研究課題
基盤研究(C)
近年の研究進展から生体制御に寄与するマクロファージの役割が明らかとなってきたが、その基盤となるマクロファージの運命決定を説明する制御機構については不明な点が多い。本研究ではマクロファージの分化成熟・機能制御を司る運命決定機構の包括的な理解を目的とし、中でもTNFシグナル伝達分子TAK1の未知の機能に着目し、1)マクロファージの生死を司るTNF/TAK1シグナルの破綻により生じる炎症性細胞死機構と病態生理との関連性、2)炎症時のマクロファージの分化成熟を規定するTAK1が関与する未知の細胞内シグナル伝達経路、についてその解明を目指す。
最終年度はザイモサン誘導性腹膜炎モデルを利用して、誘導される単球由来マクロファージの推移について対照及びマクロファージ特異的TAK1欠損マウスを用いて比較解析した。その結果、両マウス群の腹腔内において、接種後18から20時間後には炎症性単球の動員が、さらに接種後36から40時間後には炎症性単球由来マクロファージが同程度認められた。驚くべきことに、対照マウスでは接種後48時間後には分化成熟したマクロファージが認められたのに対し、マクロファージ特異的TAK1欠損マウスでは分化成熟したマクロファージはほぼ認められず、また炎症性単球由来マクロファージも激減していた。その一方で単球が蓄積しているのが判明した。この傾向はザイモサンを接種後少なくとも14日まで確認された。以上の結果は、1) 単球からマクロファージに分化成熟していく過程で、TAK1分子が重要な役割を果たすこと、2) マクロファージ前駆細胞と見られる未熟な細胞集団の存在、を示唆している。そこでこの新規マクロファージ前駆細胞集団に着目して、RNA-seq法による遺伝子発現解析や増殖や生存の観点から解析を進めている。2021年度から2022年度にかけて行った細胞死誘導受容体として知られるFasのマクロファージにおける機能について研究を行なった。その結果、1) マウス骨髄由来マクロファージはFas刺激による細胞死誘導に耐性であること、2) この性質にTAK1分子が重要な役割を果たすことを発見した。さらにin vivoによる解析から、マクロファージ特異的TAK1欠損マウスは組織常在マクロファージの細胞死に端を発する自然発生的な組織炎症を呈することを発見し、マクロファージ内TAK1による細胞死抑制が組織炎症の抑制に繋がる新たな制御機構の存在を提唱した。上記の研究成果は、学術集会で発表しただけでなく、国際学術雑誌にも報告した。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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