研究課題/領域番号 |
21K06780
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川岸 裕幸 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (30819082)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 心筋細胞 / 糖代謝 / カテコラミン / 新生児 / 心臓 / アドレナリン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、生下直後の心臓の心筋細胞における糖代謝経路の制御機構と、低血糖ストレス応答での役割を明らかにすることを目指すものである。新生児は生下後、母乳による栄養補給が始まるまで低血糖になりやすい。最近申請者は、生下直後の心筋細胞ではグリコーゲン分解-解糖系-乳酸産生の亢進が起こることを発見した。その際に、細胞外の乳酸濃度も有意に上昇しており、心臓が自身のグリコーゲンを分解してエネルギー基質を得るとともに、他臓器にエネルギー基質として乳酸を供給している可能性が示された。本研究では、この系が生下直後の低血糖ストレス応答機構として機能している可能性を検証し、その分子機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、心室筋細胞のβアドレナリン受容体(βAR)刺激による糖代謝制御機構を解明し、その代謝物である乳酸の生理機能について新たな知見を得ることである。新生児期の哺乳類において、カテコラミンはさまざまなストレス応答に重要な役割をもつ。我々は、新生児マウス単離心室筋細胞のβARを薬理学的に刺激することで、急激な糖代謝の亢進が生じ、乳酸分泌が増加するという知見を得た。乳酸は近年、ATP基質としてだけでなく、細胞間のシグナル伝達物質として機能することが明らかになっているが、発達段階の心筋細胞や心臓におけるその生理的意義については不明である。 昨年度までの検討から、新生児マウス心室筋細胞のβAR刺激よる乳酸分泌にはグリコーゲン分解が関与するという知見を得ていた。本年度はさらなる薬理学的実験を進め、グリコーゲンをグルコース-6-リン酸に代謝する酵素群が、βAR刺激による糖代謝亢進に重要であることを発見した。続いて、この現象がどのような細胞内シグナル伝達を介するものかについて調査を行った。まず、βARの主要な下流シグナル伝達経路であるcAMP-PKA系について、阻害薬、活性化薬を用いた検討を行った。その結果、PKA阻害薬で処理した細胞においてもβAR刺激によって乳酸分泌が亢進することが判明し、逆にPKAを直接活性化しても乳酸の分泌向上は認められなかった。一方、PKAとは別のβAR下流因子であるfactorAについて薬理学的解析を行ったところ、βAR刺激による糖代謝亢進に重要な役割を持つ可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、心室筋細胞をカテコラミンで刺激することで、糖代謝経路が急速に亢進することを見出している。さらに、カテコラミンが作用する受容体は主にβARであること、βARの活性化によってグリコーゲン分解が促され、心筋細胞の糖代謝経路が亢進することを明らかにしている。さらにこの現象は、βARの下流因子であるPKAではなく、factorAを介している可能性を見出した。現時点では、実験計画の遂行について大きな問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、βAR刺激による糖代謝亢進経路について、その責任因子を同定することを目指す。同時に、βAR刺激によって分泌された乳酸が心筋細胞自身にどのような表現型変化を誘導するかについて検討を進めていく。心筋細胞を乳酸で処理することによる肥大化や分裂への影響(形態的変化)について検討し、また活動電位や各種イオンチャネルへの影響についてもパッチクランプ法やマルチ電極アレイを用いた電気生理学的解析を行うことで、心筋細胞の機能における乳酸の作用について明らかにする。
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