研究課題/領域番号 |
21K06668
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
湯元 良子 広島大学, 医系科学研究科(薬), 特任准教授 (70379915)
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研究分担者 |
高野 幹久 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (20211336)
川見 昌史 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20725775)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 肺胞上皮細胞 / PEPT2 / 自然免疫応答 / 上皮間葉転換(EMT) / ステロイドホルモン / Na/H exchanger (NHE) / 上皮間葉転換(EMT) |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、肺に侵入してきた細菌による自然免疫応答の惹起に肺胞に発現しているペプチドトランスポーターPEPT2が深く関わっていることや、抗がん剤であるブレオマイシンやメトトレキサートなどの重篤な副作用である肺線維症の発症に上皮間葉転換(EMT)が関与することを報告してきた。 本研究では、肺におけるPEPT2の発現・機能およびPEPT2介在性自然免疫応答に対する肺障害性薬物の影響を解析し、それらの影響がEMT誘発と関係するのかを解明する。さらに肺は経肺投与薬物によって直接暴露される臓器であることから、PEPT2の発現・機能およびPEPT2介在性自然免疫応答に対する経肺投与薬物の影響について解析する。
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研究実績の概要 |
今年度は吸入ステロイド薬によるPEPT2機能の抑制メカニズムを解明するため、代表的なステロイドホルモンであるデキサメタゾン (DEX) を用いて、PEPT2の駆動力であるプロトンの電気化学的勾配の維持を担っているSodium/Hydrogen Exchanger (NHE) の発現・機能に対するDEXの影響を検討した結果、control細胞において、NHEの駆動力である細胞外Na+の非存在下では、ベル型のpH依存的な取り込みはほとんど消失した。DEXで96時間処置したH441細胞においては、Na+の有無に関わらずベル型のpH依存性はほぼ消失した。さらに、取り込み時にNHE阻害剤であるEIPAを共存させた場合、control細胞でのβ-Ala-Lys-AMCA取り込みはEIPAの共存によって著しく阻害されたが、DEX 処置細胞では阻害効果の低下が認められた。以上の結果より、H441細胞における吸入ステロイド薬によるPEPT2機能の阻害にNHEが関与する可能性が示唆された。 そこで、NHE活性に及ぼすDEXの影響について検討したところ、DEX処置により細胞内pH回復速度の有意な低下が認められた。また、細胞外Na+非存在下およびNHE阻害剤EIPA共存下では細胞内pHの回復は遅く、DEXの効果も消失した。従って、H441細胞においてDEXによってNHE活性が抑制されている可能性が示唆された。 次に、肺胞上皮Ⅱ型細胞において発現が報告されているNHE1およびNHE8の2つのアイソフォームのタンパク質発現に対するDEXの影響を検討したところ、DEX処置によるNHE1およびNHE8タンパク質発現の有意な減少が認められた。以上の結果から、H441細胞においてDEXはNHE1およびNHE8の発現抑制を介してPEPT2機能を阻害する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吸入ステロイド薬はNHE1およびNHE8の発現を抑制することによってPEPT2の駆動力を減少させ、PEPT2機能を阻害する可能性が示唆され、H441細胞における吸入ステロイド薬によるPEPT2機能阻害機構の一部が解明されたため。
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今後の研究の推進方策 |
吸入ステロイド薬によるPEPT2機能の抑制メカニズムにNHE1およびNHE8の発現抑制の関与が示唆されたが、NHEには1から9までのアイソフォームが報告されており、他のアイソフォームの関与についても検討する。 また、ラットおよびマウスにBLMやMTXを気管内投与あるいは腹腔内投与することによって、肺線維症モデル動物を作出し、コントロール動物および肺線維症モデル動物におけるiE-DAP誘発性自然免疫応答を比較検討する予定である。
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