研究課題/領域番号 |
21K06810
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48030:薬理学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
三上 義礼 東邦大学, 医学部, 助教 (80532671)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 駆出率の保たれた心不全 / 糖尿病性心筋症 / 拡張機能障害 / ニューレグリン1 / ErbB2 / トラスツズマブ / 1型糖尿病 / 臓器連関 / 収縮機能障害 / 1型糖尿病 / インスリン / カルシウム |
研究開始時の研究の概要 |
駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の発症メカニズムは不明な点が多く、治療法も確立していない。近年、心血管疾患の発症・進展には、他臓器との連関機構の破綻が寄与することが明らかとなってきた。糖尿病性心筋症は、早期に左室駆出率が保たれた拡張機能障害の病態が認められる。そこで本研究では、臓器連関の観点から拡張機能障害の機序を解明することを目的とする。糖尿病モデルマウスや初代培養心室筋細胞を用いて、臓器連関を介した心保護作用の実行分子を明らかにすると共に、心室筋細胞内における心保護シグナル経路を機能・代謝・構造の観点から解明する。最終的に、HFpEFの新しい治療標的を確立することをめざす。
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研究実績の概要 |
駆出率の保たれた心不全(HFpEF)は、拡張機能不全が生じているものの収縮機能は保たれている心不全で、有効な治療法は未だ確立していない。本研究は、HFpEFの発症機序の解明から、その治療法を見出すことを目的とする。 Streptozotocin(STZ)誘発1型糖尿病(T1DM)モデルマウスは、STZ投与4週後(STZ-4W)において左室拡張機能障害が認められたものの左室駆出率は保たれていた。STZ-4Wマウスでは心保護因子のひとつNeuregulin-1 (NRG1) の血中濃度が上昇していた。NRG1は心臓、腎臓、肝臓において発現が亢進しており、臓器連関機構により血中濃度が上昇し、冠循環や細胞間連関を介して心室筋細胞に作用すると考えられた。NRG1の受容体ErbB2 (HER2) を遮断する目的で抗ErbB2抗体製剤Trastuzumab (TRZ) をマウスに腹腔内投与したところ、コントロール群ではTRZ投与による心機能の変化が認められなかったのに対し、STZ-4WマウスではTRZ投与により左室駆出率が有意に低下した。さらに心室では、AktのSer-473のリン酸化レベルがTRZ投与によりさらに低下していた。NRG1の上流シグナル経路を探索したところ、NRG1の転写調節領域にKLF10の結合配列の存在を見出した。KLF10は発現・局在がNRG1と相関しており、NRG1の発現を制御している可能性が示唆された。 以上の結果から、NRG1は糖尿病性心筋症早期ステージにおいて代償的に発現が増加し、NRG1-ErbB2/4-Akt経路を介して左室収縮機能の維持に寄与すると考えられる。糖尿病性心筋症早期に左室拡張機能障害が左室収縮機能障害に先行する理由の一部はこの機序で説明できる。本成果はJournal of Pharmacological Sciences 誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
左室駆出率が保たれているが左室拡張機能障害が認められる糖尿病性心筋症早期ステージにおいて、左室収縮機能の維持に寄与する分子としてNeuregulin-1を同定した。その遺伝子発現制御機構や下流のシグナル経路について新しい知見を得ることができた。さらに、これらの結果をまとめ、論文として発表した。現在、収縮機能の維持に寄与する分子メカニズムの解明を進めており、本研究の発展が見込まれることから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、NRG1-ErbB2/4-Akt経路の下流シグナルについてさらなる解析を進める予定である。すでにターゲットとなるとなる候補蛋白を絞り込んでおり、心室筋細胞における作用機序を明らかにする方針である。
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