研究課題/領域番号 |
21K06806
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
辻 稔 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (70297307)
|
研究分担者 |
宮川 和也 国際医療福祉大学, 薬学部, 准教授 (10453408)
黒川 和宏 国際医療福祉大学, 薬学部, 講師 (30454846)
高橋 浩平 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (90846411)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | ストレス適応障害 / 白血病阻止因子 / 5-HT1A受容体 / GSK3β / アストロサイト / オリゴデンドロサイト / ミエリン / マウス / ストレス適応 / 抗うつ薬 |
研究開始時の研究の概要 |
生体は、ストレスに適応して恒常性を維持するための生理機構(ストレス適応機構)を有しており、この機構の障害が様々なストレス性疾患の発症に関係していると考えられる。したがって、ストレス適応に関与する脳機能を考究することは、うつ病をはじめとするストレス性精神疾患の発症要因や予防因子を明らかにし、新規治療薬の開発に向けた礎を築くための重要な課題である。本研究では、海馬アストロサイトにおいて生成・分泌されるLIFによるミエリン形成がストレス適応の形成において重要な役割を果たしていること、さらにはこの機構の障害が情動異常発症のリスクとなることを実証し、新規抗うつ薬の開発への応用につなげることを目的とする。
|
研究実績の概要 |
生体は、ストレスに適応して恒常性を維持するための生理機構(ストレス適応機構)を有しており、この機構の障害が様々なストレス性疾患の発症に関係していると考えられる。したがって、脳内のストレス適応機構を考究することは、うつ病をはじめとするストレス性精神疾患の発症要因や予防因子を明らかにし、新規治療薬の開発に向けた礎を築くための重要な課題である。一方近年、白血病阻止因子(LIF)が、脳神経細胞の軸索成分であるミエリンの形成を促進することが明らかにされている。また、ストレス性精神疾患の発症に、ミエリン形成の低下が関与していることが示唆されている。申請者らは2022年度の研究において、先の研究でLIFを増加させる作用を有することを見出している5-HT1A受容体刺激薬が、ストレス適応障害モデルマウスで認められる情動異常や海馬におけるミエリン構成タンパク質の減少を改善することを明らかにした。また、5-HT1A受容体作動薬が、GSK3βのリン酸化の亢進と、その下流に存在するミエリン形成に重要なオリゴデンドロサイトの発現調節因子の増加を引き起こすことも見出した。そこで、2023年度では、これら5-HT1A受容体刺激薬の効果に及ぼすGSK3β阻害薬の影響について検討した。その結果、ストレス適応障害モデルマウスで認められる情動異常や海馬におけるオリゴデンドロサイト並びにミエリン構成タンパク質の減少に対する5-HT1A受容体刺激薬の改善効果が、GSK3β阻害薬の併用により抑制されることを明らかにした。また、オリゴデンドロサイトの発現調節因子の発現も、一部GSK3β阻害薬により低下することを確認した。これらの知見は、5-HT1A受容体の刺激によりGSK3βの活性化を介してオリゴデンドロサイトの分化・成熟が促進し、ミエリン形成の低下に起因するストレスへの適応障害が改善することを示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、海馬アストロサイトにおいて生成・分泌されるLIFによるミエリン形成がストレス適応の形成において重要な役割を果たしており、この機構の破綻が情動障害発症のリスクとなることを種々の研究手法を用いて多角的に実証し、ストレスに対する恒常性維持に関与する脳内メカニズムの解明と新規うつ病治療薬の開発への応用につなげることである。この目的の達成に向けて、2023年度では、申請者らが先の研究でLIFを増加させる作用を有することを見出している5-HT1A受容体刺激薬が、ストレス適応障害モデルマウスに与える効果とそのメカニズムについて検討した。その結果、「研究実績の概要」に記載したとおり、5-HT1A受容体の刺激によりGSK3βの活性化を介してオリゴデンドロサイトの分化・成熟が促進し、ミエリン形成の低下に起因するストレスへの適応障害が改善することを示唆する知見を得た。一方、当初予定していた各グリア細胞(アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイト)におけるLIF及びその受容体の局在・発現変化の解析を実施するまでには至らなかった。さらに、マウス由来アストロサイトの初代培養系を構築し、LIFが産生・分泌されていることは確認したものの、このLIFの産生・分泌を高める薬物を検索し、同定した薬物がストレス適応障害モデルマウスのストレス適応能力やオリゴデンドロサイト前駆細胞、オリゴデンドロサイト成熟細胞並びにミエリンの発現・形態変化に与える効果について検討することはできなかった。これら当該年度内に実施できなかった研究計画を次年度に実施するために、補助事業期間の延長を申請した。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度では、5-HT1A受容体の刺激により、海馬においてGSK3βの活性化を介してオリゴデンドロサイト発現調節因子の増加が誘発され、その結果オリゴデンドロサイトの分化・成熟が促進することで、ミエリン形成の低下に起因するストレスへの適応障害が改善することを示唆する知見を得た。このことを踏まえ、2024年度では、以下の検討を実施する予定である。 1)各グリア細胞(アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイト)におけるLIF及びその受容体の局在・発現変化を解析する。 2)初代培養アストロサイトにおいてLIFの産生・分泌を高める薬物を検索する。 3)2)の検討で同定した薬物が、初代培養アストロサイトにおいてLIFの産生・分泌を高めるメカニズムについて考究する。 4)2)の検討で同定した薬物をストレス適応障害モデルマウスに投与し、オリゴデンドロサイト前駆細胞、オリゴデンドロサイト成熟細胞並びにミエリンの発現・形態変化を観察するとともに、ストレス適応能力の変化を検討する。
|