研究課題/領域番号 |
21K06703
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
松本 太一 福岡大学, 薬学部, 講師 (80570803)
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研究分担者 |
松本 純一 福岡大学, 薬学部, 助教 (10550064)
寺田 一樹 姫路獨協大学, 薬学部, 准教授 (00724197)
青木 光希子 福岡大学, 医学部, 講師 (80469379)
自見 至郎 福岡大学, 公私立大学の部局等, 研究特任教授 (30226360)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 薬剤性肺障害 / ボルテゾミブ / 血管透過性 / 接着因子 / 肺障害 |
研究開始時の研究の概要 |
ボルテゾミブ(BTZ)は致死的な肺障害を誘発することがあるが、その対処法や治療指針は未だ定まっておらず、BTZ誘発性肺障害の発症機序の解明が急務である。我々は最近、BTZは血管内皮細胞に直接作用して血管透過性を亢進することを見出した。そこで「BTZによる血管透過性亢進が起点となり、肺胞間質への血漿タンパク質の漏出や炎症細胞の浸潤が生じ、炎症を惹起した結果、肺障害が発現するのではないか?」と着想した。本研究では、BTZ誘発性肺障害モデルマウスを用いて、肺胞毛細血管の透過性亢進を契機とした炎症発現メカニズムを明らかにすることで、BTZ誘発性肺障害の治療・予防・予測を可能にする情報基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
[1]ボルテゾミブ(BTZ)が肺の形態に及ぼす影響 前年度、BTZの投与(600 mg/kg, 週3回×4週間、皮下投与)はマウスの肺胞径の拡張を引き起こすことを明らかにした。本年度は、BTZ投与開始から経時的に(1, 2, 4週目)肺胞径を観察した。BTZ投与1週目では、肺胞組織の肥厚を伴う肺胞径の収縮が認められた。BTZ投与2週目においては、BTZ投与群とvehicle群の間に肺胞径の違いはなかった。BTZ投与4週目では、前年度に観察したように、肺胞組織が薄くなり、肺胞径の拡張が認められた。このことは、BTZ投与初期には肺胞に炎症が生じ、間質性肺炎のような病態を呈し、BTZ投与から時間が経過すると、BTZによる肺胞組織への細胞毒性が惹起され、肺気腫のような肺障害を呈することを示唆している。 [2]HPMECが形成するバリア機能に対するBTZの作用 前年度、ヒト肺微小血管内皮細胞(HPMEC)を用いた肺血管内皮モデルを用いて、BTZは細胞障害性を示さない濃度で、肺血管の透過性を亢進することを見出した。そこで本年度はその機序を検討した。血管内皮細胞の細胞間接着には密着結合を形成するOccludinやClaudin-5、ZO-1、接着結合を形成するVE-cadherin、β-cateninが関与している。これらの細胞接着因子の発現に対するBTZの作用を検討した。その結果、BTZはOccludin、Claudin-5ならびにVE-cadherinの発現を抑制していた。また、これらの接着因子のmRNA発現もBTZにより減少していたことから、接着因子発現抑制作用は遺伝子発現制御によるものであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、BTZによる肺障害の発症機序はIL-6やTNF-、IFN-などの炎症性サイトカインの血中濃度が上昇や、肺胞上皮の傷害などが提唱されているが、その因果関係は不明である。本年度、本研究チームでは、BTZは(1)肺の形態に対して経時的に異なる変化ともたらすこと、(2)細胞間接着の発現を抑制することを観察した。このことは、BTZによる血管透過性亢進が起点とならり、血漿タンパク質や炎症細胞の肺胞組織への漏出・浸潤を引き起こし、BTZ投与初期は間質性肺炎様病変を、その後BTZの細胞障害性が肺気腫様病変を引き起こすことを想像させ、これまでには報告されていない、連続的なBTZ肺障害発症機序の輪郭が見え始めている。
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今後の研究の推進方策 |
ここ2年の研究から、本研究の重要なポイントは「BTZがいかにして細胞間接着因子の発現を抑制するのか」という点である。BTZは接着因子のmRNA発現を抑制していることから、BTZが引き起こすシグナル伝達経路への影響が関与するものと思われる。BTZはIkBの分解抑制を介してNF-kBの転写活性を抑制する働きがある。in silico解析により今回着目したOccludin、Claudin-5、ZO-1、VE-cadherinならびにβ-cateninのいずれの遺伝子の5’-flanking regionにはNF-kB結合領域があることを確認している。そのため、NF-kB抑制作用が接着因子発現抑制に寄与している可能性がある。一方で、BTZは酸化ストレスを介したp38 MAPKの活性化作用が報告されており、その作用が接着因子発現抑制に関連している可能性もある。令和5年度はBTZが細胞間接着因子の発現を抑制するメカニズムの解明を中心に研究に取り組みたい。
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