研究課題
基盤研究(C)
東京女子医科大学病院で切除された腎細胞癌症例組織標本を見直し、①転座型、②透析関連、③酵素欠損型腎細胞癌症例を抽出する。必要に応じて分子生物学的検討を行って診断を確定、臨床病理学的性質を明らかにする。透析関連腎細胞癌に対しては背景の前駆、早期病変の形態、免疫組織化学的性格付けを併せて行う。さらに前向きに新鮮凍結試料の蓄積や、培養細胞株の樹立を試み、さらなる研究に備える。インフォームドコンセントをベースとして網羅的ゲノム解析を行い、診断のためのバイオマーカー、治療標的の探索を行う。
腎癌の分類は分子生物学的知見をもとに大きく変わり、多くの新規組織型が加わった。本研究では新規組織型(特に、MiT転座型、透析関連および酵素遺伝子欠損を伴う腎癌)の臨床病理学的特徴と分子生物学的性格の解明を以下の方法で目指す。1)東京女子医科大学病院の腎癌症例から収集した新規組織型症例の臨床病理学的性格を検討する。2) 転座型腎癌を中心に、凍結新鮮材料の確保、培養細胞株の樹立を行い、研究のツールを揃える。3)新鮮凍結材料を用い次世代シーケンシング、メタボローム解析などを行い、特徴的な遺伝子異常を見出す。4)培養細胞株を用い、各種薬剤治療モデルを作製、有効な治療レジメンの確立を目指す。本年度はMiT転座型腎細胞癌約30例の確定診断をbreak apart FISHを用いて行い、その臨床病理学的性格を検討した。FH欠損性腎細胞癌については、新規陽性抗体抗S-(2-succino)-cysteine(2SC)抗体を導入し、免疫染色レベルでの診断精度を上げ、症例を蓄積した。さらには腎細胞癌、分類不能型のがんパネル検査からFH病的バリアントを有する症例を抽出し得た。透析関連腎細胞癌については5例のRNA secを行い、分子生物学的異常を検討中である。学会および論文発表、さらには現在、自身が編集を担当とする専門書籍を執筆中である(2023年11月出版予定)。また、2021年11月に受賞した、日本病理学会病理診断学賞の内容を英文総説として執筆を進めている。
2: おおむね順調に進展している
症例の蓄積は順調に行われ、解析の段階に入っている。培養細胞の樹立に関しては術前診断が困難であり、難航している。今後も術前に稀少組織型が疑われた症例に対しては初代培養、ヌードマウス移植を試みていく。
①臨床病理学的検討:集積し得た症例を基に、稀少腎細胞癌の生物学的態度、診断マーカー、予後予測因子の探索を進める。②細胞生物学的検討;上記のように希少腎細胞癌の術前診断は困難だが、臨床科との連携を密にし、初代培養やヌードマウス移植を行って、使用可能な細胞株の樹立に努力する。③その他:副産物として現在WHO分類に加えられていない組織型の症例に遭遇することがある。これらをまとめて学会、論文発表し、症例のエンロールを図る。
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すべて 雑誌論文 (31件) (うち国際共著 2件、 査読あり 31件、 オープンアクセス 26件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 5件) 図書 (2件) 備考 (3件)
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