研究課題/領域番号 |
21K06960
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
森 泰三 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (40625307)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 自己免疫性肝炎 / NAFLD/NASH / 脂質代謝 / 肝臓免疫 / 自己抗体 / 炎症性サイトカイン / 疾患感受性遺伝子 / 肝免疫 / 疾患マウスモデル / サイトカインシグナル |
研究開始時の研究の概要 |
自己免疫性肝炎は遺伝要因に何らかの誘因が加わって発症し、慢性的な経過をとる難治性肝疾患である。その病態には免疫寛容の破綻が関与すると考えられるが、疾患特異的自己抗原や発症・進展機構は未だ不明である。本研究では、Lnk変異マウスに脂肪負荷を加えることでAIHの病態を再現するマウスモデルを樹立することを目指し、同マウスを用いてAIHの免疫制御機構を明らかにすることを目的とする。免疫系細胞の炎症が誘導する新規の病態形成への理解を深めると同時に新たな治療標的を創出し、自己免疫疾患の克服へ向けての基盤を確立する。
|
研究実績の概要 |
自己免疫性肝炎(AIH)は遺伝要因に何らかの誘因が加わって発症し、慢性的な経過をとる難治性肝疾患である。病態には免疫寛容の破綻が関与すると考えられるが、疾患特異的自己抗原や発症・進展機構は未だ不明である。近年、AIH患者におけるゲノムワイド関連解析より、免疫調節因子Sh2b3(Lnk)の疾患感受性遺伝子としての可能性が報告された。本研究では、Lnk変異がAIHの病態形成に与える影響を検証し、免疫制御機構を明らかにすることを目的とした。Lnk全身欠損マウスおよび免疫細胞特異的Lnk欠損マウスは、定常状態においては肝障害の異常およびAIHに特徴的なInterface hepatitis(炎症細胞浸潤)を示さなかった事より、単独欠損のみではAIHの表現系を示さないことが明らかとなった。一方で、Lnk全身欠損マウスおよび免疫細胞特異的Lnk欠損マウスに対して高脂肪/高コレステロール食 (HF/HCD) 給餌を行うと、負荷期間依存的に血清中における肝障害マーカーが上昇し、炎症性サイトカインの産生が増加する事を見出した。また、血清中においてIgG、IgMが増加しており、AIH病態の特徴とされる自己抗体が検出され、肝組織においては野生型マウスに比して肝脂肪蓄積、肝線維化の増悪が観察された。以上の結果より、高脂肪食負荷+Lnkの欠損はヒトの病態でも散見されるNASH-AIHの合併した病態を再現することが明らかとなった。Lnk欠損マウスの肝臓においては、定常状態においてCD8T細胞のメモリー化が生じており、高脂肪食負荷によって数的な増加が誘導されている事が明らかとなり、これらの数的増加を制御している因子と想定されたサイトカイン、IL-15との二重欠損(Lnk/IL-15 DKO)マウスにおいてLnk単独欠損マウスで観察されたNASH-AIH病態が劇的に改善する事が明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫細胞におけるLnk欠損は脂質代謝ストレスが付加されると肝免疫反応を活性化させ、AIHに特徴的な自己抗体産生を誘発する事が示唆された。Lnk欠損によって肝臓における肝障害および線維化は著しく増強するものの、病理学的な炎症細胞浸潤は軽微であった。この結果よりLnk欠損+高脂肪食モデルは肝障害の誘導や自己抗体産生など部分的にAIHの病態を再現するものの、他のAIHモデルやヒトにおいて観察される肝病理像とは異なる事がわかってきた。現状の表現系からLnk欠損マウス+高脂肪食負荷の病態を総合的に鑑みると、本モデルは抗核抗体陽性のNAFLD/NASH増悪モデルであると想定された。NAFLD/NASHの病態は複合的であり、その発症と進展には遺伝要因、環境要因、生活習慣、免疫因子などが関与している。NAFLD/NASH患者の20-40%に抗核抗体などの自己抗体陽性症例が存在し、NASH-AIHとしての病型も報告されている。一方でAIH患者に脂肪肝が合併することは多く、肝障害増悪に関与している。本モデルにおける病態制御機構の解析は、新たなNAFLD/NASHの制御機構を明らかにすることに繋がることより、当初予定していた方向とは少し異なるものの実験計画の範囲内であり、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
NAFLDモデルにおけるLnk発現の生理学的意義を明らかにする目的で、マウス特異的に肝臓組織においてLnkのmRNA発現変動が生じるかどうかを明らかにする。Lnk発現をタンパクレベルでモニターできるレポーターマウスをNAFLDモデルに供し、免疫/実質細胞集団を中心にどの細胞集団で発現変化が生じているかどうかをFACS解析にて同定する。申請者の所属組織にて収集されているPBMC、肝臓組織をはじめとした肝疾患臨床検体を用いてcDNAを抽出し、健常人と比較してLnkのmRNA発現変化を解析する。さらに、PBMCをセルソーター用いて細胞を分画し、どのような細胞集団において発現変動が起きているかについても明らかにしていく。
|