研究課題/領域番号 |
21K06816
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大根田 絹子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (50323291)
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研究分担者 |
大森 慎也 高崎健康福祉大学, 薬学部, 講師 (10509194)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | マスト細胞 / エンハンサー / 転写因子 / 遺伝子発現制御 / トランスクリプトーム / 好塩基球 / クロマチン活性化 |
研究開始時の研究の概要 |
マスト細胞は、全身の粘膜や末梢組織に存在し、生体防御やアレルギー性炎症等に多彩な機能を有する。このようなマスト細胞特有の機能を表すためには、マスト細胞のみで発現している(または、マスト細胞で特に発現が高い)遺伝子の活性化が必要である。転写因子GATA2はマスト細胞の形質維持に必須であることが知られており、その遺伝子はマスト細胞で高度に活性化している。しかしながら、どのような仕組みで高度に活性化しているのかはわかっていない。そこで本研究では、マスト細胞におけるGATA2遺伝子の高度活性化の分子メカニズムを明らかにすることを目標にする。
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研究実績の概要 |
GATA2は、マスト細胞の分化形質維持に必須の転写因子である。ヒトとマウスのマスト細胞においてGATA2遺伝子は高いレベルで発現しており、代表的な標的遺伝子であるKit, Tpsb2, Cpa3などの発現量も高いレベルで維持されている。これらの遺伝子産物はマスト細胞自身の生存・増殖などの基本的機能のほか、病原微生物を分解するタンパク質分解酵素を発現するなど、マスト細胞特異的な機能発現に重要である。本研究では、マスト細胞において活性化していることが確認されたマウスGata2遺伝子の制御領域である、転写開始点から+53-57kbpに存在する(Gata2 downstream regulatory element:Gata2 DRE)領域に注目し、その機能を解析することで、Gata2遺伝子高度活性化の分子機序を明らかにすることを目的としている。 令和4年度は、ゲノム編集法を用いてGata2 DREを欠失させたマウス(delG2DREマウス)を作出し、前年度の細胞レベルでの解析結果を検証するとともに、個体レベルでの解析を行った。複数のdelG2DREホモ接合体マウスの骨髄細胞から骨髄マスト細胞(Bone marrow mast cells: BMMCs)を作成したところ、培養21日目までは、野生型マウスと同様にc-kit(+)FceRI(+)のマスト細胞分画が観察されたが、28日目ではマスト細胞分画の割合が野生型マウスの3分の1以下に低下し、野生型BMMCsの培養ではみられない異常なc-kit(-)FceRI(+)細胞が増加していた。また、delG2DREマウスの骨髄細胞は、好塩基球への分化が著しく障害されていることが明らかとなった。一方、delG2DREマウス個体における腹腔マスト細胞や皮下組織のマスト細胞の数や分布は、野生型マウスと同様であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、delG2DREマウスのホモ接合体マウスが得られたため、骨髄細胞を用いたマスト細胞・好塩基球の培養実験や、個体での末梢組織マスト細胞の解析を実施することができた。その結果、Gata2 DREは骨髄マスト細胞・好塩基球の正常な分化に必要であることが示された。GATA2は赤血球・巨核球の分化にも必要であり、血管内皮細胞などの非血液細胞にも発現しているが、delG2DREホモ接合体マウスには、成長障害や貧血・出血傾向等の顕著な表現型は観察されなかった。これらの結果は、データベース上G2DREがマスト細胞で強くアセチル化されていること、マスト細胞株で同領域にGATA2が結合し、エンハンサーの特徴であるH3K4me1修飾されていることなど、これまでの解析結果と合致する。更に、骨髄細胞の培養において、好塩基球の分化障害がマスト細胞よりも顕著であったこと、BMMCs形成において培養日数が進むにつれて分化障害が明らかになったこと、個体の末梢組織マスト細胞の数や分布が正常であったことなど、今後、G2DREの細胞系列・分化段階特異性を解析するうえで示唆に富む知見が得られた。このように、マウスの作成や解析は計画以上に進展したが、細胞レベルでの遺伝子発現やクロマチン免疫沈降法などの網羅的解析は準備を進めたものの令和4年度中に終えることができなかった。これらを総合して、(2)おおむね順調に進展している。と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に引き続き、delG2DREマウスを用いて、G2DREの細胞系列・分化段階特異性について解析を進める。最近、granulocyte-monocyte progenitors (GMPs)分画に含まれるE-cadherin陽性細胞が、好塩基球とマスト細胞の共通の前駆細胞(pro-basophil and mast cell progenitor: pro-BMPs)であること、E-cadherinの発現はGATA2によって制御されていることが報告された(Wanet et al., Sci Immunol. 2021)。今後、delG2DREマウスの骨髄細胞においてproBMPが正常に形成されているかどうかをフローサイトメトリーで解析し、G2DREの細胞系列・分化段階特異性を明らかにする。また、マスト細胞、好塩基球の各系列において分化障害を来した細胞で遺伝子発現を網羅的に解析し、発現量が低下している遺伝子群を同定する。最終的には、G2DREが、単純にGATA2の発現量を高いレベルで維持するために必要なのか、あるいはマスト細胞や好塩基球への細胞系列特異性を創出する性質も有しているのかを明らかにして、論文作成を進めていきたい。
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