研究課題
基盤研究(C)
ヒト神経障害エステラーゼ(NTE)の劣性変異疾患の責任遺伝子に対応する、遺伝子変異マウスおよびNTE高発現マウスを複数系統作製している。 これらの遺伝子操作マウスの分子生物学的、組織学的、生理学的、行動学的解析に基づいて、個体レベルにおけるNTEの機能を解明するとともに、脂質代謝やオートファジーとの関連性にも注目し、NTEに結合するとされる有機リンによる神経障害やヒトNTE疾患治療のヒントを探る。
有機リン代謝に関与する神経障害標的エステラーゼ(Neuropathy Target Esterase:NTE)をコードするヒトPNPLA6(Patatin-like phospholipase domain containing 6)cDNAを導した遺伝導入マウスおよびマウスpnpla6遺伝子変異マウスを用いて、当該酵素遺伝子の神経系における機能を解析した。 過剰発現のマウスに生育低下、また、いくつかの変異マウス系統ではホモ型は胎生致死を招き、ヘテロ型ではややプルキンエ細胞数が低下する傾向が認められ、協調運動の低下も一部に観察された。系統樹立とヘテロ型胎仔由来線維芽細胞の取得に成功した。
遺伝子名にあるPatatinはジャガイモなどの貯蔵タンパク質であり、脂肪酸を分解するリパーゼの活性を持つ。PNPLA群の遺伝子は複数種知られ、真核生物から原核生物にまで保存されている。脂質代謝酵素の発現量や分子の一部の変化によって個体の生存までが影響され、脳神経系の機能に影響を及ぼす可能性も示せたことは分子生物学あるいは生物進化学の上で極めて重要な発見と考える。また同様の変異をもつヒト疾患や有機リンの結合によって生じる種々の神経症状に対する発症機構を考え、同時に今後の治療法を探索するためのヒト疾患モデルマウスを提供できる成果を挙げられたことは社会的貢献度の高い成果となったと自負する。
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臨床環境医学
巻: 32 ページ: 77-84
巻: 32 ページ: 18-27
Pharmaceutics
巻: 14 号: 2 ページ: 431-431
10.3390/pharmaceutics14020431