研究課題/領域番号 |
21K06728
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
向後 晶子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (20340242)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 心臓 / 発生 / 神経堤 / 二次心臓領域 / マウス / DLG1 / ノックアウトマウス / 心奇形 / 流出路 / 細胞系譜 / 心臓発生 |
研究開始時の研究の概要 |
先天性心疾患の約90%が心室中隔欠損と心臓流出路の異常である。その発症には二次心臓領域あるいは心臓神経堤という2つの細胞系譜の発生異常に起因することが知られている。細胞極性因子であるDLG1の欠損マウスは、心室中隔欠損と流出路の異常を発症するが、2つの細胞系譜発生におけるDLG1の必要性は不明であった。本研究では2つの細胞系譜について組織特異的Dlg1 KO/標識マウスを作成してその必要性を明らかにする。また、組織特異的DLG1欠損が各系譜の細胞/組織の微細構造にどのように影響し大きな形態異常に至るのか、その過程を光学的な標識観察と走査電子顕微鏡観察により解明する。
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研究実績の概要 |
Dlg1遺伝子欠損(KO)マウスでは、心室中隔欠損と流出路分離不全など重篤な心臓発生異常が生じる(Iizuka-Kogo et al. 2015)。これらは、ヒトの心奇形の中でも発症率が高く、その発症機構の解明が期待されている。心臓流出路異常は、神経堤(CNC)と二次心臓領域(SHF)という2つの系譜両系譜のうちいずれかの発生異常に起因する。そこでどちらの細胞系譜のDlg1発現が心臓流出路分離に必要なのかを調べるために、2022年度までにWnt1-Cre, Mef2c-AHF-CreトランスジーンとDlg1 floxノックインマウス、R26-TLRマウスの交配により、神経堤特異的Dlg1 KOマウス、二次心臓領域特異的Dlg1 KOマウス、神経堤および二次心臓領域Dlg1 KOマウスを作成した。またCREが作用した神経堤細胞あるいは二次心臓領域細胞を赤色蛍光で標識した。2023年度は、これらの系譜特異的Dlg1 KOマウス心臓発生異常の出現率を比較した。意外なことにどちらか一方の系譜でDlg1遺伝子をKOしても流出路の分離不全は出現せず、両方の系譜でKOした時のみ、全身Dlg1欠損マウスで見られる流出路分離不全が再現された。この現象は、片側系譜でDLG1が欠損して細胞機能に何らかの支障が出ても、他方により相補されるため重篤な異常は生じないのに対し、両系譜のDLG1が欠損すると相補作用が働かず発生に支障をきたし流出路の不分離が生じた、と考えると辻褄が合うが、互いに運命の異なる細胞系譜間でひとつの蛋白質の機能が見かけ上互いに補完される例はほとんど知られていない。今後はその機構解明が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年間で設定した課題期間のうち、最初の2年で目的の遺伝子改変マウスを確立し、3年目にその表現型解析に着手するという計画であった。2023年は計画通り表現型解析を行い、予想を上回る興味深い結果を得ることができたため、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
系譜間相補作用の有無を明らかにし、その実体を解明するためには、片側系譜でのDlg1欠損では起こらず、両系譜でのDlg1欠損時にのみ生じる異常が何なのかを明らかにし、それがそれぞれの系譜のDLG1機能とどのように関係しているのかを知ることが必要である。 そのメカニズムを考えるうえで、Dlg1 KOマウスで二次心臓領域由来細胞と神経堤由来細胞が流出路組織内でホモフィリックな集団を形成せず混在が見られることは興味深い。流出路分離不全マウスではしばしば同様の細胞分布異常が見られることから、両細胞系譜が混在せずホモフィリックな凝集を形成することが流出路分離において重要であると考えられている。異種の細胞間の棲み分け機構を担う分子の細胞内局在にDLG1が寄与していれば、両系譜でのDLG1同時欠損時のみ細胞分布に異常が生じる現象を説明できる可能性がある。そこで最終年度となる2024年度は、両系譜間の補完的な相互関係のメカニズムの解明を目指し、DLG1が、細胞の反発や凝集に関わる膜蛋白質の細胞内局在に寄与する可能性を検証する。
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