研究課題/領域番号 |
21K06766
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
秋田 天平 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00522202)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 胎生期 / 神経前駆細胞 / 電位依存性 / イオンチャネル / カリウムチャネル / 非選択的陽イオンチャネル / カルシウムチャネル / mRNA / 生後発達期 / カリウムイオン / Kv2.1 / タウリン / WNK3 / 大脳基底核原基 / ナトリウムイオン / 発達性てんかん性脳症 / 細胞膜電位 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞が増殖・形態変化・移動を起こす際には、生体内の主なイオンであるNa+・K+・Cl-が細胞膜のイオンチャネルを透過し、それに伴って受動的に水が透過することで、細胞の容積がダイナミックに変化します。イオンチャネルの多くは、細胞膜の内外面に生じている電位差の変化を感知して開閉しますが、種々の電位依存性イオンチャネルが具体的にどう連携して細胞発達を制御しているのか、不明点が多いです。本研究は、胎生脳の神経前駆細胞の発達過程についてその謎に迫り、チャネル連携異常と精神神経疾患との関連解明も目指します。
|
研究実績の概要 |
本年度は胎生脳の抑制性神経前駆細胞の研究について、電気生理学的手法により発現が想定された電位依存性イオンチャネルの種類を、分子生物学的手法(RT-PCR法)により明確にすることを試みました。ホールセルパッチクランプ法による細胞膜電流の解析から、生理的イオン環境下で移動初期の抑制性神経前駆細胞に生じる膜電流の大部分は、電位依存性カリウムチャネルKv1ファミリーメンバーの何れかと、非選択的陽イオンチャネルNALCN複合体が担う電流の和からなることが示唆されました。そこで、Kv1ファミリーの7つのメンバー(Kv1.1-Kv1.7)及びNALCN複合体中のイオン透過路を含む蛋白成分(NALCN)のmRNA発現の有無を、3体の母体マウス内の全ての胎仔の前駆細胞を用いて調べたところ、Kv1.1・Kv1.3・Kv1.6及びNALCNのmRNA発現が確認されました。特にKv1.3の発現量が明瞭に多く、前駆細胞の発達過程で主要な役割を担っていることが示唆されました。但し、電位依存性カリウムチャネルは4分子で1つのチャネルを構成する四量体であり、Kv1ファミリー内の異なるメンバーが組み合わさって1つのチャネルを構成しうることから、Kv1.3をメインにKv1.1とKv1.6が或る割合で組み合わさって働いていることも考えられます。また、膜電流成分としては明瞭ではありませんでしたが、ヒトの抑制性神経前駆細胞で発現が報告されている電位依存性カルシウムチャネルCav1.2についてもmRNA発現が確認されました。今後前駆細胞発達過程での各チャネルの機能的意義を明確にしていきます。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度に所属変更後、大幅に増加した教育・管理業務と新規ラボの立ち上げに追われ、本研究課題に割ける時間が少なかったことの影響が残っているため。
|
今後の研究の推進方策 |
抑制性神経前駆細胞の研究について、今後さらに検討を進める必要があることとして、①細胞移動時の各チャネルの細胞上の分布、②特異的阻害剤やRNA干渉等により各チャネル機能を抑制した際の細胞移動への影響、③チャネル間の活性化相互依存性、④各チャネルの膜電流生成以外のシグナル伝達能の有無、⑤報告されている抑制性神経前駆細胞移動の誘導因子(GABA、Neuregulin、 BDNF等)や忌避因子(Slit1、Sema3A/F等)の作用の各チャネル機能への影響等が挙げられ、これらの検討を通じてチャネル連携による細胞移動の駆動機序を明らかにしていきます。なお、Kv1.1・Kv1.3・Kv1.6の遺伝子変異による発達性てんかん性脳症、NALCNの変異によるIHPRF症候群やCLIFAHDD症候群、Cav1.2の変異によるTimothy症候群と呼ばれる重篤な神経・精神発達障害が報告されており、本研究の今後の進展はこれらの発症機序の解明を進めることも大いに期待されます。
|