研究課題
基盤研究(C)
近年急増する神経変性疾患や脳梗塞、自閉症などの発達障害など、ほとんどすべての神経疾患の基盤に炎症と活性化ミクログリアが存在する。ミクログリアは死細胞除去により恒常性維持に働くが、過剰に活性化されると生存可能なニューロンまで貪食により傷害する。これまでに初代ミクログリアの約2割に特に高い貪食能を持つサブセットが存在し、その機能発現にトル様受容体(TLR)とATP/UTP受容体P2Y2が重要な役割を果たすことを見出した。本研究では、炎症から高貪食能を獲得する仕組みをTLR→P2Y2→AXL貪食受容体のシグナル制御に焦点を当て解明する。さらに炎症とミクログリアが関わる神経疾患の治療方策を探る。
ミクログリアにはリポポリサッカライド(LPS)刺激により細胞死をおこす細胞と死を免れ活発に死細胞を貪食する細胞の異なるサブセットが存在する。これらLPS誘発細胞死と死細胞貪食はいずれもP2Y2受容体を介して引き起こされた。LPS刺激はP2Y2受容体を形質膜先端部の表面に発現させた。また、TLR4下流シグナルのERKやAKT活性化もP2Y2受容体に依存していた。さらに、LPS刺激はミトコンドリア活性を著しく上昇させ、大量にATPを産生し細胞外へと放出することでP2Y2受容体を刺激する可能性が示された。
超高齢化に伴いアルツハイマー病などの神経変性疾患、脳梗塞などの脳血管障害などの増加が大きな社会問題として懸念されている。これらの病態には共通して過剰に活性化された炎症性ミクログリアが関与する。ミクログリアは異物や死細胞を貪食して神経保護に働く一方、炎症時には傷害性の高い炎症性サイトカインを放出するとともに弱った神経細胞も過剰に貪食し神経障害を引き起こす。本成果はこれまで不明であった炎症性ミクログリアの活性化のメカニズムを明らかにするものであり、学術的意義は大きい。また、炎症性ミクログリアの関わる疾患の治療標的の開発にも繋がることから社会的にも意義のあるものと考えられる。
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