研究課題
基盤研究(C)
近年の研究進展から生体制御に寄与するマクロファージの役割が明らかとなってきたが、その基盤となるマクロファージの運命決定を説明する制御機構については不明な点が多い。本研究ではマクロファージの分化成熟・機能制御を司る運命決定機構の包括的な理解を目的とし、中でもTNFシグナル伝達分子TAK1の未知の機能に着目し、1)マクロファージの生死を司るTNF/TAK1シグナルの破綻により生じる炎症性細胞死機構と病態生理との関連性、2)炎症時のマクロファージの分化成熟を規定するTAK1が関与する未知の細胞内シグナル伝達経路、についてその解明を目指す。
マクロファージの機能制御に関与する運命決定機構の包括的な理解に向けて、本研究では主に免疫制御に重要な細胞死経路であるFasシグナル伝達のマクロファージにおける役割や、TNFシグナル伝達分子TAK1の関与に着目して研究を行なった。その結果、①マクロファージはFasシグナルによる細胞死誘導に耐性である、②TAK1欠損マクロファージはFas シグナルによる細胞死誘導に高感受性である、③TAK1はRIPK1分子のキナーゼ活性を負に調節することでFas 誘導性細胞死抑制に関与する、④マクロファージ内TAK1は炎症誘発性細胞死誘導を抑止することで組織恒常性維持に寄与する、ことを明らかにした。
マクロファージに潜む炎症誘発性細胞死に対するTAK1分子を起点とする抑制制御機構に関する一連の解明は、組織恒常性維持、とりわけ自然炎症による自己炎症性疾患の発症予防という観点から、マクロファージ研究の発展・深化に寄与する実に興味深い成果であると言える。さらには、この機構の発見は各種炎症疾患に対する治療戦略を考察する上で重要な情報を提供するものと考えられ、創薬への応用といった医療分野に及ぼす効果も充分期待される。本研究成果は、マクロファージの状態が生体組織に与える影響を考える上で実に洞察に富むものと言え、よって極めて学術的かつ社会的意義の深い研究成果であると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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