研究課題/領域番号 |
21K06931
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49020:人体病理学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
八尾 隆史 順天堂大学, 医学部, 教授 (20243933)
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研究分担者 |
齋藤 剛 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80439736)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 胎児消化管類似癌 / 胃癌 / 大腸癌 / AFP / Glypican 3 / SALL4 / Glypican-3 / 組織マイクロアレイ / 培養細胞 / CD10 / 細胞分化 / 遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで我々は、胃癌・大腸癌の中でもとくに高悪性度である胎児消化管類似癌の臨床病理学的特徴や遺伝子変異に関して調べ報告してきたが、その悪性度に関連した因子や分子生物学的機序は十分には解明されていない。この癌の治療方針の確立や新規治療薬物開発を目指して、引き続き解析を行う。
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研究実績の概要 |
胃胎児消化管類似癌は、淡明な細胞質を有し3つの胎児消化管マーカー(AFP、Glypican-3、SALL4)のいずれかが発現する癌で、高率に静脈侵襲や肝転移をきたす高悪性度の癌であることを報告したが、胎児消化管マーカーが陽性となる癌は大腸にも存在し、必ずしも淡明な細胞質を有するものだけでないことが判明した(Kurosawa T, Yao T, et al. Pathol Res Pract 2022)。 そこで、胃癌においても組織像に関係なく一定期間に切除された進行癌688例に対して胎児消化管マーカーの免疫染色を施行し、免疫組織化学的に胎児消化管への分化を示す癌153例(22.1%)が抽出された。このうち淡明な細胞質を有する胃胎児消化管類似癌は94例であり、淡明な細胞質を有さない胎児消化管分化を示す胃癌は58例であった。胎児消化管マーカー陽性胃癌は陰性胃癌より静脈侵襲(67.0% vs 35.1%)と肝転移(41.5% vs 8.0%)の頻度は高く、5年生存率(47.1% vs 58.2%)は低かった。胎児消化管マーカー陽性胃癌のうち、淡明細胞静脈侵襲の頻度(67.0% vs 50.0%)と肝転移の頻度(41.5% vs 15.5%)は前者で高かったが、リンパ管侵襲(60.6% vs 88.6%)は後者で高く、5年生存率(46.6% vs 47.9%)には差はなかった。 これらの結果から、胎児消化管マーカー陽性癌は淡明な細胞質の有無に関わらず陰性癌より高悪性度の癌であることが判明した(投稿中)。 さらに、胎児消化管マーカー陽性の早期胃癌31例(粘膜内癌5例、粘膜下層浸潤癌26例)を抽出し、その臨床病理学的特徴を解析した。淡明な細胞質の有無や充実性増殖の有無に関わらず脈管侵襲やリンパ節転移は一般型の胃癌より頻度が高く、高悪性度の癌であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸癌での結果と同様に胃癌でも胎児消化管マーカー陽性癌は淡明な細胞質の有無に関わらず陰性癌より高悪性度の癌であるということが判明し、さらに早期胃癌でも高悪性度であることが判明し、今後の胃癌組織分類を再考する上で有意義な結果が得られた。 しかしながら、SALL4を発現している胃癌および大腸癌の培養細胞株でsiRNAを用いたSALL4ノックダウン実験に成功したが、これを用いた解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、胎児消化管類似癌における浸潤および転移関連タンパク質の免疫染色による解析、さらにSALL4のノックダウンによる生物学的機能の評価に加えて、SALL4によって調節される遺伝子発現ネットワークを引き続き分析し、これらの悪性度の高い胃腸腫瘍における未知の治療標的を発見を目指している。
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