研究課題/領域番号 |
21K06789
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小比類巻 生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40548905)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | サルコメア / In vivoイメージング / 心筋細胞 / ナノ計測 / in vivoイメージング / 心筋収縮 / in vivo イメージング / ナノレベル解析 / サルコメア動態 / リズム調節 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、心筋サルコメア動態のin vivoナノ解析を興奮収縮連関の解析に発展させ、「リズム調整とその変調」の観点から心疾患病態を系統的かつ定量的に解析する。「in vivo心臓におけるサルコメアの同調性」と心筋細胞の膜電位や細胞内Ca2+濃度の関係を、独自に開発した高速共焦点蛍光顕微鏡を使用して解析する。次に不整脈を起こす心疾患モデルマウスにおける分子レベルの「リズム調節」が正常と比べてどのように変化しているかを調査する。正常ならびに病態時における「サルコメア同調性の変化と分子レベルリズム調整」という新たな視点から、心疾患の新規診断・治療法の開発に向けた指針を得る。
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研究実績の概要 |
令和4年度の研究実施計画に沿って、マウスin vivo左心室の心筋細胞内ナノ計測システム(2光路系を含む)を用いて、生きたマウスの左心室における異なる2要素(例:サルコメア動態と細胞内Ca2+濃度)の動態解析を行った。 Z線に局在するACTN2にCaセンサー蛍光タンパク質GCaMPを融合したアデノウイルスベクターAd-α-ACTN2-GCaMPと橙色蛍光タンパク質を融合したAd-α-ACTN2-TagRFPを心筋細胞に発現させる最適な感染条件の検討を行った。また、Cal-520とα-ACTN2-TagRFPの同時イメージングを行い、生きたマウスの心臓におけるサルコメア長とCa2+同時イメージングの最適条件を検討した。また細胞膜染色試薬CellMaskとCa2+指示薬の組み合わせによって、T管とCa2+動態の同時イメージングも行った。 並行して、サルコメアイメージングに必須のZ線の標識効率を上げるため、アデノウイルスベクターでの遺伝子導入法に代わり、時期特異的α-ACTN2-AcGFPノックインマウスの作製に着手し、遺伝子を導入する座の選定や遺伝子導入用コンストラクト作製を行なった。しかしながらα-Actinin2-AcGFP遺伝子を含むコンストラクトにマウス受精卵に対する予想外の毒性があることが発覚したため、当該のノックインマウス作製には遅れが生じている。 令和3年度に発表した生きたマウスの心臓におけるサルコメアの同調性の論文に関してはJournal of General Physiology誌のコメンタリーに取り上げられた。さらにこのサルコメア同調性解析を用いてマウスの左心室容積、左心室圧を一過性に変化させた際の個々のサルコメア間の同調性が心機能にどのような影響を与えるかを調査した。この研究成果は第100回日本生理学会大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の研究実施計画に沿って、マウスin vivo左心室の心筋細胞内ナノ計測システム(2光路系を含む)を用いて異なる2要素(例:サルコメア動態と細胞内Ca2+濃度)の同時イメージングを行った。 α-ACTN2-GCaMPとα-ACTN2-TagRFPを心筋細胞に発現させるそれぞれのアデノウイルスベクターの最適な感染条件の検討を行った。また、Cal-520とα-ACTN2-TagRFPの同時イメージングを行った。生きたマウスの心臓におけるサルコメア長とCa2+同時イメージングの最適条件を検討することが可能になった。また細胞膜染色試薬CellMaskとCa2+指示薬の組み合わせによって、T管とCa2+動態を同時にイメージングすることも可能になり、現在データを取得中である。 並行して、サルコメアイメージングに必須のZ線の標識効率を上げるため、アデノウイルスベクターでの遺伝子発現法に代わり、時期特異的α-ACTN2-AcGFPノックインマウスの作製に着手し、遺伝子を導入する座の選定や遺伝子導入用コンストラクト作製を行なった。しかしながらα-Actinin2-AcGFP遺伝子を含むコンストラクトに受精卵に対する予想外の毒性があることが発覚したため、当該のノックインマウス作製には遅れが生じている。令和5年度内にはノックインマウスの作製が現時点で可能かどうかが判明するため、状況によっては実験計画の変更を行う可能性もある。その場合はサルコメアの標識方法を膜染色試薬に変更する。 さらに、令和3年度に開発した生きたマウスの心臓におけるサルコメアの同調性の解析方法を用いて、マウスの左心室容積、左心室圧を一過性に変化させた際の個々のサルコメア間の同調性が心機能にどのような影響を与えるかを調査した。この研究成果は第100回日本生理学会大会において発表を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は研究実施計画に従って以下の研究を遂行する予定である。 前年度に開発したサルコメア協調性、Ca2+動態、膜電位のナノレベル解析法を心疾患モデルマウス(異型狭心症、TAC心不全、DCM)に応用し、in vivoにおける正常心筋と病態心筋の間でサルコメア同調性、Ca2+イオン動態、膜電位動態における変調の有無を確認、ナノレベルの情報を抽出し定量的に解析する。前年度に確立した手法を用いて、細胞内局所のサルコメアの動きとCa2+濃度や膜電位との関係に、正常心筋と病態心筋の間で差があるかどうかを調べる。 α-ACTN2-AcGFP KIマウスの作製に成功したあとは、当該KIマウスの心臓を使用し、心疾患モデルを作製してサルコメア動態にどのような異常があるか解析する予定である。さらに代表者らの以前の研究で、DCMモデルマウスの心臓では心筋細胞が~35%拡大していること、介在板-介在板間距離が増加していることを発見しているため、この事実を基に、α-ACTN-AcGFP KIマウス(または心筋症モデルマウスとの交配で得られたヘテロマウス)において、サルコメア動態と膜電位・介在板動態の関係を調査する。具体的には、これらの病態モデルマウスの心筋細胞にFluoVolt膜電位指示薬を用いてイメージングする。In vivoにおける各要素の関係性を抽出し、正常と病態の差を調査する。もしノックインマウスの作製が困難で計画を変更する場合は、アデノウイルスベクターの発現効率を高める実験手法の探索を行い、従来手法でのデータ取得を目指す。これらの実験を通して、サルコメア動態、Ca2+濃度、膜電位の各要素間の関係性を解析することにより、心筋症の病態を分子レベルのリズム調整という観点から捉え直し、心疾患モデル動物を用いたin vivo心筋リズム変調の解析を強力に推進する。
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