研究課題/領域番号 |
21K06760
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
冨永 薫 自治医科大学, 医学部, 教授 (20265242)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 神経幹細胞 / 神経発生 / クロマチン / ヒストンアセチル化 / 転写制御 |
研究開始時の研究の概要 |
脳の機能的な構築には、神経幹細胞がその数を維持しつつ、適切な場所で適切な数の細胞系譜を産生することが必要である。さらに産生された膨大な数の神経細胞は適切な場所に移動し、精巧な神経回路ネットワークが形成される。このような秩序だった脳の構築は、種々の転写因子とクロマチンのヒストン修飾を介したエピジェネティック因子の協調作用により成し遂げられる。本研究を通じて、神経幹細胞の自己複製能維持と神経分化、さらにそれに引き続く脳の高次機能の構築におけるエピジェネティック制御ネットワークの分子機構の解明を目指す。本研究により得られる結果は、精神神経疾患の分子病態解明およびその治療法開発への発展が期待できる。
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研究実績の概要 |
エピジェネティックな調節機構が神経系の構築や機能に重要である。その破綻は神経幹細胞の維持や神経発生、高次脳機能に大きな影響を与え、神経変性疾患や知的障害、自閉スペクトラム症の発症に関与すると考えられている。しかしながら、エピジェネティック因子により、これらの事象がどのように制御されるのかについての詳細な分子機構は、未だ不明な点が多い。本研究では、脳に高発現するTip60ヒストンアセチル化酵素に着目し、神経発生におけるヒストンアセチル化の役割の解明を目指す。神経幹細胞特異的Tip60欠損マウスを用いて、神経幹細胞の自己複製および神経分化および神経機能におけるヒストンアセチル化の役割を明らかにすることを目的とし、当該年度は以下の結果を得た。 1、Tip60欠損胎児脳で高発現しているグルカゴン遺伝子の発現パターンを解析した。大脳皮質の免疫組織学的解析、胎児脳からの細胞分離培養および胎児脳神経幹細胞のin vitro分化系の解析から、Tip60欠損胎児脳のグルカゴン遺伝子の高発現は、当初予想していたミクログリアに由来するのではなく、ある種の神経細胞に由来することが明らかとなった。 2、いくつかの市販の抗Tip60抗体を用いて、マウス培養神経幹前駆細胞におけるTip60結合タンパク質の解析系の確立を検討した。これにより、神経発生および神経分化過程におけるTip60結合タンパク質の継時変化を追跡できる可能性が示唆された。 3、Neuro2Aマウス神経芽細胞腫株およびP19マウス胚性腫瘍細胞株の神経分化系を検討し、神経分化過程におけるTip60の生化学的解析系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究目的は、おおむね順調に進展している。Tip60標的遺伝子の同定に必要なChIP-seq解析に有用な抗体の選別や諸条件の検討、神経発生・分化過程における新規Tip60結合転写因子の同定に必要な諸条件の検討も順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下について研究を進める予定である。 1、マウス胎仔脳より分離培養された神経幹細胞の神経分化にともなうTip60標的遺伝子の継時変化を、抗Tip60抗体を用いたChIP-seq解析により追跡する。マウス胎児脳を用いた解析よりも神経分化に特化した解析が期待できるとともに、マウス胎児脳の結果を確認する。サンプル量に制限があるため、より高感度でネイティブな状態のクロマチン解析が可能なCUT&Tag解析を検討する。 2、神経分化にともなうTip60結合転写因子の継時変化を追跡するために、生化学的手法を用いてTip60結合転写因子の同定を試みる。 3、Neuro2Aマウス神経芽細胞腫株およびP19マウス胚性腫瘍細胞株の神経分化系を用いて、胎児脳や培養神経幹細胞の解析から得られた結果の分子機構を詳細に解析する。
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