研究課題/領域番号 |
21K06743
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
原田 智紀 日本大学, 医学部, 准教授 (00424721)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 骨髄 / ストローマ細胞 / 老化促進モデルマウス / 加齢 / 造血微小環境 / マクロファージ / 赤血球造血 / 老化促進マウス / 赤血球 / 無効造血 |
研究開始時の研究の概要 |
赤血球の産生亢進時にはエリスロポエチンが機能して、造血幹細胞から赤血球への増殖、分化が誘導される。これを「正」の制御とすると、同時に「負」の制御となる赤血球を減少させる機構も存在する。例えば、低酸素環境などの「正」の制御が過多な状況では、赤血球が極度に多くなり過ぎないように排除する「負」の制御、いわゆる無効造血が働くが、その機序は不明である。造血制御はストローマ細胞と称される細胞を中心に行われている。本研究ではストローマ細胞に機能異常を有するモデル動物を用いて、「負」の造血制御機構を明らかとし、貧血、多血症、白血病など造血器疾患に対する新規治療法の方向性を見出すことを目的とする。
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研究実績の概要 |
造血は、分化・増殖可能な造血幹細胞とそれを取り巻く造血微小環境により制御されている。造血微小環境においては、ストローマ細胞と称される間葉系細胞を中心に造血制御が行われ、分化・増殖を促進する、いわば「正」の方向だけでなく、分化・増殖を敢えて抑制する、「負」の方向に働くこともある。本研究はこの「負」の造血制御機構の解明を目的としている。研究初年度となる令和3年度はストローマ細胞に機能障害を有することが加齢に伴い顕在化する老化促進モデルマウス(senescence-accelerated mice:SAM)の骨髄における造血制御機構について解析を行った。炎症性物質であるリポポリサッカライド(Lipopolysaccharide:LPS)を投与すると、SAMでは若齢であっても骨髄の造血機能が障害され、加齢SAMではより強く造血機能障害を受けることが明らかとなった。さらに骨髄ストローマ細胞の一種であるマクロファージの亜群解析では炎症促進的な亜群が経日的に増加し、若齢マウスにおいて炎症抑制的な亜群が後に増えて定常状態へと回復していったことと対照的な結果が得られた。令和4年度と5年度には、マクロファージを一時的に枯渇させるクロドロン酸の投与を行ったところ、投与7日目に若齢SAMにおいて高度の貧血を呈し、骨髄の赤血球前駆細胞数も減少したままであったが、老化促進兆候を示さないコントロールマウスでは貧血にならず、赤血球前駆細胞数の現象も投与後1日目に認めたのみであった。マクロファージの解析では、投与1日目に減少し、SAMでは炎症促進的な亜群の割合が増加したが、コントロールマウスでは割合の変動を認めなかった。骨髄マクロファージの赤血球造血に対する支持機能の役割が大きいことに加えて、マクロファージの亜群の存在様式も赤血球造血に大きな影響を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
炎症による「負」の造血制御とストローマ細胞との関連性が見い出されたが、低酸素飼育装置および動物用血球測定器の故障により研究の進捗が遅れ、令和6年度まで補助事業期間を延長していただいた。令和3年度はin vivoにおけるストローマ細胞による造血制御機構の解析を老化促進モデルマウス(senescence-accelerated mice:SAM)を用いて行った。特に種々の細胞から成るストローマ細胞の1種である骨髄マクロファージに焦点を当て、その亜群の分布様式の解析を行った。令和4年度と5年度には若齢SAMにおける潜在的炎症とマクロファージとの関係を調査するために、生体内のマクロファージを一時的に枯渇させるクロドロン酸を投与し、マクロファージによる造血支持機能の解析を行っていたが、動物用血球測定器の故障により、一時研究を進めることができなかった。同測定器は各種細胞数を計測するために用いており、これまでと同様に実験を行うために修理が必要であった。また、低酸素飼育による、赤血球造血における「負」の造血制御となる無効造血の顕在化を目指し、SAMを用いた実験を開始していたが、低酸素飼育装置も故障しており、思った結果が得られない時期があった。現在、両機器共に正常に稼働しており、今後の研究の進捗への影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度はin vivoおよびin vitroでの造血制御におけるストローマ細胞の役割、特にマクロファージおよびその亜群による造血制御機構の詳細を検討する。若齢時点において骨髄造血支持機能が障害されている老化促進モデルマウス(senescence-accelerated mice:SAM)を用いて、令和3年度から5年度に引き続いて骨髄マクロファージの有するストローマ細胞機能の解析を行う。また、クロドロン酸投与時の赤血球造血抑制状態および低酸素飼育時の赤血球造血亢進状態、さらに長期低酸素飼育時の多血症維持期の無効造血抑制状態の解析も進め、赤血球造血における「負」の造血制御機構を解析する。若齢SAMにおいてもストローマ細胞が老化傾向を示したことから、加齢SAMにおける過剰な炎症反応が引き起こされる要因は若齢時にすでに潜在的に存在すると考えられ、その要因としての微小炎症の存在についても解析を進めていく。なお令和3年度から5年度研究により基礎的実験成果は得られており、令和6年度の実験に向けて順調に研究は進行している。
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