研究課題/領域番号 |
21K06877
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
浅野 謙一 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10513400)
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研究分担者 |
濱田 理人 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (20567630)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / マクロファージ / 単球 / Ym1 / 制御性単球 / 肝臓 / 線維化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「単球から分化したマクロファージが線維化の病態形成において何をしているのか」という問いに答えることを目指し、肝線維症準備期から進行期への転換における単球・マクロファージの役割を、Ym1という明確な指標を用いて解析する。具体的には、1)線維化進行期の肝臓に浸潤する単球からマクロファージへの分化機構と、2)単球由来マクロファージの肝線維症の病態形成における役割の解明を目指す。本研究の成果は、単球由来マクロファージによる線維化進展機構の解明に繋がるだけでなく、肝線維症の新たな治療標的同定に貢献できる可能性がある。
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研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎NASHを誘導した肝臓には、血流を介して多量の単球が浸潤する。肝臓に浸潤した単球は、肝臓特異的な環境シグナルによって誘導された転写因子の働きによって、さらにNASH型マクロファージに分化する。NASH型マクロファージは、肝星細胞や線維芽細胞などの間質細胞を活性化することで肝線維化を促進する原因細胞と考えられている。 そこで、骨髄単球からNASH型マクロファージへの分化を制御する転写因子を同定することを目的として、肝臓マクロファージの遺伝子発現をRNAシークエンス解析し、NASH進展時に発現が亢進する転写因子Egr2を同定した。骨髄系免疫細胞選択的にEgr2を欠損したマウス(Egr2-cKOマウス)を作製し、そのマウスのNASHの病態を解析することで、Egr2の役割を検討した。Egr2-cKOマウス肝臓の、免疫細胞数は野生型と同程度だったが、Egr2-cKOマクロファージにおけるCD11c/CD63/CD88などの表面発現が、野生型に比べ顕著に低下していた。マクロファージの性質の変化をさらに詳細に解析するため、NASH誘導マウスの肝臓マクロファージをCD11c/CD88発現レベルの違いに基づいて分取した。CD11c/CD88二重陽性マクロファージは、Spp1, Trem2, Cd9などNASH型マクロファージのsignature遺伝子群を強発現することが分かった。CD11c/CD88陰性の肝臓マクロファージは、抗炎症性サイトカインIL-10のmRNAレベルが亢進している一方、線維化促進因子PDGFレベルが減弱していることを見出した。これらの研究により、Egr2が、浸潤単球からNASH型マクロファージへの分化に深く関与することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究で、NASH誘導時のマクロファージで強発現する転写因子Egr2を同定した。さらに、Egr2-cKOマウスでは、肝臓に浸潤した単球からNASH型マクロファージへの分化が阻害されることを生体レベルで検証できたことから、単球からマクロファージへの分化を制御する転写因子を同定する、という初年度の目標はほぼ達成できたと言える。 これまで、NASH進展時の肝臓に混在する多様なマクロファージを個別に解析することが困難だった理由として、それらを識別できる表面分子が同定されていなかったことが挙げられる。この研究によりCD11c/CD63/CD88という表面マーカーを用いて、異なる肝臓マクロファージサブセットを分取、機能解析することができるようになったことから、NASHの病態形成におけるマクロファージの役割の解析に関しては、当初の目標以上の進展があったと言える。一方でYm1-CreマウスはようやくF1マウスが誕生したばかりであり、Ym1陽性単球とそれに由来するマクロファージの可視化は当初の計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Egr2-cKOマウスのNASHの病態を解析する。初年度は、cKOマウスの作製にLyz2-Creマウスを用いたが、Lyz2遺伝子は、骨髄単球だけでなく、肝常在マクロファージであるクッパ―細胞や、樹状細胞にも発現するため、NASHの病態形成におけるEgr2の役割を厳密に解析することができない。この問題を解決するため、最近誕生したYm1-CreマウスとEgr2-floxマウスやRosa26-LSL-Tomatoマウスを交配し、浸潤単球の分化、増殖、肝臓内局在、標的、実行分子を明らかにしていくことで、Ym1陽性単球とそれに由来するマクロファージの、NASHの病態形成における役割を解析する。 独自に見出したCD11c/CD88などの表面マーカーを用いて肝臓マクロファージを分取し、機能の違いを解析する。例えば、CD11c/CD88二重陽性マクロファージは、二重陰性マクロファージよりも、肝星細胞における線維化マーカー発現を促進する可能性などを考えている。CD11c/CD88二重陽性と二重陰性マクロファージの遺伝子発現をRNA-seq解析し、二重陽性マクロファージで強発現する、線維化促進因子を探索する。当該分子に対する中和抗体や、そのレセプターの阻害抗体を作製し、それらをNASH誘導マウスに投与することで、肝線維症の抑制効果を検討する。線維化の実行因子がタンパク質だった場合は、Ym1単球由来マクロファージ選択的に当該遺伝子を破壊したマウスを作製し、そのマウスを解析することで、線維形成における役割を解明する。
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