研究課題/領域番号 |
21K06639
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47050:環境および天然医薬資源学関連
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
山室 匡史 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (80646555)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 大麻 / DNAメチル化 / バイオマーカー / WGBS解析 |
研究開始時の研究の概要 |
麻繊維を採取するための大麻草の「成熟した茎」や、調味料等に使用される大麻「種子」は、向精神成分を殆ど含まないことから大麻取締法の規制対象外となっている。違法部位である「花穂」や「葉」とDNA配列が同一であるにもかかわらず、何故、成分量が大きく異なるのか、その要因については全く明らかになっていない。 本研究では、DNAの発現を制御する「DNAメチル化」に注目し、大麻草の部位ごとの差異を特徴づける「組織特異的DNAメチル化領域」を探索することで、部位の違いを検出できる新しいバイオマーカーの開発を行う。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、前年度までに発見した組織特異的DNAメチル化領域の情報を活用し、メチル化特異的PCRによって試料の由来部位を識別するバイオマーカーの構築を試みた。前年度発見した組織特異的メチル化サイト709箇所(花穂:4、葉:10、根:6、茎:546、種子:143)の中から、周辺の配列情報をもとにさらなる絞り込みを行い、1番染色体上に発見された「種子特異的脱メチル化サイト」(花穂、葉、根、茎におけるメチル化率:100 %、種子におけるメチル化率:0 %の領域)について、バイサルファイト処理後の予想配列に基づき、「メチル化DNA検出プライマー(mプライマー)」と「非メチル化DNA検出プライマー(uプライマー)」をそれぞれ設計した。バイサルファイト処理後の大麻草の各部位(花穂、葉、根、茎、種子)DNA 0.1 ngについて、それぞれのプライマーによるPCRを行ったところ、mプライマーによるPCRでは花穂、葉(薬物種および繊維種大麻)、根、茎由来のDNAで特異的なバンドが検出されたのに対し、大麻種子由来のDNAでのみ、バンドが認められなかった。一方、uプライマーによるPCRでは、mプライマーとは逆に、大麻種子由来のDNAでのみ、特異的なバンドが検出された。以上の結果より、大麻種子特異的な脱メチル化を正しく検出するバイオマーカーの確立に成功した。 また、オイル状の大麻加工品からのDNA抽出手法の構築に関連して、オリーブオイル用のDNA抽出キット及び糞便用のDNA抽出キットを用いることで、オイル状の加工品の効率的なクリーンアップ操作が可能であり、植物由来と考えられるわずかな沈殿物からDNAが回収できる例が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マーカー候補となり得る709領域について絞り込みを行い、10種類の領域に対してメチル化特異的PCR用プライマーを設計したが、予想に反して標的外の部位由来のDNAで増幅が生じる例や、全く増幅が得られない例、再現性がとれない例などにより、多くが不首尾に終わる結果となった。一部のプライマーに関しては、プライマーの再設計を行って反応条件の最適化を行うなどすることで結果が改善することを見出し、「種子特異的脱メチル化領域検出マーカー」については完成させることができたものの、それ以外の部位、特に、本研究の大目的である「違法部位」の識別に特化したマーカーの構築には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、「メチル化特異的PCR法」による部位識別マーカーの構築を試みる。令和5年度に不首尾に終わったプライマーについて、人為的にミスマッチを導入するなど識別力を高めるための改良を行うとともに、組織特異的メチル化領域の再選定を行ってターゲットを増やし、最終的に複数の部位識別用マーカーの構築を目指す。なお、「メチル化特異的PCR法」による複数のマーカー構築が困難であれば、PCR増幅産物の解離温度の違いを検出する「高分解能メルト分析」やナノポアシーケンサーによる「高速シーケンシング」など、他の検出手法を主軸とすることも検討する。 また、構築が完了したバイオマーカーについては、模擬試料及び実際の押収大麻試料に対する実用性評価試験を逐次行っていくほか、ターゲットの近傍に機能を有する遺伝子領域が存在している場合には、mRNA発現量の解析なども並行して行う予定である。
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