来化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
熱ショックタンパク質(HSP: heat shock protein)に代表される分子シャペロンは、がん細胞の増殖を調節する複数の細胞内シグナル分子の機能調節に関与している。本研究では、植物由来化合物に着目し、分子シャペロンを制御して細胞周期特異的に細胞死を誘導する新規がん分子標的治療薬シーズを探索する。分子シャペロンの制御を作用機序とする抗がん剤は現在までに開発されておらず、本研究により発見された化合物は、抗がん剤に耐性を示したがん細胞や、薬物治療に抵抗性を示すがん細胞に対しても効果を有することが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、構造の多様性に富む植物由来化合物から、新規がん分子標的治療薬シーズを探索することを目的に、がん細胞の細胞周期に特異的に作用してアポトーシスを誘導する化合物を見出し、それら化合物の分子シャペロンの制御との関係を明らかにしていく。 分子シャペロンは、細胞中のシグナル伝達に関与する種々のタンパク分子のフォールディングを助け、細胞の生存に関与する一群のタンパク質である。熱ショックタンパク質として知られるHsp90 は、分子シャペロンの一つであり、その転写因子である HSF1 とともにがん細胞中に高濃度で発現している。Hsp90 は、Src、EGFR、Cdkなどの主に細胞の増殖・生存に関与するシグナル伝達分子と複合体を形成し、これら分子のフォールディングを助け、がん細胞の増殖因子として作用している。 本年度は、植物由来化合物により分子シャペロンが制御された際に起こる細胞内シグナル伝達分子(HSF1、Src)の発現を評価するための実験条件の検討を行い、フローサイトメトリー法によりそれら分子を定量的に解析できることを確認した。また、キンポウゲ科Helleborus nigerから単離された新規ブファジエノリド配糖体HNY-1で処理したSBC-3ヒト肺小細胞がん細胞の細胞生存率の経時変化と細胞周期を詳細に解析したところ、HNY-1で72時間処理した際にミトコンドリア経路を介したアポトーシスが誘導され、24時間処理した際には細胞増殖が抑制されることを確認した。さらに、キンポウゲ科Helleborus argutifoliusからbufadienolide誘導体やステロイド配糖体を、リュウゼツラン科Yucca gloriosaからステロイド配糖体を単離し、それら化合物のうち数種の化合物が、SBC-3細胞に対して既存の抗がん剤であるシスプラチンと同程度の細胞毒性を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、植物由来化合物により分子シャペロンが制御された際に起こる細胞内シグナル伝達分子(HSF1、Src)の発現を評価するための実験条件を検討した。当初はウェスタンブロッティング法による解析を予定していたが、実験の迅速性と精度の観点からフローサイトメトリー法による解析手法を検討した。すなわち、抗がん剤や植物由来化合物を接触させた腫瘍細胞に対して、それら分子の一次抗体で処理した後、二次抗体で免疫染色しフローサイトメーターを用いて発現量を定量的に解析できることを確認した。 また、植物を由来とする腫瘍細胞毒性物質の探索を継続して行った。キンポウゲ科Helleborus niger、キンポウゲ科Helleborus argutifolius、キョウチクトウ科テイカカズラTrachelospermum asiaticum、リュウゼツラン科Yucca gloriosaなどを研究材料として用い、SBC-3細胞に対する細胞毒性を指標に腫瘍細胞毒性物質の探索を行った。単離された化合物の細胞毒性を評価したところ、数種の化合物に既存の抗がん剤であるシスプラチンと同程度以上の活性が認められた。腫瘍細胞毒性物質の探索は今年度も順調に進んでいる。昨年度H. nigerから単離されたHNY-1でSBC-3細胞を24時間処理した際に、細胞増殖が抑制されることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、植物由来の腫瘍細胞毒性物質の探索を引き続き行うとともに、HNY-1でSBC-3細胞を24時間処理した際の細胞増殖抑制メカニズムを、グルコースの細胞内取込とグルコース輸送体の発現量の確認、オートファジー誘導の解析などにより解析する。さらに、HNY-1やキンポウゲ科Helleborus argutifoliusから単離された化合物の分子シャペロンへの作用を、Hsp90、HSF1、Srcなどの発現量の変化をフローサイトメトリー法で確認することにより解析する。
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