研究課題/領域番号 |
21K06764
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
福井 一 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80551506)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 力学応答 / 血流 / 心臓弁形成 / ゼブラフィッシュ / メカノトランスダクション / 血行力学特性 |
研究開始時の研究の概要 |
心臓弁形成は、遺伝学的な制御をうけるシグナル調節機構と、物理学的に調節される力学応答機構が協調的に働くことで進行する。遺伝的に制御されたシグナル因子が弁形成に関わることが研究されてきた一方、力学応答機構の詳細は不明であった。本申請者は拍動する状態の生体心臓を解析し、力学情報が「弁形成時期に限って、弁領域特異的に」化学シグナルに変換される機構を明らかにした。しかし、恒常的な力学刺激(拍動・血流)がどのようにして適切に弁領域で調節されるのか、その機構は未だに不明である。本研究では心臓弁形成を制御する力学応答性の化学シグナルがどこから・どのように入力されるのかを明確にする。
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研究実績の概要 |
心拍動・血流の開始後、心臓管腔を構成する心内膜内皮細胞は恒常的に高値の物理的ストレスを受ける。ゼブラフィッシュ胚を用いた研究から、弁形成時期に特異的かつ心臓弁領域の心内膜内皮細胞に限局した「力」に直接応答する生体化学機構(Ca2+-Nfatシグナル活性化)が存在し、弁形成を制御することを見出したが、その作用機序の全容は不明である。 当研究課題では、拍動・血流が常に生じる心臓で、いかにして弁形成時の弁領域に限って力学応答Ca2+-Nfatシグナルが規定されるのかについて、研究を行っている。昨年度までの研究を継続してきた中で、細胞膜に局在する蛍光Ca2+レポーターの樹立から、①力を感知した細胞内力学シグナルが心管腔面より開始して全体へと伝搬することを見出した。そして、心管腔内への磁気ビーズ留置により血流を操作することで、②心内膜内皮細胞は双方向性の血流に応答して細胞内シグナルが活性化することを見出した。 これらの研究成果を裏付けるための検討として、生物学的アプローチでは、イメージング解析に用いるための新たな力学応答センサーの樹立と、近位依存性タンパク標識法に活用するためのトランスジェニック系統の作製を開始し、力学感知センサーの同定にむけた研究を行っている。また生物物理学的アプローチでは、磁性流体を活用した新たな血流操作法の開発に挑んでおり、心管腔内で生じる力を切り分けるための研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの成果を裏付ける結果が得られており、力学応答性シグナル変換機構の一端が明らかになったため、区分(2)を選択した。 課題開始当初、細胞外ATPを定量的に評価するための蛍光ATPセンサーの活用を目指したが、シグナル可視化に至らず評価できなかった。理由として、蛍光センサーがもつ解離定数が細胞外ATP量に適していなかったことが考えられた。今後、センサー感度の改変などにより、細胞外ATP量の変動を評価できるようにしたいと考えている。 進展として、細胞膜局在性Ca2+レポーターの高速イメージング解析が可能となった。細胞質内Ca2+変動との連関は明確には捉えられていないが、現在ミトコンドリア外膜に局在するCa2+レポーター(F0世代)を樹立した。次年度の解析では細胞内の動的なCa2+レベルを詳細に評価できると考えている。 力学シグナル変換においては、双方向性血流の重要性が明確になった。現在のところ作用機構は全く不明であり、新たな生体機構の解明に繋がることが期待できる。細胞膜、または力学センサー自体が力の極性を認識する可能性が考えられるため、次年度は新たな解析手法から可能性を検証したい。
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今後の研究の推進方策 |
新たな血流操作法として、磁性流体を活用する。ゼブラフィッシュ心管腔内への磁性流体留置と磁気ピンセット法を応用を開始しており、実験系の確立を目指している。確立後は、拍動を伴わずに血流から生じるせん断応力を模倣でき、力学応答シグナルと双方向性血流の関係について定量的解析から明確にする。 また細胞膜から開始する力学応答を動的に捉えるため、細胞膜と細胞質内のCa2+変動を同時に捉える検討を行う。 そして力学応答シグナルは細胞膜に局在するセンサーを介して開始するため、力学感知センサーの同定に挑む。現在、細胞膜上の窪み構造であるカベオラが重要な役割を果たすことを突き止めており、カベオラに局在する分子に着目した探索研究を計画・開始している。
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