研究課題/領域番号 |
21K06749
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
柴田 俊一 北海道医療大学, 歯学部, 客員教授 (80187400)
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研究分担者 |
武智 正樹 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10455355)
入江 一元 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70223352)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 一次顎関節 / 二次軟骨 / 細胞外基質 / 関節半月 / 靭帯 / ニワトリ / 方形骨 / 関節骨 / 鱗状骨 / 翼状骨 / 滑膜 / 二次顎関節 / chick / mouse |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトをはじめとする哺乳類の顎関節は系統発生学的には後から追加された二次顎関節であり、爬虫類以下の動物の一次顎関節は哺乳類では聴覚を発達させる必然性から平衡聴覚器であるツチ骨-キヌタ骨関節に転用されている。本研究では一次顎関節である chick 顎関節の構造・形成過程をマウスの二次顎関節と比較することにより、二次顎関節が新たに追加されるという生物学上の重要問題解決の一端を明らかにする計画となっている。
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研究実績の概要 |
本年度はまず投稿していた Chick 頭部二次軟骨の細胞外基質の免疫組織化学による論文が出版された。その論文に引き続き一次、二次軟骨の細胞外基質成分であるバーシカン、アグリカン、タイプI, II, Xコラーゲン、IBSP、SPP1の遺伝子発現を in situ hybridization 法で、またアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を酵素組織化学で検索した。その結果一次軟骨である方形骨軟骨は哺乳類の長骨と同様な細胞外基質の遺伝子発現変化とALP活性を示した。上角骨、鱗状骨の二次軟骨はALP陽性の原基から生じ、各遺伝子を同時に発現すること、すなわち肥大軟骨細胞に急速に分化することが明らかになった。ただし翼状骨前方の二次軟骨はこれらのいずれとも異なる発現様式を示し、哺乳類の軟骨にはみられない独特な分化過程を示すことが明らかとなった。以上の結果は学会発表を行った後論文にまとめ現在投稿中となっている。 また一次顎関節である方形骨-関節骨関節の機能に応じた構造上の特徴を検索するため、成獣ニワトリの骨格標本の作成と肉眼解剖学的検索を行い組織学的検索と合わせて解析した。その結果方形骨-関節骨関節では方形骨が関節頭、関節骨が関節窩となっていた。また関節前方部の頬骨から起き後下方に走り、両骨の間を通過した後急角度で内側に屈曲し内側突起に付着する靭帯が認められた(頬下顎靭帯)。また関節の外側および後方には関節半月が存在し半月は頬下顎靱帯と密に接合していた。また組織学的観察から半月には軟骨組織が存在することが判明した。以上のことからニワトリ顎関節はかなり複雑な運動を示し、靭帯および半月が関節を適合させるとともに外方、後方への脱臼を防ぐように働いていると推測され、関節の機能に応じた構造上の特徴を有していると考えられた。以上の観察結果は学会発表を行い、現在論文作成中となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず本年度はこの研究による最初の論文を J Oral Biosciences 誌 (IF-2.4)に発表することができた。それに続く一次軟骨と二次軟骨の細胞外基質の遺伝子発現に関する in situ hybridization 法による検索ならびにALP活性の検索を基調にした研究も順調に進み学会発表を経て現在論文投稿中で返事待ちの状態となっている。 また、北海道医療大学のスタッフの研究参画を契機に、一次顎関節であるニワトリの方形骨ー関節骨軟骨と二次顎関節であるラット顎関節の形態を直接比較する研究も軌道に乗った。その中で方形骨ー関節骨には独自の靭帯、半月が存在することがわかりこの領域の知見は相当な進捗を見せた。一方ラット顎関節は関節の形態から前後方向の運動が主体で、顎関節の主靭帯とされる外側靭帯が存在しないことなどの特徴も判明しつつある。したがって当初のこの研究の大きな目的の一つである「一次顎関節と二次顎関節の比較」に関して運動を含めた関節の機能面からの考察が可能になってきた。この結果は二度の学会発表を経て現在論文作成中となっている。 また継続実験として細胞外基質のうちテネイシンCおよびタイプIIIコラーゲンの発現に関しても検索を開始して結果が出始めている。さらに二次軟骨のうち翼状骨前方に出現する二次軟骨は哺乳類の一次、二次軟骨とは異なるの形成過程を辿ることがわかり、その解析により従来報告されていない所見を得られる可能性がある。 以上のことから本研究はおおむね順調に進展し次年度の大きな進捗が期待できると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまずもって昨年度の結果を論文として発表することを目的として作業を推進する。実験に関してはこれらの結果の継続実験を計画している。昨年度は一次、二次軟骨の細胞外基質成分としてバーシカン、アグリカン、タイプI, II, Xコラーゲン、IBSP、SPP1の遺伝子発現をピックアップしてそれらの遺伝子発現を検索した。本年度はそれらに引き続き軟骨形成において非常に多様な機能を有しているとされるテネイシンCの発現に関し、すでに一部免疫組織化学の結果を発表しているが、さらに遺伝子発現の検索を加また他の様々な軟骨における所見も合わせてこの分子の機能の詳細を明らかにすることを計画している。さらにタイプIコラーゲンの形成を補佐し、軟骨形成にも一定の役割を演じているとされるタイプIIIコラーゲンの発現に関し、予備実験の結果ニワトリの軟骨形成にも関連している可能性が見出されたためその詳細な発現解析をする予定である。 一次顎関節と二次顎関節の比較に関してラットを用いた実験をスタートさせたが本年はまずこれまで得られた結果を論文にまとめるとともに、軟骨組織が存在することがわかったニワトリ半月と加齢によって軟骨組織が出現するという報告があるラット関節円板に関し、三次元構築モデルも含めたマクロ解剖学的所見と免疫組織化学、 in situ hybridizationによる解析を計画している。 さらにこれまでの研究で独特な形成過程を示すことがわかった翼状骨前方部の二次軟骨に関して、その過程を制御する細胞成長因子、転写因子の解析を同様な免疫組織化学、 in situ hybridization に加えレーザーキャプションによって組織を抽出し網羅的解析にかける実験も計画している。
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