研究課題/領域番号 |
21K06793
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48020:生理学関連
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
立山 充博 生理学研究所, 分子細胞生理研究領域, 准教授 (30276472)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | カリウムチャネル / K2P / THIK-1 / Gタンパク質共役型受容体 / ゲーティング / THIKチャネル / 光クロスリンク反応 / 光クロスリンク |
研究開始時の研究の概要 |
イオンチャネルの開閉を担うゲートの制御により、多様な細胞応答が引き起こされる。 我々は、カリウムチャネルの一種であるTHIKチャネルの機能が、Gq共役型受容体により制御されること、この制御にチャネルの遠位C末端領域が関与する可能性を見出している。THIKチャネルのC末端領域による制御機構は、細胞死との関連も報告されているため、その分子基盤の解明は重要な意味を持つ。本研究では、光クロスリンクアミノ酸をTHIKチャネルの任意の部位に導入し、光クロスリンク反応を利用するこで、Gq共役型受容体によるTHIKチャネル制御機構の分子基盤を明らかにするともに、その機構の解明につなげる。
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研究実績の概要 |
本研究は、「THIKチャネル遠位C末端領域によるゲート制御機構の分子基盤の解明」を目的としたものであり、前年度に、チャネル活性化に伴い膜貫通部位で構造変化が起こることを示唆する結果を得た。本年度も、膜貫通部位における構造変化に関する研究を継続し、新たな知見を得た。紫外線照射によりN=N=N基が活性化し数Å以内の原子と不可逆的に反応する光クロスリンクアミノ酸 4-azido-phenylalanine (4AzP)を THIK-1チャネルの第2膜貫通部位に位置するアミノ酸残基に導入し、機能解析を行った。コンストラクトの多くはGq共役型受容体刺激による電流増加を示したが、L146に4AzPを導入した場合は電流増加が見られなかった。さらに、紫外線照射を行ったところ、多くのコンストラクトで電流増加が確認されたが、F145およびL146へ導入した場合は、電流減少が見られた。これらの結果は、紫外線照射による光クロス反応もしくは窒素分子の解離により、チャネル膜貫通部位に構造変化が生じたことを示唆する。紫外線照射後は、I139およびL140に4AzPを導入したチャネルにおいてGq共役型受容体刺激による電流増加が消失していた。これは、光クロス反応によりチャネル構造が固定化され、Gq応答により起こるべき構造変化が阻害されたためであると考えられた。即ち、Gq刺激により膜貫通部位に構造変化が生じて電流が増加するというモデルを支持する結果が得られた。 一方、計画していた生化学的実験では、ウェスタンブロットにおける、複数のバンドの検出および分子量の不一致などの問題を解決するに至らなかった。 全体としては、機能解析を中心に、一定の成果を得ることができ、おおむね順調に研究は進んでいるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
THIK-1チャネルの活性化に伴い、膜貫通部位において構造変化が起こることを示唆する結果を得ることが出来た。特に、Gq共役型受容体依存性活性化に必須となるアミノ酸残基の同定、および、構造変化に重要な働きを担うと考えられる部位の発見は、本研究の成果として挙げらる。前者については、Gq共役型受容体によるチャネル活性化機構の解明に寄与するものと考えられる。また、AzP導入チャネルの機能解析から得られた知見をもとに、遠位C末端領域が膜貫通部位に与える影響を解析することが可能になると考えており、本研究課題の目的達成に近づけたものと判断している。 一方、生化学的実験に関しては、一部の問題が解決しておらず、研究が計画通りに進展していない。しかしながら、機能解析を中心として、遠位C末端領域によるTHIKチャネルゲーティング制御機構の分子基盤の解明を目的とした研究の進捗としては、おおむね順調である判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、生化学的実験の問題点を解決し、クロスリンク反応の相手となるアミノ酸残基の同定を目指すとともに、チャネル活性化機構における遠位C末端領域の影響について検討したい。これまでの研究により、4AzP導入チャネルには、UV照射による電流増加・電流減少を示すものや、UV照射後にGq応答が消失するものなどがあることが明らかとなっている。これら、各コンストラクトのC末端に変異を導入した場合、Gq共役型受容体刺激やUV照射に対する応答がどのように変化するのかについて調べる。これにより、C末端変異によるチャネル膜貫通部位構造への影響を明らかとするとともに、その分子基盤の解明にも迫りたい。 また、C末端領域の多様な部位に4AzPを導入し、4AzP導入チャネルの機能解析による重要部位の探索を行う。紫外線照射により大きな変化を示すコンストラクトを生化学的実験に用いて、相互作用部位の検索を進展させたい。
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