研究課題/領域番号 |
21K06878
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
小林 恒雄 星薬科大学, 薬学部, 教授 (90339523)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 血管障害 / 糖尿病 / 血小板 / 血管機能 / 代謝性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病性血管障害については、血小板機能亢進からの血栓の進展・関与については広く知られているが、血小板の血管細胞への相互作用、血小板由来物質の部位別血管機能、罹患期間別の血管障害についての詳細な機序解明は進んでいない。そこで本研究では、① 糖尿病時において血管機能障害を誘発する未知の血小板及び由来物質、その放出機構因子を解明し、②それらの部位別血管機能、血管内皮・平滑筋細胞等への機能分子シグナルを明らかとする。③更に罹患期間別の糖尿病、種々の血管障害における 血小板の生理機能解明から、阻害薬や培養血小板、マイクロパーティクルを応用した新規治療予防方法についての情報提供をする。
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研究実績の概要 |
前年度の研究を引き継ぎつつ、種々の糖尿病モデルと血小板由来因子等にも着目し、血小板由来マイクロパーテイクル(MP)放出・接着・全身血管機能障害と既存の治療薬の慢性投与等を行いつつ、より詳細な関係性を明らかにする。マウス血液より抽出した血小板由来 MPs を用いて、カベオラ構造、接着因子とMP接着の関与、MPs処置による血管内皮機能の障害機序を検討した。Dynamin阻害剤は、正常動物 MPs処置では反応が減弱するが、糖尿病由来 MPs 処置では、内皮依存性血管弛緩反応の減弱がみられなくなったことより、糖尿病時のMPs は、カベオラを介して血管機能を低下させる可能性が示唆された。また、糖尿病時のMPsは、血管のICAM-1の発現を誘導し、カベオラを介してICAM-1の誘導促進、血管へ接着することで血管機能を低下させる可能性が示された。血小板遊離物質であるヌクレオチドは、ラット頚動脈、大腿動脈、腎動脈の血管収縮や血管弛緩を引き起こすことを明らかにし、その収縮は、解糖系代謝物であるメチルグリオキサールによって、血管機能異常を誘発する事を明らかにした。非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、Goto-Kakizaki2型糖尿病ラットの腸間膜動脈において、内皮由来過分極因子や内皮由来収縮物質の改善により血管内皮細胞弛緩機能を改善することを明らかにした。以上のことから糖尿病時、血小板由来 MP、血管内皮細胞のカベオラ構造、接着因子を介して内皮細胞に作用することによって、血管内皮障害を惹起させることが示唆され、血小板由来のヌクレオチドは、全身性血管の機能障害を誘発する可能性を示唆した。更に、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、糖尿病性血管障害を改善することを明らかにするなど、糖尿病性血管障害の治療ターゲットとなることを論文 4報、学会発表 18件報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和 4年度は、糖尿病モデルにおける血管障害治療(既存の治療薬の慢性投与等を行いつつ)と血小板MPと接着機構を中心として、血小板由来物質機能、標的血管部位、血管細胞、血液因子等の重要なターゲットを見いだすことを達成目標としている。本研究から糖尿病時において、血小板由来 MP、血管内皮細胞のカベオラ構造、接着因子を介して内皮細胞に作用することによって、血管内皮障害を惹起させることが示唆され、血小板由来のヌクレオチドは、全身性血管の機能に影響し、障害を誘発する可能性を示唆した。更にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、糖尿病性血管障害を改善することを明らかにするなど、糖尿病性血管障害の治療ターゲットとなることを明らかにした。以上の結果は、糖尿病時における血小板と血管障害において、新規メカニズム、新規治療薬のターゲットを見いだし、研究の焦点の絞り込み進んでおり、研究は、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、糖尿病時の血管機能障害と血小板の機序として、血小板由来 MP の産生増加、カベオラ構造、ICAM を介した血管内皮細胞への接着、NOS 活性の低下、内皮機能低下、ERK 活性の増加が起因していることが明らかになったので、これらのシグナルを中心として更に分子機構を明らかにしたい。 糖尿病時における血管機能障害の新規機序として、GLP-1 低下や arrestin シグナル異常の関与を示唆したので、血管部位等の詳細を検討ししつつ、既存治療薬の慢性投与、血小板との相互作用も検討する。2 型糖尿病モデル動物を用いて、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は、血管内皮機能を改善することを明らかにしたので、これらの改善機序、MP 種と血液因子、各種血管部位作用の関係性を因子解析し、in vitro、ex vivo 実験から、生体内血小板 MP 産生機序、MP 種-各部位血管シグナル伝達解析を統合し、疾患動物に投与する糖尿病性血管機能障害治療薬を提案することを達成目標とする。更に昨年度の結果から、ICAM や ERK等のシグナル分子が重要な役割をしていることが明らかになったので、人工的に作成したMP やリポソームに、ICAM、ERK サイレンシング遺伝子(miRNA インヒビター;RNA mimic 、pre-miRNA 発現プラスミド等)を導入し、それらを ob/ob 肥満マウス、高脂血症負荷マウス、db/db マウス糖尿病モデルに投与し、代謝機能、血管内皮細胞機能低下への改善効果も検討する予定である。
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