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レトロトランスポゾンに由来するウイルス様粒子の乳がん悪性化における役割

研究課題

研究課題/領域番号 21K06817
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分48040:医化学関連
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

上田 真保子  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60760353)

研究分担者 宮沢 孝幸  京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (80282705)
大保木 啓介  公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医学研究センター, 副参事研究員 (80415108)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
キーワードレトロトランスポゾン / ウイルス様遺伝子 / 癌 / 悪性化 / RNA-seq / 乳がん / レトロエレメント / Gag遺伝子 / がん転移 / VLP / eCLIP-seq / ウイルス様粒子
研究開始時の研究の概要

乳がん臨床試料から得た遺伝子発現解析で、レトロトランスポゾン由来の遺伝子である「Arc」と「Peg10」が高発現することを見出した。これらの遺伝子はレトロウイルスのGag遺伝子と相同で、ウイルス様の粒子(VLP)を形成し、乳がんの転移に関わる可能性が高い。またVLPを形成可能なタンパク質をコードする、レトロトランスポゾンがヒトゲノムに多数あることから、ArcやPeg10以外にもVLPを形成する遺伝子が存在する可能性がある。本研究では、乳がん試料からVLPを形成するレトロトランスポゾン由来遺伝子をすべて同定し、そのVLPが内包するRNAが乳がん治療に向けての新しい分子標的となりうるかを調べる。

研究実績の概要

本研究では、レトロトランスポゾン由来のGagドメインを持つ遺伝子が乳がんの悪性化に果たす役割を解明することを目的とし、TCGA-BRCAデータベースの乳がん試料(n=1,099)を用いて遺伝子発現解析を行った。我々は乳がんで高発現するPEG10に着目して解析し、その転写物アイソフォーム(以下、アイソフォーム)が5種類発現していることを明らかにした。最も高発現しているアイソフォームはGagドメインのみを持ち、他のドメインを欠いていた。そこで、さらに詳細にアミノ酸配列を調べるとGagドメインの中の、RNA結合ドメインも欠いていた。


次に、サンプルをがんの進行ステージごとに分類し、このアイソフォームの詳細な発現を調査したところ、浸潤性乳管がん(Infiltrating Duct Carcinoma)、小葉がん(Lobular Carcinoma)、および浸潤性乳管・小葉がん(Infiltrating Duct and Lobular Carcinoma)といった浸潤性の高い乳がんタイプにおいて、特にステージII/ステージIIIのサンプルでこのアイソフォームが高発現していることが確認した。このステージは、がん細胞の行動や特性が大きく変化する段階であり、がん細胞がより浸潤性を増す重要な時期であることを考慮すると、このアイソフォームがステージII/IIIで高発現すること、またGagドメインを持っていることから、その機能が細胞内シグナル伝達や細胞間相互作用に重要な役割を果たし、特定のシグナル伝達経路に影響を与える可能性が示唆された。つまり、このアイソフォームががん細胞の浸潤や転移を促進するメカニズムに関与する可能性が示唆される。現在、このアイソフォームが実際にタンパク質として発現しているのか、また共発現している遺伝子群を特定するための解析を進め、このアイソフォームの発現が、どのようにがん細胞の行動に影響を与えるかを調査し、がんの悪性化に寄与する分子機構を解明することを目指している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

乳がん試料を用いたPEG10の詳細な発現解析から、当初予測していなかった複数のアイソフォームが発現しているこを同定した。特に、癌の進行ステージII/IIIと最も関連するアイソフォームは、一部のドメインを欠いており、RNA結合ドメインの全長を持っていないことが判明した。このため、当初の予想とは異なり、このアイソフォームはRNAを運ぶ機能よりも、がんの性質を変えるような細胞シグナル伝達に関わっている可能性が示唆された。これにより、研究計画の大幅な変更が必要となり、解析の方向性や方法を再検討する必要が生じ、研究が遅れている状況である。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策として、この進行ステージII/IIIで高発現するアイソフォームと共発現している遺伝子群の同定、sQTL-GWAS解析、機能実験を行うことで、がんの進行メカニズムを解明することを目指す。具体的には、遺伝子発現解析を通じて、このアイソフォームと共に高発現している遺伝子群を特定し、その機能的関連性を解析する。また、スプライシングQTL(sQTL)解析とゲノムワイド関連解析(GWAS)の共局在解析を行い、これらの浸潤性の高いがんのリスク要因を明らかにし、最終的には、細胞生物学的手法による機能解析により、がんの進行や転移に関与する分子メカニズムを明らかにする計画である。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Retrotransposon-derived transcripts and their functions in immunity and disease2023

    • 著者名/発表者名
      Takahashi ueda Mahoko
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 98 号: 6 ページ: 305-319

    • DOI

      10.1266/ggs.23-00187

    • ISSN
      1341-7568, 1880-5779
    • 年月日
      2023-12-01
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Functional and dynamic profiling of transcript isoforms reveals roles of isoform switching in interferon response2023

    • 著者名/発表者名
      Mahoko Ueda
    • 学会等名
      The Congress Secretariat of Human Genetics Asia 2023(HGA2023)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] The basics of gene expression analysis in R」DATA SCIENCE FOR GENOME DYNAMICS2022

    • 著者名/発表者名
      Mahoko Ueda
    • 学会等名
      DATA SCIENCE FOR GENOME DYNAMICS, Keio University
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 筋細胞の融合にかかわる内 在性レトロウイルス由来の新規遺伝子2022

    • 著者名/発表者名
      上田真保子
    • 学会等名
      日本進化学会年大会 第24回
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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